第49話 獲得した経験値どう分ける?

その後もう少しだけ3号(巻き込まれて5号も)に「怒っているんだよ?」と伝えたオハナは、いつもの定位置であるダンジョンの最奥にあるボス部屋に腰を落ち着けた。

コテツさんとワヲさん、ホタルちゃんは疲れてそうだったので帰ってもらった。

今オハナダンジョンは1号、2号、4号で回してもらっている状態、オハナが怒ってる間終始3号と一緒に怒られているような雰囲気だった5号、御詫びも兼ねて今度また外に出る時は一緒に連れて行こうと決めた。



「そういえばオハナ様、敵の〖砦〗の陥落お疲れさまでした。素晴らしい戦果です」


やっと調子を取り戻したサンガが賛辞を述べる。

わざわざそんな事を言ってくれるだなんて………………もしかしてサンガたちもダンジョンのサポートが主とは言え、〖魔物側〗の思考を持っているのかな?

てっきり一人で〖砦〗に向かった事を怒るのかと思っていたんだけど、そんな風に言われちゃうと調子狂うんだけど。


「どうしたのサンガ?いつもなら『こんな無茶をして!!』ってどちらかと言えば怒る方じゃない、さっきオハナに泣きついて来たことが急に恥ずかしくなったの?」


「それについてはどうかお忘れください!!オハナ様が単身〖砦〗に向かった事について勿論言いたい事はありました――――――が!あの〖砦〗のポンコツサポートAIどもに一泡吹かせられたのは気分爽快でしたのでお小言は無しに致しました」


サンガにしては珍しく攻撃的な言葉を使ったね?

もしかしてダンジョンのサポートAIであるサンガたちと、砦サポートAIの子たちは仲が悪いのかな?


「砦を陥落させたことにより、オハナ様のダンジョンの階層が一つ増えて強化されましたし、今回落ちた〖砦〗はそう簡単に復帰は出来ないでしょう。今頃奴らはとても悔しがっている事でしょう、良い気味です」


あぁはいはい、ホントに仲が悪いみたいね。


その後もオハナの傍で色々と〖砦〗のサポートAIについて語っていたサンガだけど、それら全部を右から左へ聞き流す事にして本来やりたかった作業に移る事にした。


まずはオハナが今回獲得した経験値だけど、今は取得せずに全部プレイヤー備え付けのプレゼントボックスの中に納められている。

その幾つかをコテツさん、ワヲさん、ホタルちゃんたちに等分配。

そして1~7号たちにも三人より少ないけれど、等分配するつもり。

そう、そのつもりだったんだけど――――――…………。


此処に来て、オハナにもちょっと欲が出て来てしまった。


折角獲得した大量の経験値、オハナが次に強くなるために必要とする経験値も多い。

素直に白状するとちょっとだけ惜しくなっちゃったんだよね。


『苦労して獲得したのはオハナなんだから、全部自分の懐に入れておけばいいんだよ』


くっ!久々に登場したな、この悪魔め!!

だがしかし!廃課金勢からちょっとだけ社会復帰出来たんだ。

きっとパワーアップした天使の囁きがオハナを正しい道に進ませて――――――。


『そんなに大量の経験値を渡しても相手の為にはならないよ!!』


天使、マジ天使――――――ッ!!

方向性が違う!!やっぱ違うのよ天使!!囁きって言うか普通に説教来たよ!?

確かにド正論っぽいけど!!今はそうじゃないでしょ天使!!

これは常日頃の感謝の気持ちなんだってば!!


『もらえることが当たり前になったらどうするの!!』


確かにそうかもだけど、あの三人に限っては大丈夫だと思うんだよね。

――――――ていうかまだ続くの!?天使の滞在時間長くない!?


イカンイカン!欲に負けそうになるからこういう事になるんだ。

もっと気持ちを強くもたないと――――――。


「ふ~っ………………」


脳内で色々とツッコミを入れるという良く分からない状況に陥り余計に疲れた。

オハナには安息の日々は無いのかしら?


「――――――聞いていますかオハナ様!!」


あぁもう!こっちはこっちで続いてたのね!?


サンガは未だに砦のサポートAIの事を何やら言ってたみたい。

まったくもう、いつまでもグヂグヂと良く続けられるね?ちょっとウザいよ?


「サンガ、今回貰った経験値をあの三人に日頃の御礼として渡したいんだけどどれくらいが丁度良いのかな?」


聴いてるとこっちの気が滅入るから、オハナの方から質問して無理矢理話を終わらせる。


「………そうですねぇ。多すぎてもあの方たちは遠慮してしまいそうですが、オハナ様が御三方に渡したいと思う量を同じだけ差し上げれば宜しいかと思いますよ?」


やっぱサンガも量を同じにしないと角が立つって考えか。

正直まだ初期種族なワヲさんには多めに振り分けても良いかな?なんて思ってたんだけど、止めておいた方がよさそうだね。



後日、オハナが獲得した経験値の一部を同じだけ三人に譲渡した。

最初は三人とも遠慮していたけど、オハナが「日頃の御礼だ」って言って押し切ると最終的には皆笑顔で受け取ってくれた。


「ゲームでもボーナスを貰えるとは思わなかったなぁ」

「こんなにたくさん………良いのかしら?」

「ありがとうございます!これからもっともっと頑張ります」


「オハナ様の懸賞金額も上がり、ダンジョンに挑む人も増えましたから皆さまの活躍の場には困らないでしょう。それにどうやら人間側のランカーたちもオハナ様を失墜させようと動き出したようです、ここ最近ダンジョン内で姿を確認しておりますから」


魔物の賞金首の中でオハナだけが抜きん出てるから、金欠になり易いゲームではオハナの懸賞金額は相当魅力的に映るだろうね。

まさに一攫千金!って感じ?

狙われる方は堪ったもんじゃないけどね?

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