第六章 4

   四


「いま、世界は、植民地の奪い合いだ。植民地にされた国は悲惨だが、植民地を造った国は、厖大な利益を得る。たとえば、オランダ、ベルギーなどは、日本の九州と同じ国土面積だし、人口も同じようなものだ、イギリスは日本の本州と同じくらいだ。ポルトガルも日本とたいして変わらない。スペインと、フランスは日本よりも大分おおきい。みなヨーロッパだ。彼らは、本国だけでは食えない。そこでアフリカと言う大陸を植民地化して、色々な物資や、人間を、攫って、奴隷として人件費を抑えて、莫大な利益を上げてきた。ところが、かれらは、アフリカから、アジアに眼を向けてきた。最初に狙われたのが、インドと、南洋だ。彼らは、南シナ海から、東シナ海には、なかなか北上してこない。しかし、ときおりやってく

る。狙いは、高砂(台湾)、琉球、朝鮮、日本、明の、沿岸部だが、南方のような訳にはいかない。高砂の一部、明の沿岸部の一部は喰われはじめている。しかし、余り知られていないが、南洋には、既に日本人町が、幾つもできているのだ。高砂の一部。大越(ベトナム)のハイフォン、ヴィン、フェ、ツーラン、フェフォ、クイニョン。カンボジアのピニャルー、ウドーン。シャムのアユタヤ、リゴール、パタニ、マラッカのジョホールバール。ボルネオのコワタリンキ。スマトラのジャンビ、バンダム。ジャワのバタビヤ、セレベスのマカッサル、セラムのバンダ。モルッカのテルナテ、ルソンのマニラ、カガヤン。ビルマのベグー。凄いものだ。誰の手も借りず、自分たちだけで、これだけの日本人町を造ってきた。南蛮船も、日本人の力を借りなければ、持ってきた荷物はさばけず、持って帰りたいものの荷物が揃わないという状態になりはじめている。小西行長、加藤清正、薩摩、堺の町人たちも盛んに交易船を出している」

「なるほど。殿下は、そこに日本人の農民を投入して、米を耕作させて、それを日本に運んで、いっときの豊臣の戦費を稼ぎだしていた。この戦費はどこから出ているのかと不思議で仕方がなかった。淀のお方様、殿下が、豊臣の資金を使ったことは?」

「ただの一度もありません。見事なものです。多額な金塊と、米、珍しきものは、蔵にギッシリと詰まっています。すべて幸村の自己資金で、豊臣を立ち直らせ、日本を統一し、すでに、徳川は青息吐息です」

「仮定の話だが、儂が、南洋に専念していたら、南洋に一大王国を築いていたと思うぞ・・・それを、これから、本腰を入れてやっていく。第三の日本だ。すでに第二の日本、蝦夷、樺太、千島列島は、開発の順備にかかって、工兵、屯田兵、農兵が、資材とともに入っている。雪が解けなくては仕方ない。その間に南洋の強化にいく。すでに日本の面積と同じ農地は買い占めてある。儂と、ヨーロッパ人との違いは、すべて、今度の東北とおなじように、購入している、私の土地であって、武力で占領した土地は一つもないということだ。現地人も雇用している。日本人となんら、変わらない賃金と、住宅その他の提供もしているし、税金もその国に治めている。その上に、各王朝に政府借款を、その国の王の名と、政府の名。こち

らは日本国政府執権総都督真田幸村で、通商条約、土地所有権許可、日本両換算での金塊借款契約書を取っている。紳士的にやっているし各王朝とも友好的だ。シャムのアユタヤ王朝、ラオスのランサン王朝、カンボジアのアンコール王朝、大越の李王朝・阮王朝とも、友好的にやっている。ヨーロッパ各国ともも友好関係にある。我々の土地は、購入したものであることを、知っているから一切どこの国も手は出さない。勿論、手を出せば、その国に対して、仮借なく対応するだけの、軍事力は備えている。小太郎。相違のあることがあったら指摘してくれ」

「殿下の仰る通りでございます。これほど堂々とした方法はありません。交易も、通商条約に基づいて行われています。艦隊も、イギリス製ですので、イギリスとは、提携関係も出来ています。通称条約も結ばれています」

「事情は良くわかりましたえ」

「で、武蔵殿、武芸を伝授された観点から、淀の付き人は誰がよろしいか」

「香苗様の班が一番と思われます」

「む。判った。淀そのようにいたせ」

「はい」

「二人の大将軍にも現地を見て置いてもらう」

「長期でしたら、留守のことがありますので、交代にとは思いますが」

「短期にいたす。長期にわたりそうなときには、どちらかが、急ぎ戻ればよかろう」

「はっ」

 と決定した。

確かに冬の間は、第二の日本である北方の、蝦夷より北は、手が出せないのであった。

さらに言えば、すでに、購入済みの、東北の十家の秋は、駆け足で去って行き、どうすることも出来ない、冬将軍が到来する。

出来ることは、越冬の訓練だけであった。

現地から艦隊三個艦隊が迎えにきているのであった。

秀頼と、大助は留守を守ることになった

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