第5話 戦場を蹂躙
物資の集積所は、蜂の巣を突いた様な状態になった。
皆逃げ出し始めた。
将兵が、門を閉じていたけど、労働者は柵を壊して逃げ出した。
これはもう止められないだろうな。
逃げても、逃げた先でエルフ族の蹂躙が待っているとは、考えられない人達なんだな。
まあ、残っても地獄だし、逃げても地獄だ。
それと、あの司令官のために命を掛けろと言われてどれだけの人が残るのかと言われれば、ほぼ零人だと思う。
将兵は、逃げれば家族に迷惑が掛かる。ここで死ぬしかない。
「こんなところでなにしてるんだろう……」
本音がこぼれた。
私は、平和な時代の平和な国で育ったんだけど。今なぜ戦場にいるのか。
神様は、なぜ私をこの世界に送ったのだろうか。
エルフ族との和解は、本当に出来ないのだろうか。
色々な疑問が出る。
エルフ族の軍隊を見る。後一時間もすれば、ここに着くだろう。
迷う時間は無い。
「殺るか」
聞こえない距離で、静かに宣戦布告を行う。
私は、魔力の塊を複数作り、エルフ族の軍隊に飛ばした。
◇
魔力の塊は、目には見えない。そもそも、この世界の人達は、魔力を体から出すという発想が無かった。
それは、エルフ族も同じなのだと思う。
私の魔力の塊が、エルフ族の軍隊の真上に到達しても、誰も反応を示さなかった。魔力を感知する技術も確立されていないのか。
「ふぅ~」っと息を吐き、腰に挿していた木の枝を抜く。覚悟を決めて、魔法を発動した。
空間魔法:瞬間移動
エルフ族の軍隊のど真ん中に移動した。エルフ族は油断していたな。私を視認しても反応出来た者はいなかった。まあ、突然敵が目の前に現れるなど、予測している者はいないだろうな。
着地と共に、木の枝を横薙ぎに払う。
空間魔法:空間切断
長さ数キロメートルの防御不可能の斬撃が、エルフ族を襲う。
次の瞬間に、何千というエルフが、崩れ落ちた。
背後を見ると、何が起きたか理解できないエルフ達の視線を集めていた。
エルフ達が混乱している隙を突き、さらに、もう一撃の【空間切断】を振るう。
私を中心として、血の池ができ上がった。
ここで、魔法が飛んで来た。初めから魔法で浮いて移動しており、私の一撃を受けなかった兵士から反撃を受けたのだ。属性は分からないけど、遠距離の魔法はあるのか……。
空間魔法:空間断絶
私は、『固定した空間』で自分の周りを覆った。
そうすると、勇者が使っていたレベルの魔法が飛んで来た。それも複数であり、私の足元で倒れているエルフ達などお構いなしに、私を吹き飛ばそうと襲って来たのだ。
まあ、私は空間を『固定』しており、その中にいる……。どんな高威力の魔法であれ、突破することはできない。
数秒の後、爆撃は止んだ。どうやら、勇者レベルの魔法は連発できないみたいだ。
勇者達は、結構連発していたので、この辺が違うんだろうな。魔力量ではないな、魔力の回復力といったところかな。
私は【空間断絶】を解除して、歩き出す。ちなみに両腕には、盾になるように【空間断絶】を付けている。
煙が晴れると地面は、血の池から、焦土に変わっていた。
エルフ族には、遺品を持ち帰る文化はないのだろうか?
そんな事を考えていると、声を掛けられた。
「何者だ!?」
答えるわけもない質問を受ける。
「元日本人です」
意味が分からないだろうけど、一応答えた。
そして、次の場所に【瞬間移動】した。
◇
木の枝を振るうとエルフが舞う。
単純作業になって来た。
魔法も飛んで来るけど、【空間切断】で切れることが分かった。こうなるとさらに簡単だ。とにかく木の枝を振るえば良い。
十秒くらいその場で、木の枝を振るい、次の場所に【瞬間移動】する。
そこでまた、木の枝を振るう。
数度、同じ作業を繰り返した。
エルフ族は、近接戦闘は挑んで来なかった。エルフ族の反撃は、魔法だけだったのだ。
私は、エルフ族の軍隊の真ん中に【瞬間移動】を繰り返した。
エルフ族は私を視認すると魔法を撃って来る。そうなると、エルフ族の魔法で、同族が巻き込まれて行く。もう、パニック状態だ。
もう良いかなと思い、少し離れた木の上に【瞬間移動】した。
エルフ族の軍隊は、同士討ちを始めている。
全体の八割は削れただろう。
私は、【転移】にて物資の集積所に帰った。
本当に短時間での殺戮になったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます