第6話 小さな 嘘つき


あれ、どうしよう。

わからない、どうしよう、どうしよう。


幼稚園の、青色のスモックを

ポタポタポタポタと

涙で、更に濃い青に滲ませてる子。


そんな幼稚園児だった。


早く、支度をしなくちゃいけないのに

早く、遊びたいのに。


毎朝、下駄箱の前に来ると

さっそく、私は泣いていた。

自分の下駄箱が、分からなくて


先生が、お花のシールを貼ってくれたのに

四角い下駄箱はいくつも並んでるから

お花のシールの上に入れるのか

下に入れるのか、わからなくて泣いてしまう。


食べるのも、遅いし

のんびり過ぎる、のんびり屋で

皆んなが、わーっと駆け回る園庭の端で

1人 葉っぱをむしったり

少し自分の世界にこもるような事を

していたのかもしれない。


落ち着くから、安心だから。


だけど、幼稚園の先生は大好きで

先生は私のことを、よく抱きしめてくれた。


先生の匂い、大好きだったな。

母さんの匂いとは違って

いつも、少しドキドキしたけどね。


私に、とびきりの元気と笑顔を

向けてくれた先生、どうしてるのかな。


幼稚園の頃の記憶は曖昧だったり

するけれど、先生のことはちゃんとある。


先生、ごめんね。

下駄箱、分からないって言えなくて

お花のシールを剥がしてしまったこと。

嘘ついて、ごめんね。


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