第4話 新たな敵 "妖術師"

 「俺の術式が…効いてない!?」


 術式は当たった筈なのに俺が全く効いてないことから清見が青ざめる


 「というかデバフ系自体効かないんだな。聖剣持ってるから」


  そこですかさず追い討ちを決める俺。

 ちなみに聖剣は所持者の状態異常を常に無効化してくれる。他にも攻撃力が上がる、防御力が上がる、敵の蘇生を無効化する、死なない、etc…


 「は、ふざけんなよッッ!じゃあどうやったらお前に勝てんだよ!!言いやがれ!!」


 「んー俺のチート能力を無効化するしかないな。でも俺チート能力を無効化されるのを無効化する能力持ってるからチート能力が無効化されるのを無効化する能力を無効化する必要があるかな」


 「わけわかんねぇよォ!!」


 清見は怒声を飛ばしているがこれ以上やる気は無さそうだ。


 「あーそうだな。まずなんで俺をそんなに殺す気なんだ?俊哉なんかしたの?」


 「……俊哉はお前だろうが…俺がお前に殺意を持ってるのは…その…黒羽が原因だ」


 「……は?」


 清見をボコボコにした後傍観していた美少女に声が掛かった。由紀は驚いて声が漏れたようで心当たりは一切無さそうだ。

  

 「私、何もしてないよね?なんで私に術式?なんかを組み込んだの!?」


 由紀は当然お怒りだった。


 「…」


 清見はこれ以上言いたく無いようで口籠ってしまった。まぁ言いたいことは反応を見ればだいたい分かる。


 「あーなんとなく察した。由紀のことが好きなんじゃない?」


 「え!?」


 「バッッ!!お前ッッ!!殺すぞ!!」


 清見に首を掴まれそうだったので後ろに飛んで回避しておく。


 「まぁその反応を見れば分かるな。でも何故好きな人を痣だらけにした?美少女に暴力を振るうような奴はここで消しときたいんだが………訳ありっぽいな。」


 明らかにこいつは情緒不安定だ。薬物とかキメてんじゃねぇだろうなぁ…


 「…自分でもわかんねぇんだよッッ!黒羽の事ァ好きだ…だが!最近の俺は自分で言うのも変なんだよ!なんか…ただの勘だが"誰かに操られてる"みたいな感覚でッ!」


 「え!?というか本気で私のこと好きなの…私は無理。絶対無理。最低暴力野郎好きになる訳ないじゃん…」


 「…返す言葉もねぇ。でも俺が言ってるのは本当なんだッ体が勝手に動いてるんだ!!今更信じてくれるなんておこがましい話だと思うが…信じてくれ!!」


 「んーそう言われてもな…あ!」


 「俊哉…聞くだけ無駄よ」


 「まぁまぁそう言わず。視てみたら何か分かるかも」

 

 「視るって…なんだよ!?」


 「透視だよ。もしかしたらヒントがあるかも知れん」


 「お、おう!んじゃあ…それやってみてくれ!」


 「私は彼の意見なんて聞くだけ無駄だと思うわよ…」


 清見を透視する。すると………!


 「…残念ながら何も無いぞ。術式だったら体に残るからな」


 「は!?んじゃ…俺は元から狂ってたってことなのか…!?黒羽を…由紀をッッ!!…術式をかけて…あんな目に合わせたってのかよォ…」


 「…もういいかしら?俊哉…私はやっぱりこの男を許せない。絶対に、だから…っ」

 「…っ!!」


 恐らく清見の気持ちは本物だ。どうしても違和感が残る。そして気づいたーーもう一つの可能性に。

 

 「え?」


 「いいか、今から清見、お前にチート回復をかける。そこで何か変化が生じたら教えてくれ」


 「?……おぅ…」


 清見にチート回復をかけた。淡い光が、清見を包む。もし、あれによる犯行だったとしたら…!


 「……そうだっ!…俺はあの時…気を失って!!いつの間にか術が使えるようになってたんだ…!!なんで…俺はこんな大事なことを忘れてたんだ…」


 清見が何かを思い出した。


 「どうやらビンゴだったらしい」


 「え?俊哉、どういうこと?」


 「清見は術をかけられてたんだ…その名も"妖術師ようじゅつし"」


 「よ、妖術師!!…ってなんだよ!」

 「悔しいけど私も同意見ね…」


 まさか、術者だけでなく妖術師までこの世界にいるとは思わなかった


 「妖術師。まぁ簡単に言えば術者の完全上位交換だ。相手の理性、記憶、なんでも奪え、自我も術の痕ですらも残らない」


 「ま、マジかよ!!でもやっぱり俺は操られてたんだッ!」


 「ほ、本当なの…?でも…私は例え彼が無実でもやっぱり許すことは出来ないかも…俊哉は私を許してくれたのに…はぁ。なんで私っていつもこうなんだろ…」


 「…由紀はデリケートな問題だが…時間をかけてゆっくりと心を開いていけばいいさ」


 「…うん、ごめんね…わがままな女で…」


 「いや、俺が悪い…俺なんかが妖術なんぞにかかったから黒羽が…」


 「…二人は被害者だ。どちらにも非はない。つまり、明確な悪意を持った第三者がいるということだ」


 「…その妖術師って奴にその…少しだけだが心当たりがあるかも知れん」

 

 「おぉ!」

 「…本当なの?」


 「あぁ。俺が気絶する前…確か、課題を出し忘れて赤点を回避するために職員室に入っていった…と思う…だから!」


 「教師が怪しいと。なるほど…その線で行ってみるか」

 「最後まで言わせろやぁ!」


 「…私は、あなたのことまだ信じて無いから」


 「まぁそうだよな…悪い、黒羽…」


 「だから、その…信じさせて?あなたは無実なんだってことを」


 「…黒羽っ!あぁ。惚れた奴にそんなこと言われて燃えねぇ男はいねぇよ」


 「じゃあ絶賛燃えている清見君に重大な役をしてもらおう」


 「あぁ!なんでもしてやるぜ!教師を手当たり次第殴ればいいのか?」


 「違う。そんな物騒なことはさせない」


 「じゃあ何すればいいんだよ!」


 

 「…少しだけ危険かもだが…乗るか?」



 「あぁ」



 「そう言って貰えると思った。……清見、お前は今までと同じように振る舞って妖術師と接触して"スパイ"をしてくれ」


 俊哉の体感では時を止めていた為倍近く感じたが40分の昼休みの残り時間5分を告げる予鈴が鳴った。

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