第4話 甘く 溶ける


病院に着いた。

母さんの 病院だ。道路の向かいに

コンビニが あるから 間違いない。

いつもアイスを 買ってもらうから

ちゃんと覚えてる。


病院は、古くて静かで 白くて 四角い

なんだか、冷たい感じ。

静かな病院の廊下、ぶかぶかのスリッパが

ペタンペタン 大きな音を響かせる。


父さんの、あったかい手に連れられて

階段を上って

案内された部屋に 母さんが居た。


ベッドに座って 私に気付いた母さんの顔


お母さん。


私の名前を、すごくすごく優しく

呼んでくれる いつもの声


お母さん。


手を広げて、早くおいでって

してくれてるのに

なんだか疲れた顔してるし

元気じゃなさそうだから、足が出ない。


けど、私の中は

お母さん、お母さん、お母さんて

叫んでる。


ペタンペタンペタンペタン


恥ずかしくて、顔が見れない。

へらへらしてたかもしれない。

ぎゅーっと、ぎゅうっと母さんに

抱きついたら

痛い痛いって言われたけど ごめんね。

引っ付いて引っ付いて 離れたくないよ。



母さんは、病院のトイレにも

付いてきてくれた。


おしっこ したら ほっとして


おばあちゃんの 愚痴も言っちゃった

気がする。


病院の帰りは、寂しかったけど

直ぐに帰るねって、母さんと

指切りげんまんをしたし

美味しいごはん 沢山作るねって

母さん、笑ってたし


お父さんは

いつもの向かいのコンビニで

チョコレートのアイスを買ってくれたから


家に帰るまでの道は

母さんに、会えたホクホクと

口の中のチョコレートアイスで


悪くなかったかな。


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