第六章「幸村の位攻め」1
第六章「幸村の位攻め」
一
本隊は、摂津に止まって、陣形を立てていた。
各本陣車には、帆布で造った、屋根や、幕で囲うようになっていたが、そこを組み立て式の屋根と壁が造られた。
屋根と壁には、鉄板が入っていたので、鉄砲も、弓も弾き返した。
移動式の砦と変わらかった。
幾つもの部屋が、あれよと言う間に出来上がった。
普段から、その役の者たちが訓練をしているのであった。
幸村は何よりも、訓練、演習、教育を大切にしていた。
「なぜ、このようにするのか? 教育で、シッカリと教え込み、訓練、実戦と同じ形で演習をなせよ。何の係でもだ。近侍の者は、特に演習を、あらゆる場合に備えて、積んでおけ。近侍の小姓たちは、将来の幹部ぞ。武芸百般はもとより、文もたしなめ。現在の状況を把握することだ」
と教えた。
当然、炊事車の料理人たちは、大阪城内にあるデコボコの道の演習所で、炊事車を走らせながら、料理を造る演習をさせていた。
そのために、遠征に出ても何ら困ることはなくなっていた。
水は、すべて、湯冷ましを、巨大な水槽車で、二台も、三台も運搬していたので、困ることはなかった。
薪と炭の車もあった。
食材車には、ないものはなかった。
常に点検をして、新しいものに積み替えていた。
この時代にバナナ、パパイヤ、マンゴーなどを揃えていた。
船で必ず運ばれてくるのであった。
小麦のパンなども造れた。
本陣船でも同じことであった。
床は、土地を平にして、その上に箱型の床を機つも並べて、その上から、厚い板を敷いて、フエルトの床材を並べその上から、ペルシャの緞通を敷き込んだ。
そこに黒檀の椅子と、大きな、これも黒檀のテーブルを置いた。
椅子には、虎の皮が掛けられてあった。
飲み物は、銀の食器に入れられてあった。冷めないのである。
水はギヤマンのグラスに入れられた。
料理は、チャイナの陶器で出た。
天井からクリスタルのシャンデリアが下がり、明かりは揺れないように火屋が被っていた。
本陣車の周囲は、装甲車で、砦のように囲まれていた。
本陣車に至るには、鉄の盾で造られた、通路が、迷路のように出来ていたので、容易には、
入り込めなかった。
案内なしでは辿りつけなかった。
その本陣には、多くの大名たちが、駆けつけていた。
自領の安堵を頼み込むためであった。
しかし、
「余が関白になった祝いにも参上せず、よくも顔を出せたものよな」
と一切容赦せず、領地を没収した。
さらに頼み込もうとすると、幸村は、
「去れ! それ以上居ると叩き斬るぞ!」
と厳しい目で言った。
大名たちは、みな平伏したままで、その場を立ち去った。
直ぐにその大名の城を、1万余の兵で取り囲ませて、城を受け取らせた。
容赦はしなかった。
こうして摂津、播磨、美作、備前、備中、備後、但馬、因幡、伯耆、隠岐、出雲、安芸、石見、周防、長門、讃岐、伊予、阿波、土佐、対馬、壱岐、五島、豊前、豊後、筑前、筑後、肥前、肥後、日向、大隅、薩摩、甑島、薩南列島、琉球、先島諸島までを掌中にした。
「残るは、東北だな・・・」
と孫一がいった。
「すでに、東北十家を買い取った。すでに陸軍四個師団。水軍六個艦隊、水陸軍六個師団が向かっている。工兵、屯田兵、農兵と、縄張り班、衛生隊、医療隊、建築隊、役人隊が、資材とともに出発した。西南三十五ヶ国も平らになった。これらに、駐留軍と、工兵、屯田兵、農兵を入れて、農地の改良を行っていく。我々も、大阪城に戻る。目標を達成した以上、ここにいても仕方があるまい」
といってから、
「すまぬが、殿軍を、二人将軍で、指揮してくれ。帰りは急ぐぞ! 帰陣!」
と号令を発した。
本陣車と本陣の諸設備を、引き離した。
直ぐに外れるようになっていた。
後は近衛隊の施設班が片して、専門の車両に積み込んで撤退するのであるが、これも訓練されていて、素早い動きであった。
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