「烈風真田幸村戦記(女帝編)」9
九
朝鮮が、青柳、髙梨に、
「もう、食べるものが、何もないのです」
と、泣きついてきた。
「王様は何を食べている? 宮廷の食料庫の中を調べるぞ。それを庶民に分けてやれ」
と取り合わなかった。
郡山小太郎は、朝鮮から戻って来た。
「あの民族は、嘘ばかりです。自分たちで、耕作をしてたべています。輸出の必要は、ありません。少しでも溜め込みたいのです。それで、泣き付いてくるのです。嘘はつく。恩を仇で返す。酷い民族です。満州も付き合っていません。琉球も台湾も国交を閉じています。あの国の民族性は、永遠に直らないでしょう」
という、報告があった。
「それでは仕方があるまい。放置しておこう」
と言うことになった。
朝鮮の泣き付きかたが、ますます、酷くなっていった。
小太郎がきた。
報告によると、
「娘が十七、八歳に成ると、必ず、淫売屋に売ります。それで、両親は飯を食っているのです。男は働き場所がありません。それで、ぐうたらしている。怠け者です。ですから、何処も雇わないのです。税金の取り立ては、酷いものです。住んで居る小屋は、潰れそうな掘っ立て小屋です。宮廷と言っても、今や惨めな建物です。話になりません。乞食の国です。なまじ良いことをなってやると、もっとくれといいます。世界で一番駄目な国になりました。乞食の国です触らないで居れば、自滅するでしょう」
と言うことであった。
「自立の気構えがないのか?」
「ないですね。その日喰えたら、それで良いと思っているのです。そのうちに、喰える野の草も無くなるでしょう。毎日餓死者が出ています」
その話を皇帝にすると、
「何とかならないのか?」
と孫一に訊いた。
孫一は、
「もう少し、待ちましょう」
といった、
「彼らの、本音が見えて来ます。嘘ばかりの国ですから、世界中が信用していません」
「酷いものですね」
「皇帝が朝鮮征伐をして以来、何も直っておりません。お金の代わりに、労働者をだす、といっても、怠け者ばかりです。ただ、何かくれと言うばかりです。少し恵むと、これでは少ない、もっとくれと言います」
「あきれた者ですね。あの国だけは、併合しては駄目です」
孫一が言って、武蔵と信幸が、大きく頷いた。
「のちに禍根を残すな」というのが、大勢の意見であった。
そう、思われているというのを知らないのは、朝鮮自身だけであった。
世界の七不思議の一つが、朝鮮の存在であった。
「抛って置くに限る」
と言うのが、相変わらずの結論であった。
それで、朝鮮の問題は、終了してしまった。
「次に、ここまで来たら、途中で放置は、出来ない出あろうという問題があるでしょう」
と、皇帝が冷静に言った。
「ブラジルと、アルゼンチンの南米問題ですな」
と、信幸が、言った。
「これを手掛けるとなると、それなりの軍備の必要が出てきます」
と、珍しく、直江兼続が発言した。
直江兼続は、闘将でありながら、物事を冷静に見て、大枠の計算の出来る人物であった。
信幸的な面を持っていて、得がたい人物であった。
「む。半端な数では、攻めてはいけない。大きく位攻めに、することが、必要になると思います。準備期間が必要です」
と、武蔵が言った。
重い言葉であった。
武蔵は、重い言葉しかいわない。
物事を軽くはみない。
表も裏も見て、ゆっくりと腰を上げる。
それだけに、一度動いたら、巌の如く、決して退却はしない。
古武士の風格があった。
それは、オーラとなって、他を威圧していった。
意図的な物では無く、武蔵の身に付いたものだったのである。
「しかし、皇帝が言われる如く、始末は付けなくてはなるまい」
孫一の言葉も、いざとなると、重量級のことばになった。
「どのくらいの数で行くか?」
「太平洋廻り十師団。ヨーロッパというか地中海廻りで十師団。アフリカの兵で三十師団。北アメリカから、インディアン、黒人、その他の混成部隊を十師団は無理か? しかし、これで、六十師団になる。儂の北方の兵も、ヨーロッパとロシアの備えがきになるが、十師団、十万を出そう。孫一は?」
「十師団だす」
「直江兼続どのは?」
「三十師団は出せます。混成ですがね」
「良し。百二十師団。百二十万人だ。儂の方は、北から陸伝いに行く途中で、木村重成の部隊と合流する。儂の部隊から、スペイン兵は、留守に残す。東シベリアの開発が、少し遅れるが、良いだろう。
その分、アラスカで元を取っている。十兵衛の所は厳しいな」
「いや、精一杯出す。三師団だな。東欧が危ない」
「無理をするなよ」
「判って居る。ウズベキスタンと、トルクメニスタンに掛っている。両方とも、天然ガスがでる。これがあると、我が軍の燃料供給が、安心して出来るようになる」
「だったら、無理に三師団は出すな。ガスの方が重要だ。そっちをやってくれ」
孫一が、ガスの重要性を知っているだけに、そう言って、
「これは、大幹部からの、命令だ」
珍しいことをいった。
北方の王者と言われている武蔵は、黒人の乱入で、女性たちが大量に犯されたが、それで、大量の黒人との混血児が誕生したのを白人たちが、虐待したり、廃棄した時も、男女の別なく無く、そうした施設を造って、大切に育てたのである。
教育も受けさせた。
日本語と英語は、ネイティブに発音し、読み書きも出来たのである。
彼らは、全員が、シベリアが故郷であり、武蔵とケリーが両親だと信じて育ってきたのであった。
それが早くも、第一戦で仕事をするようになってきたのであった。
あらゆる分野で仕事をしていた。
当然であるが、軍隊にも志願して這入って来た。
シベリアは新しい国である。
あらゆる人種の偏見がなかった。
同じように混血児を育てていた者に十兵衛がいた。
それ以外に、東欧で農奴になっていた者が、待遇に堪え切れずに、シベリアや中央アジアに、集団離村してきた者があった。
ケリーもそうした家族の一人だったのである。
それを努力で這い上がってきたのであった。
そこを武蔵に見初められたのである。
そうして、流入してきた人口は何十万人もなっていたのである。
それが、シベリアの経済や軍事力を支えてきたのであった。
青少年たちは、全員、武蔵や十兵衛の子飼になっていったのである。
こんなに信用の出来る子飼たちは居なかった。
その中から、これはともうものは、忍びに訓練した。
暗殺団も、密かに作っていたし、男女を選んで、ハニートラッパーに仕込んでいったのである。
他国、他地域に居る戦力は、全て、揃っていた。
そうした忍びは、「武の衆」とよんだ。
特に特別な任務を持った者は、武の内と呼んだ。
情報班だけで、五百人はいた。
あらゆる所に、それとなく、派遣していたのである。
十兵衛も同じで有った。
武蔵はそうした情報班を五十人、南米に飛ばしていた。
十兵衛も五十人を飛ばしていた。
すでに、諸々の情報は掴んでいた。
武器の種類から、砦の構造まで、把握していた。
武器は、相変わらずの旧式であったし、砦は木製であった。
「勝てる」
と思ったが、敢えて大げさな陣容にしたのは、有無を言わせずに勝ち取る事であると言う思いがあった。
故幸村が使った手であった。
その先の秀吉が使った戦術でもあった。
本部での戦評定で、十兵衛が、
「拙者は、武蔵殿の軍に・・・」
というのに、皇帝が、
「いえ。本部に入って貰います」
と、強い口調で言った。
本軍は四十師団である。
孫一と信幸、十兵衛、清水将監、愛洲彦九郎、ケリー中将が這入った。
武蔵は、北方廻りの陸路をとるための指揮をとることになった。
直江兼続は、三十師団で、豪州からチリかペルーに向かう。
梶原忠勝、仙石宗也、渡辺糾、掘田正高、伊東長次らは、地中海廻りで、大西洋を渡って、ブラジルに這入る。
本隊は、メキシコに入って、掃討しながら、パナマ運河を経て、コロンビア、ベレズエラで徹底的に麻薬とヤクザ者を排除して行くのである。
北から北武蔵軍は、北米四十度線までを確保して、工兵、屯田兵と共に、四十度線の長城と城塞群を造築して、北米南部をしっかり固めて行くのである。
これには、木村重成の軍も合流する。
インディアン兵と黒人兵も混じっていた。
ここの複線長城と城塞群を造って行けは、安心であった。
両側とも掘りを掘って、馬防柵を建て、城壁を造っていくのである。
これを破っていくのは、容易ではない。
すでに、ロシアで経験済みであった。
随所に内側から開く、銃眼が無数に造ってある。
木造の砦しかしらないアメリカ人には、手の打ちようがなかった。
