第1章 円卓のヴァイアス
Ⅰ
『間もなくこの飛行機は目的地・
アナウンスから流れてくるキャビンアテンダントの声を聞きながら少年は、窓の外を見た。
雲の上を飛ぶ飛行機は、徐々に降下していき、下を見ると街が小さく見えてきた。
「ふーん」
少年は、鼻で笑う。
すると、
「すみません。お客様、シートベルトを……」
キャビンアテンダントのお姉さんに少年は声を掛けられた。
「あ、すみません。すぐに……」
少年はすぐにシートベルトをして、再び窓の外を見た徐々に近づく天海市の街並みがはっきりと見えてくる。
「へぇー。ここが天海市……」
飛行機は着陸態勢へと移った。
× × ×
天海市ーーーー
海沿いにあるこの街は、日本の絶景スポットに入るほどの有名観光地であり、夏になると、他の地域から海に遊びに来るほどの人気がある。
そして、この海沿いを急いで走る少女がいた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
息を切らせながら、目の前のバス停で止まっているバスを追いかける。
バスには、少女と同じ学生服を着た生徒たちが次々と乗り込んでいった。
バスとの距離まで、およそ八十メートル。
「待ってぇええ。そのバスぅうう!」
少女は走りながら叫んだ。
最後の一人がバスに乗り込み。少女がギリギリでバスに滑り込んで、乗り込んだ。
バスの中は、同じ学校に向かう生徒でびっしりと埋まっていた。
(な、なんで、いつもこの時間帯は人が混むのよ)
少女は後ろの席の方に何とか移動する。
「ミキ。おはよう」
と、少女に話しかける一人の女子生徒がいた。
「あ、うん。おはよう」
ミキと呼ばれた少女は、朝の挨拶を返す。
少女の名は
ミキに話しかけてきた女子生徒は、ミキの友達である
「それにしてもあんたがギリギリにバスに乗り込んでくるなんて、珍しいね。朝っぱらから何かあったの?」
「うーん。どうかな? まぁ、ちょっとね……」
ミキは動き出すバスに反応して、左手で吊革を握る。
「ふーん。それにしてもあんた、昨日、五人にも男子に告白されたんだっけ?」
「何で知っているの⁉」
ミキはアヤカから出てくる言葉に反応する。それを聞いた周りの学生がミキの方に視線を向けた。
(あっ……)
ミキは口元に手を添え、小声でアヤカが話を続ける。
「知ってるも何も、学校の美少女が告白されるたら、噂にもなりますよ。それで、今回も全てお断りしたと……?」
ニヤニヤしながらミキに問いただすアヤカ。
「まーね」
ミキは観念したかのように呆れた声で返事をした。
「まぁ、毎度、毎度、告白されたら疲れるのに、諦めない男子は凄いわ。そして、それを断り続けるあんたもね。もう、この際だから誰かと付き合いなさいよ。たとえば、あんたの昔からの男友達とか」
「ヤマト君はそんなんじゃないよ。昔から一緒に遊んでいたからそうであって、彼氏とか……私に似合わないよ」
「そんな言って、彼がいるとき、他の男子はあまり近寄って来ないんだよ。あんた、知らないでしょ」
アヤカは、ミキを見て呆れ果てる。
バスは、十分程走行して、ミキたちが通う高校の近くのバス停に停車する。
前にいた学生から降りていき、ミキたちは最後方にいるため、最後にバスを降りた。
「う、うーん」
アヤカは背伸びをしながら、縮まった体を伸ばす。
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