第44話 行ってみよう♪殺ってみよう♪

〖砦〗を襲撃してみようと思い立ったオハナ、早速〖砦攻め〗を行おうとしている魔物プレイヤーさんたちが集う施設へと向かう事にした。

そこからどの砦を責めるのかを選択して、ダンジョンと同じ専用空間へと転送されるという流れになるはず……………。


何せオハナもそうした事は初めてだもの、わからなければ説明してくれるAIの方が居るだろうから遠慮なく訊けば良いんだし。



目当ての建物を見つけて、その施設に入った瞬間にオハナに集まる鋭い視線の数々にもう速攻で帰りたくなりながらも何とか歩を進めて受付のAIさんの前まで移動する。

その間も向けられる無遠慮な視線、ひそひそと話す声――――――自意識過剰と言われればそれ迄なんだけど、どうにも落ち着かない。


「はーい♪恒常イベント〖砦攻め〗ロビーへようこそ♪おや?お客様は初めての方ですか?宜しければ私の方で簡単にですが〖砦攻め〗に関して説明しましょうか?」


受け付けのウサギ獣人のお姉さんテンション高くない?

此処まで感じ悪い対応が続いてたから高低差にびっくりするわ。


「お願いします」


「畏まりましたー♪それでは簡単に〖砦攻め〗についてご説明させていただきますね――――――…………」


ダンジョンの様に広大な場所を探索するのではなく、人間プレイヤーさんたちは限られたスペースの中で〖砦〗を守る為に戦う事になるという点。

だから幾つものエリアに分かれる広いダンジョンはパーティーを組まなければ攻略に参加できないのに対し、規模がある程度絞られている砦の場合は魔物プレイヤー単体でもプレイ可能なのだそう、ぼっちのオハナにも嬉しい仕様だね。


広さがある分ダンジョンの方が有利じゃね?って最初は思ったんだけど、〖砦〗は雇えるプレイヤーさんの数が多く、〖砦〗そのものの機能を充実させていく事でどんどん強くなっていき難攻不落に近付いて行く。


今ではどの〖砦〗も簡単には破壊出来ない壁、そしてその上から矢と魔法が雨の様に降り注いでくる仕様が主流――――――要するにどれも似たり寄ったり。

他の〖砦〗の良い所を積極的に取り入れていった結果そうなっちゃったらしいんだけど、オハナたち魔物プレイヤーのそれぞれ個性的なダンジョンとは見事に真逆になったもんだね?



「――――――……説明は以上となります。他に何か質問などありますでしょうか?」

「特にありません」

「それではイベント〖砦攻め〗をお楽しみください♪」


受け付けのお姉さんの説明が終わると、オハナの前に三つのウィンドウが表示された。

どうやら此処からどの砦に攻め込むか選べるらしく、今砦に居るプレイヤーさんの数から砦の壁の耐久値、今現在砦攻めを行っている人たちの人数などが表示されていた。


うーん…………どれも似たり寄ったりだって言ってたし、どれを選んでも同じような気がする。

だったら単純明快、一番砦に居る人数(経験値)が多い所に行こうっと。


そうしてオハナが選んだのは、奇しくも〖世界大戦〗討伐数ランキングで人間プレイヤーさんの中で第一位になった人の砦だった。


それじゃあ、行ってみよう♪ってみよう♪の精神でGO!






--------------------






「暇っすねー」

「だなぁ」

「まぁ暇なのは良いじゃない、こうしてるだけで報酬が貰えるんだから」

「確かに」


「お前らなぁ、あんま露骨にサボると報酬が減らされ――――――ぐほぉっ!!!」


「なっ!?」

「攻撃されてるッ!?一体どこから!?」

「…………頭を撃ち抜かれてる?この攻撃手段、俺…………知ってるっす。植物型魔物、プレイヤー名”オハナ”。ヤツの攻撃っすよ!!」


「バカな!?ヤツはダンジョンマスターだろう!?こんな所に居るわけが――――ぶはあっ!!!」


「伏せろぉぉぉぉぉ!!!!!!狙われるぞッ!!」


「なんでよぉ………普通は一番プレイヤーの数が少なくて、砦攻めの参加人数が多い所に参戦するものでしょう……………?此処は今一番防衛プレイヤーの数が多いのよ?頭おかしいんじゃないの?」


「この砦はそんな頭のイカレたヤツに狙われてるって事か」


「でもたった一人で砦攻めに来たなんて調子に乗ってるわね?不意打ちだったから上手く行ったでしょうけど、私の弓で反撃してやるわ!!」

「それは無理っす――――――!!」

「何が無理なものか!!舐めたマネされて引き下がれるか!!――――――俺が囮になる」

「OK。その隙に私が反撃するわ」

「だから、絶対に止めた方が良いっす!!ヤツの射程は――――――」



「目立ちたがりの魔物プレイヤーめ!!こっち――――――がはっ!!!」


「な、なによあれぇ……………あんな距離届くわけないじゃな――――――!!!」



「だ、だから止めとけって言ったんすよ。と、とにかく魔物が攻めて来たって報告に行かないと――――――…………」




--------------------




うーん?あと一人居たと思うんだけどなぁ?

這いつくばったまま逃げちゃったのかな?

まぁ良っか♪得られた経験値から中々の強プレイヤーさんたちを倒せたみたいだし?


どうもー。〖砦〗の四隅に建てられた櫓、その上に居たプレイヤーさんらしき人影見つけたのでとりあえず狙撃してみたオハナです。

もう気分だけは伝説の殺し屋みたくなって、相変わらずオハナはファンタジー出来てないなぁ………。




〖砦〗って聞いて想像してたのはいかにも難攻不落って感じの滲み出る、某巨人の侵入を阻むかのような高い壁と、一体どういう仕組みで開閉されてるのか簡単には想像もつかない大きな門だった。


そんなのオハナ一人が挑んだって無理ゲーじゃない?


そんな風に半ば諦めながら実物を見ると………………。

石造りの壁が確かに築かれてるものの、想像していたよりもずっと低い。

その壁の上を見回りかな?砦で雇われてるプレイヤーさんらしき人影が動いてる。

四隅の櫓にもきちんと人が配置されていて、壁に張りつこうとすれば集中攻撃を浴びるのは間違いないね。


今オハナが居るのは〖砦〗から少し離れた場所にある小高い丘の上、此処から狙撃できれば多少楽なのになぁ――――――なんて考えてたら、反応しちゃいましたよ。

サンガに確認して問題無いと判断された例の自動照準、頼もしい限りです。


櫓の上に居るプレイヤーさんたちに反応して狙いを定め始める蔓。

届くのかな?と、疑問に思いつつその導きのままにオハナは弾丸を射出すると………………ばっちり当たっちゃったよ。


スキル〖遠距離射撃強化〗を習得しました。


これ知ってるー。

弓遣いの人が得るスキルで射程が伸びたり、遠距離攻撃の威力が上がったりする奴だよね?


スキル〖遠距離射撃強化〗と〖眷属射出攻撃:改〗を統合。

新たに、スキル〖遠距離射撃攻撃:改〗を習得しました。


…………………なんですと!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る