天国と地獄
「まず、天国と地獄があることは知ってるんだよね?」
「はい。私が住んでいた国では皆知ってます。多分」
「多分ね、ふふふ。なら話は早いかな!ざっくり説明すると天国は良い行いをした人や、悪い行いをしていない人達が行く所なんだ。逆に地獄は悪い行いをした人達が行く所だよね」
「はい。だから悪いことをしてはいけないと私の国では教わります」
「うん、そうだね!そして幽霊街とは、未練を持った人達が来る場所なんだ」
「未練を持った人、ですか?」
魔法使いさんは茶色に変色した林檎を口に運び、飲み込んだ後こう答えた。
「そう、生きていれば誰でもある物さ。例えばあぁ、あの時こうしていればと言う様な言葉だよね。ちょっとした気持ちじゃ幽霊街には来ないんだけれど、その気持ちが強過ぎると天国に行ってもなかなか気持ちが晴れないし、転生が出来ないという問題が出来て幽霊街が誕生したんだよ。」
本当に天国と地獄はあったんだなぁ。しかも人間ってやっぱり転生してるんだ、と思ったが、1番の疑問を口にしてみた。
「未練があると転生が出来ないんですか?」
「うーんそうだね。出来なくはないんだけど、さあ転生しますという時に記憶処理を嫌がる人が多いんだ。だから、未練は無いに越したことは無いんだよ。手続きをスムーズに進めるためにはね」
「手続きってなんか天国っぽく無いですね」
「ふふっ、そう思うだろう?それが、この世界は意外と手続きだらけなのさ!めんどくさいったらこの上ないよね!」
魔法使いさんは席を立つと林檎が乗っていた皿を手に持ちシンクに向かった。先程使った皿も含めて全てシンクに置き、杖を取り出した。
杖を円状にグルグルと回す。すると、皿が浮かび青白い光がそれを包んだ。光が消え、皿が綺麗に整列をして独りでに棚の中に入っていく。
「魔法って便利ですね」
「そうだね!ずっと魔法を使って生きてきてるからこれがない生活は想像できないな〜」
と杖を振りながら言った。皿が全て棚に入り棚の扉が閉まる。魔法使いさんははっとした顔でこちらを見て言った。
「今更なんだけれど、ましろちゃんはどこか住みたい所ある?まだ未成年そうだしロゼのとこでもネロのとこでも言ってくれれば頼んでみるよ!ちゃんと補助も出るからましろちゃんが良ければ大通りの住民街でも大丈夫だよ!」
「あ、ここでは駄目でしょうか?私魔法使いさんと一緒に住むものだとばかり思ってました」
「へ?」
「あっ、お嫌なら大丈夫です!」
「いや、嫌じゃないよ!ましろちゃんの方が嫌じゃない?」
さっきの真剣な顔が嘘のように慌てふためいていた。こっちの魔法使いさんの方が安心するなと思った。見慣れているからかな。
「ふふっ」
「あっ!笑ったでしょ!僕馬鹿にした笑いだって分かるからね!」
「そんな事ないですよ。感謝してるんです」
前を一瞥すると、怒っている様子で色々とこちらに向かって言っていたが、怖くも何ともない。良い朝の始まりになりそうだ。
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