第32話 幼馴染、照れ隠し!
休日の買い出し。それはどちらがやるって決め事でもなくて、どちらかがやるって決め事で、だけどその全般はペトラが担っていた。
《今日は学校帰りに買い出しに行ってくる》
朝、そう言われた。そして学校終わり、大学帰りにペトラから連絡が入っていて、財布を忘れたとの事だった。
なにせスーパーに到着してから気が付いたようで、丁度帰宅中だった俺はペトラにしばらく待ってもらい、スーパーに向かった。
「お待たせ、ペトラ」
「全然待ってない。むしろ、ごめんなさい」
そう言って彼女は深々と、ご主人を出迎えるメイドのように深々と頭を下げて謝罪してきた。
「大丈夫だよ。ほら、さっさと買って帰ろうよ」
「うん」
そのままペトラと買い物をした。買い物と言っても、俺がカゴを乗せたカートを引いて、そのカゴにペトラが次々と商品を入れていく。本当に次々と、たくさんと入れていた。
「結構買うんだね」
「材料が少なくなってるし、来れる時にたくさん買おうと思って。あと、翔也がいるから」
「俺がいる?」
「荷物持ち」
「あぁ、そっかそっか」
確かにペトラと俺を比べれば、圧倒的に俺の方が力持ちなわけで、彼女の細く色白で華奢な腕とは比べ物にならないくらいにゴツいからな。
会計を済ませて、最近有料になったレジ袋に商品を詰めてから、ペトラと一緒に帰宅路を辿った。
「少し、降り出しそうだね」
「うん、早めに帰ろう」
ペトラとそう会話をして、少しだけ早歩き気味に帰っていたが、俺の予想通りにポツポツと雨が降り出していた。
ここからの展開は……雨に濡れながらも近場の公園で屋根があるベンチに辿りつき……お互いに息を整えながら、チラッとペトラの方を見ると雨で濡れた制服からうっすらと見える淡いピンク色の下着……生唾をゴクリ……
▼
「買ってきた」
「うん、ありがとう」
そんな面白い恥ずかし美味しい展開があるわけもなく、まだ雨足が弱い時に冷静にペトラがコンビニで傘を買いましょうって提案してきた。この場での最適解はペトラの案で、その言うことを聞く以外に選択肢がなかった。
「あれ? 1本だけ?」
「うん」
「2本じゃなくて?」
「今は緊急事態。でも2本も買ったら邪魔になるから」
「そ、そっか?」
「2人で使えないわけでもないから」
そう言って彼女はさも、当然かのように俺と相合い傘をしようと言ってきた。
恥ずかしがる素振りも照れくささを隠す素振りもなく、ただ淡々とそう言ってきた。
イギリスにそういった風習は無いのだろうか? 個人的には少し胸が高鳴るシチュエーションではあるけど、彼女はどうやら違うらしい。
そのまま一つの傘を2人で仲良く相合傘をして帰る事になった。俺は両手で荷物を持っているから、片方の手が空いているペトラが傘を持つ。
「雨、止むかな」
「通り雨だと思うから、時間の問題」
「そうか」
会話はあまり弾まない。どちらかと言えば、ペトラの返答が淡々としていて長く続かないのだ。俺の話はそんなにつまらないのだろうか。あと、先ほどからペトラの俯く回数が多いから、体調でも悪いのだろうか。
「ねぇ、ペトラ」
「…………」
「ペトラ?」
「な、なに……?」
「体調悪かったりする? もしくは、俺の話がつまらなかったかな」
「そんな事は……ない」
「なんかあまり良さそうには見えなかったし、返答も淡々だったから」
「大丈夫……気にしないで」
「そ、そっか」
そう言ってからまたしばらく無言の時間が続く。ひと気の無い道の公園が見えてきた頃、ペトラがこっちに来てと言ってきた。公園内の林の中へ入っていく。だけど、要件は何も伝えられていなし、想像することもできない。
「あの……ペトラさん?」
「荷物……置いて」
「あ、はい」
言われるがままに荷物を地べたに置くと、ペトラとの距離が一気に近づく。そして、ペトラは傘を持っていない右手で俺の左手を掴んで、徐に胸元へとくっつけてきた。
一体全体なんの事か分からなくなる。この子らなんでいきなり自分胸に男の手を置いてるの? 発情期なの? ムラムラしてるの? いや、真面目な女の子程遅咲きでエロくなるって話は聞くけども……
「翔也との話がつまらないわけじゃない。ただ……一緒の傘に入ってるのが……すごく……」
ペトラがその言葉の先を言う事はなかったけど、ペトラから伝わる少し早めの鼓動の音が、俺に答えを教えてくれた。
頬を朱色に染めながら、視線を逸らしたと思ったら、チラチラとこちらを上目遣いで見てくるペトラ。
なんちゅう反則少女なのだろうと夢中になってしまった。それはそれは、触っていた胸の感覚が分からない程に、その振る舞いに夢中になっていた。
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《令和コソコソ噂話》
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