「さあ、出発だ!」


 魔法使いさんと私は今街に向かっている。どうやら魔法使いさんの家は、街から少し離れたところにあるらしい。家から歩いて丘を抜けると橋が見えてきた。


「あの橋を渡ればもう街につくよ!」


「ほんとですか!楽しみだなぁ。どんなお店があるんですか?」


「結構何でも揃うよ。まあここら辺にはこの商店街しかお店がないからね」


「へえ〜、じゃあここは都会的な感じなんですね」


 魔法使いさんからの返事がこないことに気づいて隣を見ると、彼もこちらを見ていた。私はどきりとした。


「どうしたんですか?」


 声色は変じゃなかっただろうかとか、目を合わせるタイミングは大丈夫だったかとかが気になった。


 だけど、彼はそんなこと気にも介さないといった様子で


「とかい?ってなんだい?」


 と丸い目をさらに丸くした。


「え?」


 思っていたよりも間抜けな声が出てしまった。早まっていた心臓の鼓動も落ち着いてきた。


「都会ってあの都会ですよ。田舎とか都会とか」


「うーん、ごめんね僕そういった常識?に弱いみたいなんだよね」


 魔法使いさんは頬を掻いてそう言った。


「もしよかったら教えてくれると嬉しいなーなんて」


 頬を少し赤くして恥ずかしそうに前を向いた。そんなこと言われたら、教えるしかないじゃない。


「私が前住んでいたところでは栄えてる街のことを都会って言ってたんです。その反対で、人が少なくて長閑な所を田舎って言ってたんですよ」


「なるほどね〜!だからここら辺のことをとかいって言うのか。いや、勉強になったよありがとう!じゃあ、僕らが住んでいるあたりはいなかだね!」


 あそこ付近を田舎というのかはちょっとよく分からないけど、彼が楽しそうならそれでいいかなと思った。


「お、久しぶりだな」


 ほわほわとした気持ちを味わっていると、後ろから声が聞こえてきた。


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