第48話 ダンジョンに帰ろ
砦を陥落させたオハナはその後すぐに、専用フィールドから追い出された。
〖砦攻め〗の案内を受けたロビーに戻されて、受付のテンション高めなお姉さんに、
「凄いですねー!〖砦攻め〗初見でいきなり第一位の人の砦を陥落させちゃうなんて」
オハナの両手をぎゅっと握り、そのままぶんぶんと上下に激しく振られる。
何で知ってるのかと疑問に思ったけど、この〖砦攻め〗イベントの受付嬢をしてるくらいだから知ってても当然かな。
「予定調和の様な温い展開のバトルが恒常化した中で、久々に手に汗握る熱いバトルでした!私もう嬉しくてうれしくて――――――」
あー………うん。
オハナはただ経験値が欲しかっただけなので、感動されても困る――――――。
「あまりに嬉しかったので、オハナさんの〖砦攻め〗のバトル映像をこの世界に居る全ての人に閲覧できるよう公式動画としてアップしておきました」
このAI何してんのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!?
「おいあれ見ろよ、あれってさっきの雷鋼の砦を全滅させた動画のプレイヤーじゃないか?」
「本当だ、実物見ると結構可愛いな」
オハナが褒められると、まるで娘が褒められてるような気分でちょっと嬉しい。
まぁ娘居ないけど……………。
「あれでエグイ攻撃連発してくるとは、ハァハァ……」
「是非とも俺をあの蔓で叩いて欲しいもんだ」
「俺はあの大量のうねうねした足で踏んでほしい…………」
結構な方々が居るぅぅぅぅぅ!!!!!!!?
ゲーム内だから鳥肌なんて立たないけど、ぞわってした!!ぞわってしたよ!?
今だけは魔物を攻撃できない事が恨めしいッ!!
寒気を感じたオハナはそそくさと町を後にした。
なんかもうどっと疲れたなぁ。
町の中でもオハナは注目の的、みたいな感じだったし。
オハナの平和を
あれ?でもオハナって言うほど平和無くない?
………………という事は、今回のはローリスクハイリターンだった?
――――――これ以上は止めとこう。
オハナまでセントウダイスキーになるつもりなんて無いんだから。
迷惑!そう、オハナは懸賞金が増えて迷惑しててオコだよ!ってそう思っとこう。
まぁでも良いもんね!
あとはダンジョンに帰るだけだし、帰って皆に癒されよう――――――って今気づいたけど、ダンジョンに『帰る』なんだ?
いつの間にか無理矢理連れて来られたダンジョンがオハナの帰る場所になってたんだ。
そう考えると、自然と笑みが浮かんで来た。
1~7号、ワヲさんにコテツさん、ホタルちゃん、あとついでにサンガ。
皆の顔を思い浮かべてしまうと、帰る足が早まっていた。
特に3号、オハナが居ない事に気付いて暴れてないかしら…………………?
「あ…………………オハナさん、おかえりなさい」
オハナダンジョンの奥地に戻ってくると、疲れ果てた様子のホタルちゃんが出迎えてくれた。普段からふわふわと飛んでるホタルちゃんだけど、今は更にふらふらまで加わって飛んじゃダメな気がしたオハナはそっとホタルちゃんを蔓で絡めとって胸に抱く。
周囲を見回せばダンジョンのあちらこちらが大きく窪んだりしていて、コテツさんは地面にぐったりと横たわり、ワヲさんもぐでーっと半分溶けてしまっている。
どうでも良いけどコテツさんが横になってるとホントに白骨死体みたいでびっくりしたのは内緒だ。
「何があったの?」
オハナの質問にホタルちゃんが答えようとしてくれた時、更に奥からふらふらとサンガがやって来て――――――、
「オハナざまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
誰がオハナザマアか。
光をチカチカと激しく点滅させながら勢いよく飛んで来たサンガを、ほぼ脊髄反射レベルで蔓で叩き落としていた。
余程追い込まれていたみたい、それでもサンガはオハナの足に縋りついて、
「オハナ様の眷属である3号さまが、オハナ様がいない事に気付いて――――――」
やっぱりか……………あの甘えんぼにはまだお留守番も早かったかなぁ。
でもファンタジーなゲームで出てくる悩みじゃないよねコレ?
「コテツさんとワヲさん、ホタルちゃんの三人が満身創痍なのはどうして?」
「皆さまが3号さまを止めようとしたのですが、3号さまはテレポートで上手く逃げてしまうので捕まえようとして却ってダンジョン内に被害が……………」
今のオハナダンジョンは同士討ち禁止に設定されてるからHPこそ減らなかったものの、ダンジョン内には3号被害の爪痕が残されてしまったわけね。
ゲーム内で体力にゆとりがあっても、ずっと同じことの繰り返しじゃあ疲れるのも無理ないかな。
「それで、3号は今どこに居るの?」
「下層に居るプレイヤーさんたちを相手に暴れています、そのせいで私の所にクレームが来て処理しきれません!」
ストレス発散の為に犠牲になってしまったプレイヤーさんたちには悪いけど、今後もオハナは外に出る機会があると思うんだよね?だから3号もお留守番が出来る様に慣れて行ってもらわないと――――。
まずはダンジョンマスターの権限で3号のダンジョン内でのテレポート使用を禁止にした。
次にオハナの前まで強制的に転送すると、オハナが帰って来ている事に気付いた3号が嬉しそうにオハナに蔓を伸ばしてくる。
それら全てを叩き落とし、オハナは3号にゆっくりと近付き向かい合う。
オハナが怒ってる気配を察したらしく、3号は震えているけどもう遅いのよね。
「オハナちゃん、3号ちゃんだって寂しかったと思うのよ。だからあんまり叱らないであげて?」
「そうそう!ワシらには良い運動になったからな」
「はい、鬼ごっこみたいで楽しかったです」
3号を背に庇う様にしてワヲさん、コテツさん、ホタルちゃんが間に入って来る。
オハナが近付くほどに3号の震えは大きくなっていった。
偶々3号の背後に居た5号までもが同じように震え始めてるんだけど、それは何故?
「3号」
オハナが声をかけるとビクッとその身を跳ねさせる。
「とりあえず、サンガ含めた四人に謝ろうか?」
言われた瞬間、3号は深々と頭?(花)を下げた。
何故か一緒に5号も項垂れてしまう。
5号!?違うからね!?何で一緒に怒られてる気分になってるの!?
もしも顔が有ったなら泣きべそかいてるかもしれない。
巻き添えで恐怖を感じているらしい5号には悪いけど、それだけじゃ終われないんだよねぇ。
「ねえ3号?悪い事した自覚はある?」
その問いかけに3号は何度も頷き、腕代わりの蔓をぎゅっと絡ませ祈るような仕草をした。
5号も何故か土下座をしていた。
「そう、それじゃあ今回は皆に免じて今回はこれ以上何も言わないけれど、次同じような事があったらその時は――――――………」
更に激しく頷く3号、そしてその奥で同じように何度も頷く5号。
何かごめんね5号、位置取りが悪かったね。
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