第31話 幼馴染、理屈と感情!
「っというわけで、また新しく仕事が増えまし……た」
「そう。頑張って」
「あの、ペトラさん……?」
「なに?」
「いや、なんでも……」
「そっ。翔太早く食べて。片付かない」
「あ、はい……」
目の前の金髪少女は見るからに不機嫌だった。会話はしてくれるけど俺の方なんか見てもくれないし。
前に七瀬さんに構い過ぎだとペトラに言われた。1回だけじゃない何回か言われたにも関わらず、結局はまた七瀬さんの力になろうとしてるけど、当然構って貰えないペトラにとっては面白くないわけで、こんな態度をされるのは仕方ないっちゃしかたないんだけどね……
「あの、ペトラさ。今週の土曜日って何か予定あったりする?」
「特に無い」
「ならさ、2人で出かけない? たまにはペトラとも出かけないとな~ってさ……!」
「いい」
「え?」
「気を遣ってくれてるなら、いい。そんな気持ちならいい」
火に油を注いでしまっただけだった。確かに今の言い方だとペトラが不機嫌だから仕方なくって捉えられてしまってもおかしくないし、俺の心の中でそんな気持ちが無かったわけじゃない。いいや、ほぼそれだった。
「ごめんね。ペトラ」
「謝るくらいならしないで」
「ごめん……」
「翔也の謝罪は安っぽい」
なんかもうごめんしか言ってないな。けど、安っぽくても気持ちは伝えないと。謝罪の気持ちはあるのは事実だから、その気持ちは素直に伝えないといけない。
「安っぽくてごめん。でも……安っぽいって思われても言葉は伝えたいから。謝らずに済ませる事なんてできないし、しちゃいけないからさ」
「そっ」
「うん。だから、ごめん」
「じゃあ翔也。私のお願いを1つ聞いてくれる?」
「いいよ。俺のできる範囲でなら」
「栗橋さんとは、もう関わらないで欲しい」
「え……?」
「冗談。今週の休み。どっちでもいいから1日デートして欲しい」
「お……おう」
「約束だよ。はい、指切りしよ」
「あ、うん……」
栗橋さんともう関わらないで欲しい。きっとその言葉はペトラにとって本心なのだろう。俺の反応を見てとっさに冗談と言ったのかもしれないけど。
「何をするのも翔也の自由。翔也の人生だもん。誰と関わって誰と付き合うかなんて翔也自身が決める事。私は翔也の恋人じゃないし縛る権利は無い。その線引きがあるのは私も把握してる」
「いや、中々に縛って――」
「でも、理屈と感情は違う。だから私も分からない。これはとても難しい問題」
「でも、ペトラは把握してるって――」
「把握はしてる。けど理解はしてない。理解できてたらこんなわがまま言ってない。恋愛は難しいから、ごめんなさい」
そう言って静かに頭を下げてきた。ペトラは自分の思った事や感じた事は素直に言ってくる。分からない所は分からないハッキリ言って、不満がある所は不満だとハッキリ言う。
「俺の方こそごめんね」
「お互いさま」
そう言ってペトラは微笑んだ。その優しさが、その微笑みを傷つけてると思うと、自分がたまらなくやらせない気持ちになるけど、答えが出せるほど簡単な問題でもないのは事実だった。
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