Ⅲ
生徒が良くても、教師が良くないのは丸分かりであり、その上で、学校内の様々なことを教えないといけなくなるのだ。
「週末かぁ・・・・・・。ミキは何か用事ある?」
それを聞いたアヤカが、ミキの予定を訊き出す。
「特にはないかな? いつもどおりに起きて、ヤマト君の家に行くくらいかな?」
ミキは平然と言う。
「あんた、私と買い物に行っている時以外は、ヤマト君の家にいつも居すわっているわよね? なんだかなぁ? もどかしいっていうか、なんというか、あんたたちの関係、未だに分かんないのよねぇ・・・・・・」
「ただの幼なじみだよ。それ以外、何にも特別な関係なんてないよ」
そうしているうちに男女トイレを通過して、二年二組の教室にたどり着いた。
ミキが教室に入ると、クラスメイトが一時間目の授業の準備をしていれば、朝っぱらからパンを齧り付いているクラスメイトもいた。
「おはよう」
「おはよう」
「おはようさん」
挨拶をすれば、クラスメイト達も挨拶を返してくれる。
アヤカは廊下側の前から四番目の席、ミキはその後ろの席である。
荷物を降ろし、席に座り、バッグから教科書やノート、筆記用具などを空っぽの机の引き出しの中に今日の授業順に並べて整理整頓する。
時間が十分にあまり、課題もしっかりと昨日のうちに終わらせておいて、何もやることがない。
隣の席では、必死になって授業の予習課題でもあった英語の長文の翻訳を誰かに借りたノートを必死になって自分のノートに移す作業をしている男子生徒がいた。
「相沢君、まさか、今日も課題やってこなかったの?」
ミキは男子生徒の必死な姿を見て、呆れ果てていた。
「ああ? まぁな。昨日も忙しかったんだよ。今、必死にやっているから邪魔すんな」
男子生徒は、ミキに話しかけられると、目も合わせず、挨拶無しに黙々とシャープペンを走らせる。
男子生徒の名は、
ミキと同じ学年の同じクラスで、中学校時代からの同級生である。
「あんたねぇ。ミキが話しかけているのに挨拶くらいしなさいよ。それと、あんたの儀式は毎日でしょうが!」
アヤカがソウヤに突っ込みを入れる。
「いちいちうるせぇ女だなぁ・・・・・・。いいんだよ別に。写させて貰っている変わりに俺は別のもので提供しているんだからな」
ソウヤは得意気に言う。
「何が[写させて貰っている]よ。毎日、どんな課題でも写しているくせに、どうせ、夜中まで勉強せずに動画やネット、ゲームを飛び回っていたんでしょ」
アヤカがソウヤの考えそうなことを言い当てて、指摘する。
「それの何が悪い。今、やらなくていつやるんだ? 学生のうちに遊んでおけっていうのが俺のモットーなんで」
ソウヤは走らせていた手を止め、シャープペンを手の上で回した。
「そんなモットー知らないわよ。高校生、それも学生なら学生らしく、課題をしてくるのが常識でしょうが! だから、テスト前になって一夜漬けとかになんのよ」
アヤカも負け辞と言い返す。
「いいんだよ。一夜漬けで何とかなっているんだし。それに隣には学年憂愁の美少女がいるのだから、これで学年中盤にいなかったら恥だろ?」
ソウヤは、掛けていた眼鏡を左手でくいっと掛け直し、ニヤッと笑う。
「恥って、ミキがいなかったら、あんたは本当に下位の下位よ・・・・・・。自覚があるなら、ミキに恩返しくらいしなさいよ。男子でミキに対しての態度が普通なのはあんたとヤマト君くらいよ。本当は近寄りがたい美少女なのに、まぁ、よくよくも平然といられますね」
アヤカは、ソウヤの性格を見た上で、人の事情なんか考えもしないこの男をうらやましくも思っていた。
「平然ね。ミキが男子に人気なのは別として、俺からしてみれば、ミキはヒロインの一人でしかないっていうことだ」
「ヒロインの一人ぃ?」
ミキは首を傾げる。
また、始まったと額に手を当てるアヤカ。
ソウヤのスイッチが入ると、その殆どの話が自分の趣味についてのたとえ話が多い。
「たとえば、俺がやっているゲームやアニメには、必ずしも女子が出てくる。ドラマだって、そうだろ? その中にメインヒロインは存在する。確かにこのクラス内ではダントツ的にミキがメインヒロインだろう。そして、アヤカは、ヒロイン・・・・・・いや、友人といったモブ的枠に入るだろう」
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