第2話 美少女の秘密 

 美少女はナイフを右手にゆっくりと近づいてくる。


 このまま刺されるのは嫌なので少し時を止めた。

  

 「訳ありっぽいしちょっと覗いてみるか」


 決していやらしいことをする気はない。元の世界で言う敵のステータスを見るようなスキルだ。


 えーなになに…

  

 ◦桜波高校 二年A組 11番 黒羽くろば 由紀ゆき  

 ◦成績 B ←(チート能力を一切使わない俺をAとする)

 ◦運動 C ← (以下略)

 ◦容姿 A ← (タイプ)

 

 「で、3サイズは上から……っていかん!!んー分かるのは俺と同じクラスってだけか。相手の思考とかが分かる訳では無いからなぁ…」


 なんかなかったっけ…



ーー時間を止めて悩み続けること30分ーー

 

 

 「あ…ヤベッ!!」


 つい間違えて透視のスキルを使ってまった。決して故意にやった訳ではない。もう一度言う。決して故意にやった訳ではない。


 「え……」


 なるほど…なんとなく見えてきた。恐らく、だが。


  時間停止を解除する。


 ゆっくりとこちらにナイフ持ちで歩み寄っていた美少女の足取りは俺を目掛けて少しずつ加速していった。

 

  「よっと」

  「……っ!?」


 本気で俺を刺す気だったらしい。美少女は俺目掛けて刺してきた。刺してきたからナイフを避け美少女の腕首を掴む。


  「誰の命令だ?」

  「放して…放して、お願い!」


  彼女は怯えている。俺じゃない何かに。


  「誰だ?いいから言ってくれ。君を怯えさせた元凶と話がしたい」

  「何故それを知ってっ!!…嫌よ…絶対に言わない。……言ったら、殺されるわ」

  

  彼女は跪いてしまった。まるで全身の力が抜けたかのように。


  「あーもう仕方ないな!」


 これ以上話をしても埒が明かない。俺は彼女の手からナイフを奪い自分の右腕に思いっきり刺す。


 血が一気に飛び散る。


 「うお!!さすがにいってぇなァ!」

 「自分で!?…し、死んでくれるの…?」

 

 それから数多にあるチート能力の一つ、回復を自分に使ってそれを彼女に見せつける。


 「ほら!傷も血も元通り〜どう?話してくれる気になった?」

 「………!?どうなってるの!?え、さっきまで血が……無い!?傷跡も…」

 「君は誰かに操られている。そいつの正体を教えて貰えれば君の命は俺が必ず守ってやる。」

 「う…で、でも…というかあなたは誰?私の知ってる俊哉じゃない」

 「俺は今日から俊哉になった俊哉だ。黒羽さんみたいな美少女とラブコメがしたかったんだよ」

 

  彼女にチート回復魔法を使った。


 「ね?タネも仕掛けも無いんだなこれが」


 彼女は淡い光を纏った後、長袖の制服の右腕部分を捲って状態を確認した。


 「…痣が…一つも無い」

 「あと君を操る術式みたいなものも取り除いた。これでそいつのことも話せるんじゃないかな」


 透視を使った時に無数の痣と一緒に独特な紋章が特徴の術式を見つけてしまったのだ。


 「術式…?」

 

 「あーまぁ簡単な術式だな。相手を自我があるまま命令には逆らえなくする類の術式だ。こういうのは普通の人間には出来ないから見つけた時はまさかとは思ったんだがな…」


 「…私、本当に操られていたの?」

 

 「あぁ。だから君は悪くないよ」


 「…でも私は、あなたを殺そうとしたのよ?」

 

 「それは元凶と話さなきゃな」


 「……本当に私を助けてくれるの?」

 

 「あぁ。約束だ美少女を痣だらけにするなんて許せないしな」


彼女ーー黒羽 由紀は大きく息を吸って


 「二年D組 清見きよみ 一輝かずき そいつが私を操りあなたを殺すよう私に命じた張本人。」


         ハッキリとそう言った。


 「OK。教えてくれてありがとうな、由紀。さぁ、元凶の一輝とやらにざまぁしに行こうぜ!」

 「……うん、ありがとうね!なりたて俊哉!」


 ーー由紀は名前を呼んだことに照れたのか頬を薄く赤に染めていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る