第18話 オハナ、イベント戦場に咲く

〖世界大戦〗当日。

これからプレイヤーたちは一週間という短い期間ながらそれぞれの勢力の為、自分の為に今まで育ててきた力を揮う。

御大層なネーミングのイベントだけど、やってる事は陣取り合戦。

マップ上にエリア分けされた区画に必ず一つ旗が表示されていて、その旗を取ればそのエリアは自分たちの物になる。

最終日にそれぞれの本陣から繋がった区画の多い方が勝ちってことになるらしい。


それから〖世界大戦〗のバトルフィールドで死亡した場合、その日はもうイベントには参加できないみたいだ。眷属はその限りじゃないみたいだけど、これは遊び尽くすためにも簡単には死ねないね?



ゲーム内に入ると早速オハナは真っ暗な空間へと飛ばされた。

戦闘は既に始まっているという設定で、目の前にマップが表示されて戦況が随時報告される。

此処はブリーフィングルームのような扱いになるのかな?

目の前に表示されたマップから転送先を選び、〖世界大戦〗のバトルフィールドへと送られるみたいだ。


それをぼんやりと眺めてみる。

マップを見ただけでパッと戦況なんて解らなかったけど、マップ上に青色で表示された〇が味方、赤色で表示された〇が敵みたいだね。


それによると、主戦場となっている大平原に殆どのプレイヤーが殺到してるのが分かる。

そりゃそうだよね?どうせ参加するなら活躍したいだろうし、ランキング上位を目指すガチ勢なら激戦地に赴くのは理解できる。

理解は出来るんだけど……………ちょっと殺到し過ぎじゃない?

陣取り合戦なんだから旗を守るのもそれなりに必要なはずなんだけど………………マップに表示されている旗の近くには人がそんなに居ないような状態だった。


どうやら主戦場付近には戦闘大好きサイ〇人しかいないらしい。


青と赤の〇がひしめいていて、ちょっと目に優しくないマップと格闘して視点を少し変えると、主戦場から外れた場所を赤い〇の集団が移動しているのが分かった。

それを迎撃するためなのか、青い〇もその赤の集団の正面に陣取っているんだけど赤の集団よりも数が少ない。

このままだと旗を取られて敵のエリアが増えてしまう。


初日だし………雰囲気を味わうだけでも良いかも。

気になるし、行ってみれば良いか――――――。


そんな軽い気持ちで、オハナの初めてのイベント戦場を決めた。







転送された場所はさっきの味方――――――青の集団より少し後ろの位置、2Dマップではその距離感もよく分からなかったけど、主戦場が遠くに見えていた。

オハナは旗のすぐ傍に転移していた。


えー…………?これもうオハナが旗を守んなきゃいけないポジションじゃん………。

位置的にはオハナが旗を立てた人みたいになってるんですけど?


移動できないから元々そのつもりだったけど、オハナ一人で守る羽目になるのも勘弁してほしい状況だった。こちとら初参加なんよ?

案の定、周囲の魔物プレイヤーさんたちからの「絶対に守れよ」的な圧が凄すぎてもう既にゲロ吐きそうなんですけど?


あぁ、まだイベントに参加したばっかだけど、お腹痛い、もう帰りたい………。


早くも重圧に負けてホームシックになりかけていると、


「移動も話も出来ない植物型の魔物?まぁ良い、防衛には役立つだろ。俺たちは敵の旗を取りに行くから此処は任せたぞ」


初対面なのに偉そうな態度の魔物プレイヤーがそう言い残して、全員で攻め込みに行ってしまい一人取り残されるオハナ。


イベントでもぼっちかぁ……………プリムさん以外のフレンドさんでも出来たら良いなぁとは思ってたんだけど、意思疎通のできない植物型魔物じゃやっぱ無理なのかな………。


楽しもうと思って意気揚々だった気分がちょっとへこむ。

けどそれも一瞬の事、だってオハナは元々ぼっち魔物だもの。


気を取り直して前を向くと、遠目に敵が近付いてきているのが見て取れた…………って、あっちってさっきの人たちが出てった方向じゃないか!?


ぷーくすくす、アイツら偉そうな口叩いて秒殺でやられてやんの――――――。


なんて、嗤ってる場合じゃない!!

彼らを秒殺するくらいに強いプレイヤーたちが、今度はオハナに向かって来てる!?




おいでなさい!!1号!!2号!!3号!!


1号と2号の種で敵の数を減らしつつ召喚、3号はオハナの近くに植えてすぐに3号も眷属を植えてもらう。

4号と5号の弾丸で出来るだけ敵の数を減らす――――――けどキリがない。

主戦場じゃあもう活躍できそうにないからってサ〇ヤ人共がこっちに押し寄せて来たみたいだ。

弾丸にしてる二体の復活スピードが間に合わない。


1号の踊りの効果で進軍速度は遅くなってるけど、ジリ貧確定。

一人殺す毎に、向こうの殺意がマシマシで突撃してくるのが凄く怖い。


それならっ――――――!!


復活したばかりの4号を1号と2号に足止めされている集団の中央に着弾させ、生まれて来た4号ことマンドラゴラ。

敵もマンドラゴラを知ってるから当然引き抜くような馬鹿は居ない――――――オハナを除いて。

蔓を伸ばして草を掴み、全力で4号を引っこ抜く。


「!”#$&’{‘*}?――――――!!!!!」


遠くに聞こえるデスヴォイス、4号の断末魔が響き周囲に死をばら撒いて消えた。

黄泉地への叫びは引っこ抜かれれば自動で発動する、それはつまり別に引っこ抜くのはオハナでも何の問題も無いわけで…………。

それに即死の影響を受けるのは敵だけ、そんなの利用しない手はない。

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