それを終えて、メキシコに入っていくと、本隊に合流することになる。
コロンビア、ベネズエラのヤクザなどは、ものも言わすに射殺していくつもりであった。
麻薬の畑は、火炎放射器で全て焼き払う。
持っている者は射殺で、麻薬は焼き払う。
大した武器は持っていない。
それは、盛親と本多が事前に調べていた。
この、巨体な軍隊の前では、不真面目な奴は全て、掃討する積もりであった。
海軍と陸軍の数に、息を呑んで圧倒された。
司令車は何台もあるが、本部指令は、際だって大きかった。
そこに皇帝の雪と、幹部たちが乗り込んで、次々と司令を発していた。
メキシコは、あっという間に掃討していた。
砦という砦は全て、破砕してきた。
捕虜はどんどん輸送船にのせて、アラスカや、東シベリア、北カナダに送った。
ここは、逃げようがない。
逃げたら凍死するだけである。
それで無くても寒い。
寒冷地用の服が配給されていたが、意図的に、室内の温度を下げてあった。
暴動を起こせないためである。
この厳寒で、なおも良からぬ事を考えようという言う者は、流石にいなかった。
メキシコは、人口が多かった。
輸送船のなかでは、全員、鎖とロープで繋げてあったので、暴れようがなかった。
気がついたら、厳寒の地である。
「ここまで、お前たちを助けに来てくれる者はいると思うか?」
「・・・」
「だったら、大人しく言うことに従え」
捕虜用の食事を出した。
黒パンと薄いスープだけである。
「嫌な者は食うな」
食わなければ、死んでしまう。
赤道直下にいた者が、北極圏にきたのである。
もう、歯の根が合わないくらいに、ガタガタと振るえていた。
水に濡らしたタオルが、表に出しただけで、こちこちに凍るのである。
(何と言う所に、連れてこられたのだ)
誰もが、そう思った。
*
本部司令船の中では、皇帝は超多忙であった。
北アメリカの状況からコロンビア、ベネスレラの様子、ペルー、チリ、アルゼンチンのようす、ブラジルのようすと、テーブルの上の地図と、自軍の場所を旗で立ててあったが、それが、刻々と動いていく。
伝令は這入る。
気の休まる間がなかった。
「皇帝、コーヒーを飲んでください。幹部たちの、各軍の動きを掌握していますから」
とケリーが肩を揉んだ。
「ありがとう・・・」
と、いってから「わたし、少し休みます。ケリーも来て、揉んで」と誘った。
「はい」
と、従った。
司令室の隣が仮眠室である。
扉を閉めると、素早く接吻をした。
「もんで、優しく」
「はい」
場所が場所であったので、それ以上に深い事はやらなかったが、二人の気持ちは充分に通じ合っていた。
「皇帝。大幹部のみなさんは、充分に老練の方ばかりで、全てを把握されて居られる方ばかりです。どうぞ安心して、おやすみください」
「ケリー、ありがとう。感謝しているわ」
「感謝だなんて・・・」
「愛してる・・・」
「私もです。でも、今は」
「戦闘の真っ最中よね」
「はい・・・」
「必ず、勝てます。でもその勝ち方なのよ」
「はい」
「普通の勝ち方では駄目。圧倒的な勝利で無くては、これだけの大軍で押し寄せた甲斐がないわ」
「そうですね」
「私は、コロンビアとベネズエラの麻薬と破落戸(ごろつき)に、気を配っています。絶体に逃げられないようにしないと、一匹のシロアリが逃げただけで、またゾロ多くのシロアリになる。それをここで食い止めなくては・・・」
と言って、
「からだが楽になった。司令室に戻ります」
と、身嗜みを整えて、司令室への扉を押した。
ケリーはすこし残って、部屋を整頓した。
戦況は、圧倒的な勝利であった。
ローラー作戦で、各地を陥落させていった。
「アルゼンチンのブエノスアイレスも、ブラジルのサンパウロも、大西洋側ですね。無理に攻めることはない。ここまで来たら、コロンビア、ヴェネスエラ両国の麻薬を徹底的に取り上げ、畑を焼き、ごろつきたちを徹底的に、追い詰めなかったら、この国は、誰が為政者になっても、良くなる訳がない!二度と立ち上がれ無いように、構わぬ、逮捕したら、拷問にかけて、党領をはかせなさい。佐助党の二十人を使いなさい。彼女たちは、必ず吐かせます」これまでは、『淀の花園隊』などと呼ばれていたのを
「単純に『佐助党』で良い」
と鉈で薪でも割るように、ズバリと雪に言われて、佐助も二十人も、
「その方が、気持ちが良いです」
とハキハキと答えた。
拷問も、
「仕事ですから」
と、苦とも思わなかった。
「ボス」
と言う言葉を新たに覚えて、スペイン語で尋問した。
特殊な覆面をしていたが、女だと思って、侮って掛った。
が、直ぐにそれは後悔に変わった。
忍び独特の六尺棒使った、縛り方で舌を噛まれないように金棒を横にして、口の中に入れた。
全裸である。
コールタールを熱していた。
その前に、口から水をのませるが、中々、白状をしない。
肛門にジョーロを差し込んで、水を入れて行くが、埒が開かないので、男根の上から、熱したタールをタラタラと垂らしていった。
これには、悲鳴を上げた。
が、まだはかない。
「次は、死ぬよ。代わりは、他にもいるんだからといって、ジョーロを肛門に差し込み直して、熱したタールを静かに、少しずつタラし込んでいった。これが、効果的なのは、実証済みなのである。何しろ、内蔵が焼けながら入り込んでいくのである。
「喋るから」
という合図をしたので、失神しそうになるのを無理に起こして、
「ボスのなまえは? 場所は? 特徴は? 何歳ぐらいだ?・・・」
と聞き出して、大きな鋏をとりだし、
「どうせ、お前は、死ぬよ」
と言って、鋏で男根をカットした。
悲鳴が上がって、消えた。
後は、担当に任せて、長宗我部盛親と本多正純に、一枚ずつメモを渡した。
夜になって、二つの団体が、疾風のように走った。
昼の内に、アジトの周辺は確りと調査してあった。
裏と表から、忍び込んだ。
一切、拳銃は使わなかった。
忍び刀で、喉を掻き切っていった。
縁の下と天井裏、壁の隙間に隠れていたが、手裏剣で、ボスの近くに立っているものを頸を狙って打ち込んでいった。
一本手裏剣なので、深々と刺さった。
声も立てずに斃れていった。
周囲を見回しても、誰もいない。
子分たちだけが、斃れていった。
ボスが机の抽出から、拳銃を取り出した。
大げさな大きさの、リボルバーであった。
六発しか撃てない。
机の上に、鼠の死骸をボトンと落とした。
ボスは意外と小心者で、
「うわ~っ!」
と叫んだ。
拳銃を二発撃った。
(後四発・・・)
真後ろに、子分の死体を落とした。
そこで、また二発を消費した。
左右に、手打ち矢を打ち込んだ。
手打ち矢というのは、打ち根とも言う日本古来からの武器であった。
そこで、一発ずつを撃った。
次は幾ら引き金を引いても、弾丸はでなかった。
「くそっ!」
と、叫んで、ジャックナイフを取り出した。
その右手首に、一本手裏剣は、思い切り刺さった。
ナイフを取り落とした。
そこに二人の男が、ふっと現れた。
当て身を喰らわせた。
それを素早く縛り上げて、袋を頭から、すっぽりと被せた。
そのまま拉致をした。
見事な手際という他はなかった。
その間、無言であった。
「このボスの親分がいるはずだ。他の地区でもそうだったからな」
「それじゃあ聞いて見ようか」
佐助党の女が言って、台の上に縛られているボスに、スペイン語で、
「あんたの、親分は?」
「そんなものいねえ」
「じゃあ、麻薬の仕入れは?」
「そんなもの、向こうから、売り込みに来る」
「向こうっで、どこ?」
「向こうは、むこうだ」
と言い終わらぬ先に、忍び刀の先端で、すーと、線でも引くように、服を裂いていった。
続いて、胸から手首まで裂いていった。
暑い国なので、シャツしか着ていなかった。
両手をさいて、次に両足を裂いていった。
それで、一気に全裸にした。
実に、簡単な脱がせかたであった。
「二」
誰かがいった。
拷問の方法なのであろう。
それだけで、他の者は無言で用意を始めた。
「面倒なことはしないよ。死ぬか、吐くかだね」
と体を逆さに吊した。
「ここの籠に這入っている蛇は、ここの人間なら良く知っているだろう。どんな猛毒を持っているか? これを肛門からゆっくりと入れて行くからね。どれぐらいの間、我慢できるかな? 死んだら全裸で、肛門に蛇を入れたまま、大通りに放り出しておくよ。見せしめにね。格好悪いねえ」
「た、助けてくれ。親分の名は・・・」
と居る場所から、年齢、特徴をしゃべった。
「その上の親分は? 喋らないなら、入れるよ」
「判った。喋る。その上は、政治家だ」
「名前は。役職は・・・」
結局は、全てを吐いた。
証人にするために、生かしておくことにした。
船が一番安全なので、輸送船の船倉に鎖に、大きな鉄の玉を付けて、監禁した。
さらには、いくつかの派になっているのも、掴んでいた。
グループごとに、すべてを検挙した。
警察の所長が、ボスだったりもした。
縛り首にして何日も晒した。
麻薬の畑も、全て、焼き払った。
これまでに押収した麻薬も大勢の前で焼き払った。
「麻薬に、少しでも手を出した者は、射殺する。真面目に働け。穀物や野菜を作れ、幾らでも草原が有るだろう。畑に向かない所には、牧草を植えて馬、牛、羊を飼え」
と教えた。
草原を国有地にして、農耕を開始した。
農耕機で耕し、象、馬、牛、犬で鋤いていった。
見る間に、畑に変わっていった。
コロンビアもベネズエラも、国境を取っ払って、一つの国にした。
少しでもヤクザッぽい者は、その場で逮捕して、牢屋に入れた。
それで駄目な者は、北方に送った。
五人だけ、北方から返した。
どういうところかを教えた。
全員が、「人間の住める所じゃない」といった。
しかし、直ぐに北方に、新人とともに送り返した。
それは、厳しい処置であった。
エクアドル、ペルー、ガイアナ、スリナム、ギアナまでを一つの国にした。
ギアナがフランス領だというのを知っていて、併合した。
「文句があるなら、何時でも行ってこい。こんな所に、フランスがあることがおかしい。金で買ったのか? 幾らだった」
と言ってやったら、なにも言ってこなくなった。
さらに、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチンを一つの国に合併させた。
チリだけは、どうにもならなかった。
アンデス山脈があるので、それが障害になった。
南米は、結局、コロンビア、アルゼンチン、ブラジル、チリの四つの国にしてしまったのである。
この方が統治しやすかった。
中南米も、メキシコからパナマまでを一つの国に併合してしまったのである。
すべて、メキシコにしてしまった。キューバ、ジャマイカ、ドミニカ、バハマの四つの島を、一つの国に併合してしまった。
他の小さな島々は、小アンティル国として併合した。
こうした併合は、実に合理的であった。
「こうすれば、中南米はメキシコだけ。カリブ海の島は、キューバと小アンティル国、南米はブラジル、コロンビア、アルゼンチン、チリの四国。これで、七つの国に整理出来ましたね」
と涼しい顔で言った。
そして、
「一つ間違えました。チリは、コロンビアの中に入れます。それと、小アンティルはキューバの中に入れます。これで、五箇国になります。全て、鳳連邦です。五箇国と、北アメリカとカナダが反乱しないための兵力を残して、後は帰国しましょう。各国五個師団づつ残します。くれぐれも、コロンビアとベネズエラの麻薬とヤクザ者には、厳罰を以て、望むように」
皇帝が、見事な采配で、スッキリと五箇国に集約してしまったのである。
確かに、五箇国にしてしまったほうが、統治しやすいのであった。
「我々は、戦に気を取られていて、戦後の統治に視線がいっていなかったな」
信幸が、反省しながら、ゆっくりと言った。
「矢張り、皇帝が、一番上から、ものを俯瞰してみていたと言うことになる」
孫一が言った。
してやられた感じであった。
「総員で二十五師団だ。兵力を回せば、抑えきれるだろう」
「今までが、多過ぎたのです。でも、いざとなったら、あれだけの大軍が来るという恐怖だけは、すべてに与えてきました。特にコロンビア、ベネズエラの破落戸には、徹底した、捜査を行いました。しかし、人間というのは、一度や、二度では直らない、ぐうたらな面があります。今後も、気を付けて見張らないと、真面目な国民が、感化されたり、脅されたりします。この両国には、特別警邏隊が必要です。武龍の馬賊狩りと同じです」
「肝に銘じておきます」
と、信幸が、神妙に答えた。
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