第40話 フィーリングが大事

うーん…………確かに脅しをかけたのはオハナなんだけど、気を失っちゃうとは思わなかった。

一先ずこんな場所に放置していくほど鬼畜じゃない、〖イービルアイ〗の人をそっと拾い上げたところで魔物プレイヤーさんたちとの戦闘を終えた眷属たちとワヲさんコテツさんが戻って来た。


今オハナに流れて来た経験値から見ても結構な数居たはずなんだけど、みんなはまだまだ余裕っぽい。


「ねえサンガ?まだ何か文句ある?」


さっきまでスケルトンとスライムなんて――――――と嘆いていたサンガにドヤ顔して、ふふんと問いかけてみる。


「た、偶々偶然センスのある方を仲間に出来ただけでしょう!?次からもっと慎重に――――――」

「はいはい、わかりました。あぁ後この人も採用するから」


「全っ!然っ!解って無い奴じゃないですか!!鶏だって三歩歩くまでは物事を覚えてるらしいのに私の意見を秒殺しないでください!!そもそも誰なんですかその〖イービルアイ〗さんは!?何故気を失ってオハナ様に抱っこされてるんですか!?雇う?形状が私と被るので断固としてNGです!!」


おぉう……………サンガが今までで一番荒ぶって居られる。

同じ丸い形状だからってそこまで怒らなくてもいいじゃない?

そもそもサイズ感と質感?と言うか肌感?は別物なんだし、そこまで気にしなくてもいいと思うんだけど?


「まぁまぁ落ち着きなって、オハナちゃんだって何も考え無しで雇うなんて言ったりしないだろうよ」

「そうですよ、サンガちゃん?まずはオハナちゃんの意見もちゃんと聞いてあげないと、理由も聴かずに否定するなんて可哀想よ」


コテツさんとワヲさんがサンガをどうにか宥めてくれるのは良いんだけど、ただ何となく気になっただけで、それ以外に大した理由なんて無いんだけどなー……………。

でも此処で正直に「理由なんて無い」なんて言うとサンガの怒りが長引くのは目に見えてるし、それっぽい理由をでっち上げるしかないか。


嘘はバレなきゃ嘘じゃない。

嘘は吐き続ければホント…………のような気がしてくる。

そんな気分でGO!


「この人は皆にも気付かれる事無く私に接近して来た。それだけでも将来有望だとは思わない?」


この場には眷属たちとコテツさん、ワヲさんとサンガまで居て、オハナが気絶してしまったこの人を拾い上げるまで誰一人認識できていなかった。

他の人からすれば理由としては弱いのかもしれないけど、これまでオハナの眷属たちの優秀さをダンジョンで常に目の当たりにして来たサンガならきっとそれだけで充分な理由になるはず――――――。


「……………………わかりました。この方の意識が戻り次第旗を受け取っておいてくださいね?」


まだまだ言い足りないんだろうけど、色々と呑み込んでくれたサンガはふわふわとオハナから少し離れて行った。


「ありがとね。サンガ」

「礼などは不要です。私はオハナ様をサポートする存在ですから、ダンジョンが充実するのは私も望む処ですので――――――」


バツが悪いのか尚も離れて行こうとするサンガを蔓で捕まえて引き寄せる。


「なっ!オハナ様!?」


そのまま別の蔓を使ってサンガをうりうりと撫でてあげた。

手が複数あるような不思議な感覚だけど何故か普通に何の違和感も無く使えちゃってるなぁ……………なんて思いつつ、サンガのオリハルコンボディのつるつるとした感触を堪能する。


「それじゃあ後二人、ちゃっちゃと決めちゃおっか♪」

「オハナ様!まずは放してください!何故かとても恥ずかしい状況に感じます!!」


失礼な、オハナ眷属たちには好評なんだよ?


試しに他の眷属の子たちに蔓を伸ばして撫でてみる。

うん。みんなほっこりして大人しく撫でられて――――――って3号!?


何故かそこにはいつの間に3号も居て、オハナの蔓に撫でられていた。

また来ちゃったの!?ていうか、どうして狙い澄ましたかの様な状況で来るの?

エスパーなの?オハナの知らないスキルとか隠してないよね?


オハナが3号が居る事にびっくりしていると、


「う……………うぅん……………」


オハナに抱えられていた〖イービルアイ〗さんが目を覚ましたみたいだった。

その時になって漸く3号もオハナに抱っこされた〖イービルアイ〗さんを認識したようで、しきりに「それは誰!?」といった反応を見せていた。


「3号、この人はこれからダンジョンで一緒に働いてくれる(予定の)人だから仲良くね?」


3号に釘を刺す意味でオハナが言うと、一瞬にして大人しくなる3号。

はぁ…………まったく、他の子たちはそこまでじゃないのにどうして3号だけこんなにも全力なんだか。


「あ、あのぅ…………………」


おっと、〖イービルアイ〗さんを放置してた。


「気が付いた?ごめんね?びっくりさせちゃって」

「い、いえ!そんな!折角気付いてもらえたのに、私の方こそ気が動転してしまって――――――」


あわあわとテンパる様子は何だか微笑ましいね。

声の感じからすると、まだ幼さが残ってる女の子のように感じるからもしかして年下なのかな?コテツさん、ワヲさん同様当てには出来ないけども。


「トライアルに参加してるって事はオハナのダンジョンで働いてもらえるって事で良いのかな?」

「は、はい!!勿論です!!」


力強く肯定してくれた後、またあわあわと動いたかと思えば〖イービルアイ〗さんの頭上に旗がポンッと出現した。


「えぇっと、名前はホタルです。種族は〖イービルアイ〗宜しくお願いします!!」


まるで告白でもしてるかのような気合の入った自己紹介。

うん、元気が有って良いね。

オハナはホタルちゃんの頭上に浮かぶ旗をそっと受け取ると、


「こちらこそよろしくね?ホタルちゃん。オハナダンジョンへようこそ!」


今度は怖がらせたりしないように、満面のオハナスマイルで迎えてあげた。

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