第9話 祝・初フレンド
リスポーンまであと――――――。
そんな声が頭に響き、眼を開けるとそこは真っ暗な空間だった。
目の前には先ほどのエルフ少女が寝ている。
真っ暗なのに不思議と彼女は良く見えた。
これが、この世界の”死”か――――――。
以前プレイしていた殺伐とした世界では瞬時にロビーに移動させられていたんだけど、このゲームの場合は一度こうした空間に戻ってそれから初期位置に戻るという事なのだろう。
「ん………んぅ…………」
どうやら彼女も目覚めたようだ。
ごしごしと目を袖で拭い、辺りを見回す。
そしてオハナと目?が合うと、
「申し訳ございませんでした!」
粛々とその場で土下座をし始めた。
「まさかあのお花がプレイヤーさんだったなんて思いもよらず…………」
どうやらここで漸くオハナの事をプレイヤーだと認識してくれたらしい。
引っこ抜かれ死んだことに怒りもあったけど、ここまでちゃんと謝ってくれるとは思わなくて、
「頭を上げて下さい、あんな状況じゃ仕方がなかったと思いますから」
なんかもう広ーい心で許せてしまっていた。
べ、別にアバターが美少女だったからじゃないんだからねッ!?
この場ではどうやらオハナも”話せる”らしく、俺自身の野太い男の声じゃなくて、透明感のあるとでも言うのだろうか?耳に心地の良い声が発せられていた。
オハナのめっちゃ美人ヴォイスに目の前のエルフさんが驚いて目を丸くしてる。
それよりも、喋った当の本人が現在進行形でめちゃくちゃ驚いてたりする。
「朝ですよ?起きて下さい?」とか録音して目覚まし時計にしたいくらいの声だ。
とても死の間際に言語化不可能なデスヴォイスを放ったとは思えないね?
「あ、すみません。私ったらぼーっとしてしまいました。お綺麗な声ですね?つい聞き入ってしまいました」
オハナという♀キャラになって初めての別のプレイヤーさんとの会話、こんなクリスタルヴォイスが出て来るとは思わなかった。
ネカマプレイというものは初めてなんだけど、この声のせいで無駄にハードル上がってない?果たして俺にこの声の持ち主として相応しいような女性としての振る舞いが出来るのだろうか?
「ありがとうございます。そんな風に言って戴けてとても嬉しいです、私の名前はオハナと言います、見ての通りの魔物です」
「私はプリムと言います、職業は
「それが――――――………」
それから俺は、オハナの声から来る女性像を壊さないよう言葉遣いに配慮してプリムさんに今までのオハナの冒険譚(観察日記)を話した。
「――――――そんな苦労を為さっていたんですね。私でどうにか力になれると良いのですけど……………」
プリムさんは初心者さんっぽかったけど、めちゃくちゃ良い人だった。
物腰も丁寧で好感が持てた俺は、ふととある機能を思い出した。
「プリムさん、良ければフレンドになってもらえませんか?」
「宜しいのですか!?是非お願いします!」
言ったは良いけど、魔物キャラと人間キャラでフレンド登録は可能なのだろうか?
一応世界観としては敵同士って事になってるわけだし……………。
そう思いながらもメニューを開き、フレンド申請のボタンを押してみる。
何の問題無く登録は完了し、俺とプリムさんはフレンドになった。
この世界でフレンドになれば、フレンドスキルというものが使用可能になる。
自分のキャラが持つスキルを一つ、回数制限はあるけどフレンド登録した人も使用可能になるというもので、オハナは今フレンドスキルでヒーラーが初期で覚えている回復魔法”ヒール”が5回使用可能になっている。
因みにオハナは毒攻撃を登録してある為、プリムさんは今それが使える様になったはずだ。
「――――――それにしてもさっきの状況は酷かったですね?いきなり複数人に囲まれるだなんて」
そこから暫く、リスポーンまでの間雑談に興じるオハナとプリムさん。
話題は死ぬ前の状況について訊いてみた。
「はい、草むしりするだけの簡単な依頼の筈が、まさかあんな怖い目に遭うだなんて……………」
VRとはいえ、リアルな複数人――――――それも武器を持った男たちに詰め寄られるというのは、怖いに決まってる。
想像すると俺も怖い、そしてやっぱりゲームのジャンルが違う。
おいファンタジー仕事しろ!!
少なくとも此処に二人、ファンタジーな世界でRPG出来てない人間が居るんですど!?
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