第52話 今日もオハナダンジョン平常運転

ホタルちゃんが目からビームを撃てるようになって、その役割が変化した。

今まで索敵とか偵察とかの裏方仕事で頑張ってくれていたホタルちゃんは、更にある程度の敵であれば余裕で撃破出来るようになっていた。


コテツさんとワヲさんもそれに触発されたのかな?

時々コテツさんは2号と5号を、ワヲさんは1号と4号と行動を共にしてダンジョン内で実戦経験を積んでいるみたい。



「オハナ様は何もしないのですか?」


ある日の事、いつもの様にダンジョンでオハナライフをエンジョイしていると

呆れた様な声音のサンガがポツリと訊いて来た。


「だって未だ誰も此処迄来ないんだもの」


そう、オハナがダンジョン運営を開始してから随分経つというのに、まだ誰もオハナの所にまで到達できてないの。

以前砦を落とした報酬で一階増えて、現在全十一階層のオハナダンジョン。

その最高到達階層は七階層―――――それも瀕死の一人の冒険者が七階層の土を踏んで息絶えただけの到達点、あんなのオハナは認めませんよ。


「だからと言って何もしないのは――――――」

していいの?」


サンガの言葉を遮る様にして訊いてみた。

オハナだってそりゃあゲームで暇してるとかいう意味わからん状態には飽き飽きしてるんだよ?マンドラゴラ時代みたく動けない訳じゃないのだから。

でも今動かないのには訳がある。


他のダンジョンマスターであるアウグスタさんと闇風さん――――その二人が〖砦〗を落とそうと躍起になってるらしいのをサンガから聞いたからだ。


オハナが達成するまで謎に包まれていた〖砦〗陥落の報酬、それをサンガ経由で知った他のダンジョンのサポートAIが二人のダンジョンマスターに報告。

そんな報酬が貰えるなら自分たちも―――――となり、雷鋼の砦は現在”建て直し中”となっていて誰も攻めることが出来ない状態。

だから残った二つの〖砦〗をそれぞれが今も攻撃している最中なんだって。


二人で一つの砦を攻撃した方が効率良いだろうにね?


なんだか二人ともが「植物型の魔物に出来て、自分が出来ないわけがない!」なんて言って半ば意地になってるって話も彼らのサポートAI経由でサンガから聞いたのはどうでも良い話。


でも雷鋼の砦が陥落した事で、他の砦も警戒して今まで以上に防衛とかに力を入れてるはずだからそう簡単にはいかないんじゃないかな?


まぁそんなわけで今オハナが経験値稼ぎに〖砦〗に行くと、もれなく「何しに来やがった!」という扱いを受けること間違いなしだもんね。

縁も所縁も無い二人から嫌われたって「別っにー」て感じだけどさ、今後〖魔物側〗で一致団結―――――とかいうイベントもあるかもしれないわけだから、一応同じ〖魔物プレイヤー〗として余計な恨みを買っておきたくはない。

獲物の横取りなんて、良い顔をされないのは間違いないんだし、大人しくしてますとも、オハナだもの。


だからオハナはこうしてダンジョンに引き篭もり中なのです。

これは世界平和のために必要な犠牲なのです。

暇すぎて、「くっ!今のオハナにはこうしてオハナライフを最大限に満喫する事だけしか出来ないなんて――――――ッ!!」とか言ってみたり。


ホントに退屈を満喫していた。


そんな状況をサンガも理解してくれてるらしく、普段おもちゃにすると猛烈に怒るのに、最近は蔓でコロコロと転がしても何も言わなくなってきた。

まぁ単純に諦められたのかもしれんけど。







オハナダンジョン上層階を担当している1号と2号、この二人がオハナの次にダンジョン内で暇してる子たちかもしれない。

中層~下層にプレイヤーさんたちの大部分が集中している時には二人も出てもらうようにはしてるけど、一応オハナダンジョンにも人入りの少ない時がやっぱりあって、そんな時二人はこうしてオハナの所によく来る。


まだ二人が〖マンドラゴラZ〗だった頃は二人とも全然子供で、じゃれ合うって言葉がしっくりくるくらいの感じだったのに、それが今では――――――…………。


2号のパンチを1号が受け流してカウンター、けれどそれを2号は装甲?の厚い部分でガード――――――といったハイレベルな戦いを繰り広げていたりする。


多分稽古なんだと思う。

思うんだけど……………ちょっと本気過ぎない?

いや、本気でやらないと稽古にならないとかいうのも理解は出来るんだよ?

だけどそこまでしなくても――――――って思った攻撃が何度もあって、オハナは度々蔓を伸ばして二人を無理矢理止めることがあった。

死んでも時間が経てば生き返るんだけど、出来ればそんなことで死んでほしくはない。


ふむ。ならばいっその事――――――。



「1号!2号!連携が乱れてる!二人が別個に攻撃したって大したダメージ入らないんだから今はタイミングを合わせることに集中して!」


1号、2号の稽古相手をオハナがしてあげれば良いじゃない、どうせ暇なんだもの。

というわけで、二人と戦ってみたわけなんだけど……………。


何この二人!?うっざ!!


1号の鈍足デバフもそうだけど、2号の硬さも厄介過ぎる。

今オハナは即死攻撃と羽虫殺しを使わないハンデで戦ってるけど、苛々し過ぎて使っちゃいそうに何度もなった。

え?嘘?ちょっと待って?この二人ってこんなに強かったの?とか内心思いつつも、二人の主であるオハナはそんな風に思ってる事を悟られたくなくて、意地でさっきの様な強気な発言をしちゃうわけですよ。

そしてオハナのそんなアドバイスを素直に聴く二人、何故かしら?罪悪感がすごい。

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