お土産
夕方くらいに魔法使いさんが帰ってきた。両手に袋いっぱいの荷物を持って。今日は申請をしにいくと聞いていたが、観光帰りの学生みたいな大荷物を持っているのが非常に気になる。
「おいゼノ、それはなんだ」
「え?お土産?」
「疑問を疑問で返すな。どうせまたお土産通りで買ったな。まったくいつでも買えるだろう」
「そうだけど、見ると欲しくなっちゃうよ。てことで、はい地獄まんじゅう」
「わーい!ララ地獄まんじゅう好きなの」
「こっちは桃源ようかんだよ」
「ルル桃源ようかん好きなの〜」
ネロさんは短く溜息をついた。何を言っても無駄だと気づいたのかもしれない。ここに来てまだ日は浅いけどなんとなく二人の関係性が分かってきた。
「ありがとなゼノ、頂くよ」
「ましろちゃんも食べてね〜。地獄名物地獄まんじゅうと、天国名物桃源ようかん。地獄まんじゅうは地獄の火を使って作られているとかいないとか」
「へぇ〜焦げないんでしょうか」
「上手いことやってるのかもよ」
地獄と天国という空想上のものが観光地と化しているのは面白いものがある。一気に俗っぽくなったような気がする。まあ、行ったことがないからなんとも言えないけど。
近くにあった地獄まんじゅうを先に食べてみることにした。黒い包み紙の真ん中に赤い文字で「地獄まんじゅう」と書いてある。これぞ地獄という感じのおどろおどろしいフォントだ。
包み紙を剥がして、底に貼ってあるフィルムを取ると一緒に皮まで取れてしまった。こういう系の饅頭を上手に剥がせたことが無いが、フィルムだけ剥せる人はいるのだろうか。勿体ないよね皮の部分。
「やっぱり美味しいね!さすが名物」
「天国と地獄両方に行って買ってきたんですか?」
「違うよ。天国と地獄の名物が売っているお店があってね。そこで買ったんだ」
「なるほど」
道の駅のようなものだろうか。ますます俗っぽい。そんな感じでいいのか天国と地獄。
「名物があるってことは天国と地獄に遊びに行けるんですか?」
「行けるよ!ちょっと決め事はあるけどね」
「なんか思ってたのと違います」
「あははっ、最初に来た人は皆そう言うよね、ネロ」
「そうだな。そんなに気軽に行ってもいいのかとはよく言われる」
「じゃあ私も遊びに行けるってことですか?」
「うーん、ましろちゃんなら大丈夫だと思うよ!さっき決め事があるって行ったけれど、天国の住人は何処へでも行けるんだ。その逆で、地獄の住人は何処にも行けない。これはなんとなく分かるかな」
「そうですね……地獄の人が天国に来たら問題を起こしそうな気がします」
「そうそう!それで幽霊街の住人は人によりけりなんだよ。悪い行いをした人は居ないんだけれど、未練があるということは心が安定していないとみなされるんだ」
「はあ」
私は気の抜けたような返事をしてしまった。決まり事多いんだなー。
「まあ、問題行動を起こしてなければオッケー!と思ってくれればいいかな」
魔法使いさんはそんな私を見て苦笑しながらつけ足した。ちょっと分かりやすく答えてくれてるということは私にも分かった。読解力が無くて申し訳ない。
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