第38話 オハナダンジョンは強さよりも人柄重視?

じりじりとオハナとの距離を詰めるスケルトン&スライムのコンビ。

オハナも彼らと距離を保ちながら攻撃する機会を窺いたい処なんだけど……………。


頭蓋骨の上でぷるんぷるんと揺れるスライムが気になって仕方がないッ!!


捕食中?ねぇ捕食中なの?

スケルトンさんはスライムさんに分解されて骨になったの?等々――――――。

かなりどうでも良い事を考えていたオハナ。

完全にスケルトンさんの動きに出遅れてしまった。


手に持っていたボロボロの剣を振り翳してオハナに突撃してくるスケルトンさん、即死が効かないから普通に眷属射出攻撃のダメージで倒そうと試みるも、スケルトンさんの頭上でぷるぷるしていたスライムさんがうねうねと形を変え、スケルトンさんを守る様に広がってオハナの攻撃を防御してしまった。


うーん…………メンドクサイね。

スライムって確か物理攻撃耐性を持ってたはずだから、オハナの眷属射出攻撃でもあまり効果が無いみたい。


オハナは多脚型機動兵器のように忙しなく根っこを動かして、二人と距離を保つことに専念する。

他に何か攻撃の選択肢は…………………あぁ、有ったね?

眷属射出攻撃があるから使わないやって言ったけど、こんなにも早く活躍の機会が訪れるだなんて――――――これもオハナの〖運〗のステータスの高さのおかげなのかな。


「ストーンバレット!」


オハナが覚えたばかりの〖土魔法〗、これなら物理じゃなくて魔法攻撃だからスライムさんにもスケルトンさんにも普通にダメージが通るはず。


スケルトンさんは何度もストーンバレットをボロボロの剣で受け流したり、撃ち落としたりしてさらに剣がボロボロになっていく、今にも折れてしまいそうだけど決して頭上のスライムさんを盾にしようとはしなかった。


「嬢ちゃん。可愛らしい見た目なのに、随分エグい攻撃してくれる……………」


此処で漸くスケルトンさんが言葉を発した。

今のダンジョン内では魔物プレイヤーさんたち全員が進化がまだでも話せるように設定してるので会話も可能、眷属たちは適用外なのがオハナにとっての痛手だけど。



スケルトンさんの声は渋めでドスの利いたかなり年季の入ったものだった。


「爺さま、大丈夫ですか?」

「まだ行けるわい、大人しく見てろ婆さま」


スライムさんの方は穏やかと言うか、丁寧に年を重ねて来たような品のある女性の声だった。


爺さま?婆さま?意外に年上なのかな?とは思ってたけど、まさかまさかの熟年夫婦?それともそういうなりきりプレイ?


「手配書に載ってた絵と随分姿形が変わっちゃっているけれど、貴女がダンジョンマスターのオハナちゃんで良いのかしら?」


あぁ、そういえばまだ名乗っても居なかったっけ?

出遭っていきなりピリピリした戦闘モードだったもんね?

そのさっきまでのピリピリした空気はスライムさんの問いかけで完全に霧散しちゃったわけだけど。


「はい、そうです。私がこのダンジョンの主であるオハナです」


戦闘態勢を解いて、自己紹介をするとスケルトンさんも構えを解いた。


「はじめまして、私はワヲ。こう見えてスライムなんですよ?そしてこっちが――――――」

「婆さま!呑気に自己紹介しとる場合じゃないだろう!」

「あら、何を言います!!私たちはもしかすると彼女に雇ってもらう事になるかもしれないのに、きちんと御挨拶もしないだなんてそんな失礼なマネ出来ませんよ」


オハナそっちのけで話し込んでしまう二人、夫婦喧嘩勃発か?と思ったけど、傍で聞いてる感じだとスケルトンさんの言い分をスライムさん――――――ワヲさんが優しく諭してるような状態だった。

あとワヲさん?こう見えてって言うか、どう見ても普通にスライムですよ?


まぁ何にせよ、オハナからすれば余所でやって?って思う事に変わりは無いんだけどね?


うーん、眷属たちに手出しさせないようにしたのは失敗だったかな?

だけどこの二人の相手は眷属たちではちょっとしんどいだろうし、結果的に見ればオハナが最初から相手できて良かったと思っとこう。


それにしてもまだこのご夫婦のお話は終わらないよ?どうなってるの?

確かにオハナは暇だったけどさ、無関係の熟年夫婦の言い合いを傍観してるほど無駄な時間の潰し方も無いよね?


スケルトンさんの人柄はまだ全然だけど、ワヲさんの方は礼儀正しい人なんだろうなっていうのは伝わって来た。

だから、


「二人とも採用しますから旗を出してください」



「「え?」」


スケルトンさんとサンガの声が重なった。

ワヲさんだけは素直に旗をオハナに差し出して、


「これから宜しくね?オハナちゃん――――――あらいやだ、今更だけれどオハナちゃんって呼んじゃってるけど良いかしら?」


のほほんとした独特の空気感を纏わせていた。


「婆さま!?何を――――――」

「爺さま?早くしないとオハナちゃんの気が変わってしまうかもしれませんよ?」


まだ何か言おうとしたスケルトンさんだったが、ワヲさんの一言に完全に封殺されていた。

おずおずと旗を差し出すスケルトンさんからそれを受け取り、


「オハナです、よろしく」

「ワシはコテツ、見ての通りスケルトンじゃ」


がっしりと握手をしながらの自己紹介をした。



こうして、オハナダンジョンに初めての従業員?社員?まぁ何でも良いや。

ダンジョンで働いてくれる魔物プレイヤーさんが出来たのだった。






「こんな適当な流れで決めてしまって、しかもまだ進化もしていないスライムと進化序盤のスケルトンだなんて――――――………後で悔やんでも知りませんよ?オハナ様……………」


サンガから何か怨念?呪詛?毒電波?が出て来てる気がするけど、そういうのはもう丸っと無視することにした。

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