第25話 ラストバトルの無い最期の言葉
瀕死状態のビジネスチャラ男――――――名前なんだっけ?まぁどうでもいいや――――――を蔓でぶら下げる。
もう抵抗する気力も残ってないみたいだけど、とりあえず2、3回地面に叩きつけてみる。
まだ光になって消えないところを見ると、このチャラ男意外と頑丈なのかもしれない。
そんな状況に、
「ツバサ!!!」
ドレッドマッチョさんが駆けつけて来た。
装備はもうほとんど残っていなくて、オハナにも無理をして駆けつけて来たのだと一目でわかった。
なんだ…………ゴリさん良い奴じゃん。
こんなのを心配して無理して駆けつけるなんて……………。
そんな風にオハナが内心感動していると、逆さ吊りにされたツバサを黒い球体――――――オズワールドファンタジー内を撮影できる専用の機材でジーッと撮り続けるゴリさん。
あの~何してんの?……………助けに来たんじゃないの?
ビジネスチャラ男もその光景に思うところがあったらしく、
「何撮ってるんだよ!!?そんなの良いから早く助けろよ!?」
逆さ吊りの状態で文句を言い出した。
さすがに頭に血が昇ることはないからこのままでも死にはしないだろうけど、今の彼はとてもカッコ悪い姿を生配信で晒している事だろう。
「はぁ?俺たちが散々止めたのにお前が生配信やろうって言い出して強行したんだろ?その結果返り討ちされたとしてもその様子まで包み隠さず配信しないとな?」
撮影しながら尤もらしい事を言ってるゴリさんだけど、その口元は隠し切れないくらいに笑っていた。
「ふざけんなよ!!俺のおかげで強くなれたくせに!!」
「確かに世話にはなったが、序盤だけだろ?その後は純粋に俺の努力の賜物だ。今となっちゃあテメェの方こそ俺の手柄を横取りしてんじゃねぇか」
「うるさい!うるさい!お前なんてゴリ寄りのゴリのくせに!!」
「テメェ言ったな!?言っちゃいけねぇ事言いやがったな!!?」
二人ともオハナの事を無視しないで欲しいんだけど?
あとアリ寄りのアリみたいに言ってるけど、ゴリ寄りのゴリはもう普通にゴリラだと思うの。
「ビジネスチャラ男!!」
「ゴリラ獣人!!」
ゴリラ獣人!?――――――………類人猿?
もう少し聞いて居たい気もするけど段々ただの悪口の言い合いになってしまったので、鬱陶しくなってきたオハナは武力介入する事にした。
喧嘩両成敗!!
戻って来ていた1、2、5号の圧倒的な戦力によって二人はボコボコにされ、HPが残り少なかったんだろうね?ビジネスチャラ男が先に光となって消えた。
残るはゴリラの獣人――――――じゃなかった、ゴリさんだけになった。
もう観念しているのか、地面に座り込んで沙汰を待って居るだけに見えた。
「アンタ、強ぇなあ。たった一人でそこまで強くなるなんて――――――スゲェぜ」
抵抗する素振りも見せなかったけど念のため三人に取り囲んでもらった。
「俺もこのゲームを始めたばかりの頃は強さを追い求めて――――――」
その間にもゴリさんは何やら自分に浸り、ブツブツと語り始めたんですけど?
オハナは当然右から左へ聞き流します、聴いてあげる義理もありませんし?
それにしてもこの人今の状況に気付いてるのかな?
そして暫くして、
「決めた!!」
ゴリさんはまだ手に持っていた撮影機材を自分に向けると、
「え~っと、俺はツバサとは縁を切る事にした!応援してくれた連中には悪いけどよ?俺はこれから魔物プレイヤーとしてやり直す事にするわ」
え?何その超展開!?
全然話聞いてなかったから話が何処にどう着地したのかもよく解らないんですけど!?
そのままゴリさんは撮影機材を地面に叩きつけると、上から踏み潰した。
メキメキと音を立てて消えたそれを見届けたゴリさんは晴れ晴れとした顔をしていて、
「待たせてすまねぇな?これが俺の人間プレイヤーとしてのラストバトルだ。悪いが付き合ってもらうぜ?」
まだ全然話について行けてないオハナだけど、今のゴリさんには戦意が漲ってる事だけは理解できた。
すぐさま1,2、5号が阻止しようとするけど、オハナがそれを止めた。
「直々に相手してくれんのかよ…………恩に着る」
そういうのじゃない、だって――――――…………。
ボロボロになりながら武器を構えるゴリさん、その姿が徐々に光に代わり薄くなっていく。
今までの蓄積ダメージと自分語り中に〖毒ダメージフィールド〗の効果で与えたダメージで既に勝負は時間の問題だったから。
その様子を呆然としながら見るゴリさん、
「…………ったく、最期の最期まで締まらねぇなぁ」
それが彼の――――――ゴリさんという人間プレイヤーの最期の言葉になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます