第六章 2
二
帆船などで、イギリス、フランス、オランダ、スペイン、ポルトガルなどの大使と、将軍と提督が、国王の代理として出席した。
鳳連邦王国に参加した朝鮮、琉球、台湾、シャム、カンボジア、ラオス、大越、モンゴル、マラッカは、側妃を出していたし、国王が列席していた。
他にインド、ルソン、ジャワ、ビルマ、モルッカ、セイロンの国王が列席してしていた。
そして日本であった。
日本は、天皇の代理が来たが、各国の国王の威厳に、雰囲気で呑まれていた。
鈴木、宮本、真田信幸の三将軍が、ホスト国として、ゲストを迎えた。
二十三本の国旗が、港に並んでいた。
その中で、一際大きく鳳と、鳳連邦王国の旗が、はためいていた。
鳳と鳳連邦王国の旗の差はなかった。
連邦旗には、縁取りに、緑の線が入っているだけであった。
桟橋には、赤い絨毯が敷かれてあった。
イギリスに特注した。馬車が、白馬に曳かれてゲストを、ヨーロッパの服装のホステス、和服、チャイナドレス、朝鮮の正装、アオザイなど各民族衣装の女性たちが、かいがいしく、世話をして馬車に乗せた。
馬車の横には四頭づつの騎馬隊がついた。
沿道には、びっしりと陸軍の兵士がならんで、警護に当たっていた。
馬車が動きだした途端に、礼砲が二十一発鳴らされた。
二十一隻の戦艦が整列していた。戦艦の反対側に城船が、その巨体を現した。
馬車に乗っていたゲストも含めて、全員が驚愕した。
馬車を先導する隊長は一人で、日本刀を抜刀して、右側に持って、白馬に乗っていた、四列縦隊の四十頭の黒馬が、綺麗に隊列を組み、銃剣を肩にして騎馬の足並みを揃えて進軍した。
道は大理石で、両側の小川には、錦鯉がおよいでいた。
大きな川には、白鳥が群れをなしていた。
街路樹の枝垂れ柳がそよいで、この世の楽園のかという雰囲気を醸していた。
四十頭の馬の後には、これも四十頭の象が、四列縦隊で進んでいった。
さらに四十頭の白馬が、四列縦隊進んでいった。沿道のところどころで、孔雀が大きく羽を広げた。
こうして、退屈する間もなく北京の天安門前の大広場に到着した。
広場に入ると、道は眼が痛くなるほどの、真っ白な玉砂利に変わった。
角楼から、二十一発の礼砲が発射された。
馬車二十台が整列すると、黒牛に曳かれた五台の朝鮮の巨大な太鼓が独特の調子で奏されながら、門の前を通過していくと、女性の手で馬車の扉が開かれた。
各国の王が降り立つと、楼門の上から、百本のファンファーレが華麗な音色で、広場中に鳴り響いた。
それと同時に、二十三本の国旗が国旗が、掲揚されて、荘厳な曲の吹奏楽が吹奏されて、全兵士が、
「敬礼!」
という一声で、直立して、敬礼をした。
そのときに千羽の白い鳩が、楼門から一斉に、放鳥された。
門の前には、片側三百人の儀仗兵がロンドンで作らせた純白の制服に金ボタンを嵌め、ズボンにも横にモールが付き、肩に金モール、肩から首にかけて金の紐が、ついていた。
帽子は黒い毛皮の丈の高いもので、短めのつばがついており顎紐をかけていた。
純粋なヨーロピアンスタイルであった。
隊長が、金色のサーベルを手に、
「捧げ筒!」
と号令をすると、全員が銃剣を捧げ持った。
国王たちが、歩くところには、赤い絨毯が敷かれてあった。
広場には、百万に近い国民がこの光景を一目見ようと押しかけでいた。
しかし、警護は厳重で鎖が二重に張られてあった。
鎖の次には石垣があって、濠が彫られてみずがはられてあった。
その濠の城側には、防弾ガラスの盾を前に置いた、銃剣を持った兵士が一メートルおきに立っていた。
馬車はいつの間にか、どこかにしまわれて、赤い絨毯は巻かれて、しまわれた。
次に、和太鼓が十鳴、鳴り響いて、各ゲストは楼門の上の席についていた、三十本の法螺貝が吹き鳴らされて、陣太鼓、銅鑼が鳴らされた。
広場を、千人の鎧武者が兜をかぶって、
「うおーっ!」
という掛け声をかけて、槍を手に早足で、通り過ぎた。
凄い迫力であった。
全員、騎馬武者である。
鳳、鳳連邦王国、各国連邦参加国、ゲスト国の一連の国旗群が、足並みを揃えて進軍した。
そのあとに、大きな黒檀の板の台座がついているもので、巨大な衝立の状のものを、台車につけて、馬が曳いていった。
馬の上には鎧武者が騎乗していた。
衝立状のものには、極彩色で、両面にアジアの国々の地図が、描かれてあった。
鳳連邦王国(鳳帝国)の参加の国々のみが、金色で縁取られてあった。
そのあとには五色の吹き流し、吹き貫(吹き抜き)蛇袋(じゃぶくろ)切り裂きといったものが、行進していった。
そのあとに錦旗の流れ旗が二流、一際、厳かに運ばれていった。
鳳凰の円の中に桐六文が描かれてあった。
鳳の錦旗であった。
そのあとに十六弁の菊花の錦旗が征く。
さらに陸軍の各隊、師団旗や大隊旗、海軍、海兵隊、工兵隊の旗が無数に行進していった。
そこからが凄かった。
車に載った、無筒発射弾が馬に曳かれていった。
黒光りがしている。
羽がついていた。
それが色々な大きさで、続々と進軍していった。
それを見た王たちの間で、
「あんなものが飛来して来たら、逃げようもなく、町が一つ消えるわ」
「現に撫順と瀋陽の町は吹き飛んで消え、ヌルハチは死体で発見されたというではないか」
といいあった。その様子を、情報隊の者たちがしっかりと聞いていた。
情報隊員は大衆の中にも大勢が潜り込んで、情報を集めていた。
進軍は続いて、長柄の槍隊千人、弓隊千人、投槍隊千人、野太刀の抜刀隊千、その後が、素手で、空手の形を、千人が揃って見せながら進軍していった。
次は千人の美女の薙刀隊で、金色の鉢金の鉢巻きに、鎧姿であった。
先頭に隊長の香苗が刀を抜刀して指揮して行進した。
槍隊千、弩隊千、鞭と鋭利な鎌槍が千人。
そして、鉄砲隊千、騎馬隊の槍隊、弓隊、鉄砲隊各千の後、戦車隊百、その後ろに、虎隊三百が出てきたときは、思わず大衆から
「おおーっ!」
という驚きの声が出た。
後、戦闘装甲車、黒牛隊、虎も、黒牛も、それぞれ金色の鎧を着けていた。
装甲車が来た後で、犬隊が来た。
鎧を着ていた。
続いて本陣車が三輌、三人の将軍が載っていた。
閲兵式が終了後、大太鼓が鳴って、王たちは、天安門から、階下に案内されて午門に向かった。
赤い絨毯が一直線に伸びていた。
午門は、閉まっている。
国王たちが近づくと、午門が開き、大和門の前庭が広がっていた。
五本の金水橋が架かっている。
その先は、眼を射るほどに白い玉砂利が一面に敷き詰められてあった。
そこに大和門がある。
王たちが絨毯の上を歩いていくと、大和門が開いたそこには、純白の大理石が敷き詰めてあるのだけれども、それが見えなくなるほど、立錐の余地もなく、折烏帽子(おりえぼしに)直垂(ひたたれ)の武官たちが、威儀を正して、立っていたのである。
その中を三人の将軍に先導されて、赤い絨毯の上を進んだ、三人の将軍たちも、衣冠という身分の高さを感じさせる威儀であった。
三人の将軍の後に、御随身(みずいしん)という装束で、武官の着るものであったが、四人が、矢と弓を持っていた。
中ほどまで、進んだ時に、静寂そのものの中で、撃柝(げきたく)の音が響いた。
四人の御随身の者が、東西南北の宙空に、弓を引き絞って、金色の矢を放った。
魔を払ったのである。
終わって御随身の者が姿勢を戻すと、雅楽が奏されていった。
その瞬間に二十万からの直垂の者たちが一斉にその場に着地して地に低頭をしたのであった。
皇帝が出座したのである。
将軍とゲストたちは所定の位置に着座した。
御簾が下がっている。
雅楽が終わって
大磬が、五声なって、維那僧(いのうす)の美しい、鍛えられた挙経の声が響いた。
小磬が鳴らされて般若心経の読経が、直径二尺はあろうという、魚鱗(ぎょりん=木魚)の重い響きとともに、唱えられだした。
静かに御簾が上がっていった。
僧侶は三百にといったが霊光大僧正が、
「千人出頭させます。皇帝のご威儀にかかわることでございます」
というので、千人となった。
さすがに千人の僧侶の読経の音声は、腹に響いてくるものがあった。
御簾の中側には、三つの高御座 (たかみくら)据えられてあった。
中央が鳳幸村皇帝陛下(ほうこうそんこうていへいか)である。
向かって右の高御座には、雪宮(ゆきのみや=中華の呼称)東皇后陛下(とうこうごうへいか)、左には淀宮(よどのみや)西皇后陛下(せいこうごうへいか)が並んでならんでいた。皇帝は黒の束帯に勺をもっていた。
足にはベツ(足袋の股の割れていないもの)を履き、沓(くつ)をはいた。
両皇后は、衵扇(あこめおおぎ)に五色の紐を巻いたものを手にして、十二単(ひとえ)に張袴(はりばかま)であった。
沓を履いた。
その両側には両皇太子が妃ともに並んだ。
高御座はなかった。
相当する、玉座の前に立った。
その背後には、朝鮮、琉球、台湾、大越、カンボジア、ラオス、シャム、マラッカ、モンゴルの側妃が、皇帝の左側、向かって右に九人並んだ。
向かって左に、イギリス、オランダ、スペイン、フランス、ポルトガルのヨーロッパの五ヶ国が、儀式の始まる十日前になって、庶妃を出してきた。
各国とも、国王の養女であるという触れ込みであった。
忍軍が総出で探索した結果、さすがに、ハニートラップや、売春婦ではなく、全員、総督や、提督らの娘で、国王の養女の許可を受けるのに時間が掛かったのであった。
これも、ヨーロッパの正装で、庶妃の席にならんだ。
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