第8話 おうち


いえ、おうち、かえるところ


あんしん、ねるところ、ごはん


ただいま おかえり



父さんは、家を買った。

凄く ステキな家だった。

小学2年になる春に、前の家から

離れた場所に、引っ越した。


金木犀が、家の門扉の横に植わっていた。

走り回れる広いお庭があった。


母さんは、車の免許を取って

新しい家に引っ越す日

私は、母さんの運転で家に向かった。


父さんの運転とは違って

母さんの緊張が伝わってきて

ドキドキしたなぁ。


引っ越しのトラックに、引っ付いて

見慣れた景色から

少しずつ離れていく。


木が多くて、お店がなくて、山があって

田舎だったけどね。

あの、大きくて真っ白でキレイな家が

大好きだったよ。


大好きだったよ。



これからの記憶は

少しずつ 大切に 思い出していこう。

もう、破れてしまった

あの日の頁も あるだろうから。


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