第43話 そうだ。砦に行こう
ダンジョンのエリア外へと旅立ったオハナ、初めて見るフィールドにちょっと感動した。
キレイだなぁ~っていうのは聖域に居た時から思ってたけど、今まで薄暗い洞窟内に閉じこもってたから余計に綺麗に見えるのかも。
今オハナが居るのは魔王の勢力圏内なんだけど、そんな事を聞いて居てイメージしたのは碌に植物も無い荒野と黒い大地だったんだけど、全然そんな事無くてごく普通の自然豊かな世界だった。
オハナは5号を伴って今居る場所から一番近い町に行ってみる事にした。
このゲームでは〖勇者側〗、〖魔王側〗の勢力圏内にある町にしかそれぞれのプレイヤーは入ることが出来ないんだって。
だからオハナは〖魔王側〗の町には入れるけど、〖勇者側〗の町へ入ることが出来ない仕様になっている。
サンガから事前に説明を受けて、まず町に入って大暴れだ!――――――なんて考えていたオハナの出鼻はいきなり挫かれてしまった。
大暴れしたい人は〖世界大戦〗で頑張ってね?って事みたい。
じゃあどうして町に向かってるのかって?
そんなのただオハナが見たいからに決まってるじゃない。
主な目的は経験値稼ぎだけど、移動できなかった分こうしてぶらり旅を満喫しても罰は当たらないでしょ?
5号も連れて来た当初は状況が呑み込めなくて混乱していたみたいだけど、オハナが外に出て世界をゆったりまったり見て回るつもりだと言うと、ぴょんぴょん飛び跳ねて全身で喜び?を表現してくれた。
今はオハナを守るSPさんのようにオハナからつかず離れず行動してくれている。
5号にとっても、いい気分転換になってるのかもね。
オハナ個人の意見として、オールラウンダー――――――所謂万能型は器用貧乏、もっと言えば中途半端になり易い。
今の5号がまさにそんな状態、居てくれるとみんなの補助をしてくれてとても助かるんだけど5号単体の戦闘力を考えた時に、どうしても他の子たちに比べて見劣りしちゃうんだよね……………………完全に先に進化してる2号の下位互換〖マンドラナイト〗だし。
自我は無い筈で、まるで感情がある様に学習して動いているだけなのかもしれないけど、最近の5号は元気が無いように見えたのもあってこうして連れて来ていた。
「ヒュールルルルル」
町へと向かう道中、そんな声を発しながらホタルちゃんと同じくらいのサイズの球体のまるでお饅頭のような柔らかそうなボディをした赤、青、緑の半透明な何かがオハナの行く手を遮る様に突然現われた。
どうやら魔王の勢力圏で自然に現れる、〖勇者側〗で言うところの魔物的存在―――〖微精霊〗だった。
魔物プレイヤーさんはこれを倒す事で経験値を得てるんだね。
蝶々やカエルをデストロイしてきたオハナにはとても可愛らしい敵でしかなかった。
相手のレベルとかわかんないけど、どれくらい強いんだろう?
とりあえず、オハナキーック!!(※ただ根っこで突いてるだけ)
か~ら~の~、
オハナチョーップ!!(※ただ蔓で叩いてるだけ)
オハナが持つ中で一番弱い攻撃手段であろう物理攻撃を、技っぽく繰り出してみたら呆気なく倒せてしまった。
この辺りに居る〖微精霊〗は弱いみたいね?経験値もホント微々たるものだったし。
それが確認できたのは良いんだけど――――――……………。
オハナが周囲を確認すると、オハナたちを取り囲むように〖微精霊〗が大量に出現していた。
………………出現率おかしくない?
そんな事を思ったのも一瞬、すぐに毒ダメージフィールドを付与した6号と7号マンドラゴラを地面に植える。
オハナの持つスキルのおかげで威力が増幅されたそれで、殆どの〖微精霊〗を消滅させることが出来た。
それでも効果範囲外に〖微精霊〗はまだ居て、6号、7号をすぐに抜いてまた別の場所に同じ効果を付与した二体を植える――――――を繰り返し、漸く全員片付け終わった。
オハナと5号には微々たるものだったけど、6号と7号にとっては充分レベルアップ出来る量の経験値が入ったのでこの戦闘も無駄じゃなかったと思っておこう。
さてと、それじゃあ道も空いた事だし町に行くとしますか。
魔物プレイヤーさんたちの町、当然そこには魔物しかいなくて、他は本当に普通の町――――――建物は煉瓦造り、高くても3階建ての建物までしかなく、よく見るファンタジー世界そのままだった。
「おい、あれって――――――」
「賞金首……………」
町の景観を眺めているとそんな声が風に乗って聞こえて来た。
声のした方を振り返ると、ひそひそとオハナを遠巻きに見て喋る魔物プレイヤーさんたち………………あまりいい気分じゃないなぁもう。
そう言えばオハナって賞金首になってたっけ?
ダンジョンから出ないからすっかり忘れてたわ。
確か、〖世界大戦〗上位10人が賞金首になっちゃったんだよね?
ダンジョンで引き篭もり生活してたオハナなんてもう賞金としては一番ショボい金額なんじゃないかな?
進化して姿形が変わっても、すぐにそれが手配書の方に反映されちゃうから逃げられないのは本当にメンドい仕様だわ。
人間プレイヤーさんも装備を変えてもキャラの姿を変えても随時更新されるから、賞金を稼ぎたいと思ってるプレイヤーさんには嬉しい機能だったりするのかな?
狙われてる身としてはそこまで勤勉にならなくてもいいのに――――――なんて思っちゃう。
それにしても、同じ魔物プレイヤーさんに「賞金首」なんて言われたくないんですけど!?
味方だよね!?この間トライアルで沢山殺しちゃったけど――――――。
――――――……………そう言えば、〖勇者側〗のプレイヤーさんたち上位3人は〖砦〗を貰ったんだっけ?
…………………プレイヤーさんたちがいっぱい居るって事だよね?
…………襲撃しちゃう?だけどオハナと5号だけで大丈夫かな?
様々逡巡した後、
とりあえずやってみよう!
そんな結論に落ち着いた。
べ、別に考えるのが面倒だったとかじゃないんだからねっ!?
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