少し前

 あわい色の廊下も、オレンジ色の朝日も。すべてのものが色を失ってしまったかのようだった。

 あの人のクリーム色の笑顔も、今はモノクロに映る。

 すべて嘘だった。信じたくはないけど、信じたくはないけれど。

 記憶能は自分の力で消すことができる。

 ただし、それをすると、安積先生の記憶もすべてなくなってしまう。

 私はどうするべきなんだろう。

 すべて嘘だった恋の記憶なんて、無くしてしまったほうがいいのかもしれない。

 でも、でも。

 大事な思い出を、無かったことになんてしたくない。

 私は、どうすればいいんだろう。

 窓から差し込む光は眩しくて、色はわからなかった。

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ここはすべての色があわい 鯵坂もっちょ @motcho

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