第五章 7

  七


「淀様には、女性での最高位、前太閤佐の位を賜った」


『豊臣滋野真田源幸村統室淀 補前太閤佐職 後水尾天皇 御名御璽』


「これでは御正室様が、と御上が申されて、このようにならはりました。宮号下賜という、こんなことなどあり得ないことで、驚きました」


『豊臣滋野真田源幸村正室 興竹林宮家詔(竹林ノ宮家ヲ詔ニテ興ス 後水尾天皇 御名御璽』


『竹林宮家 補総都督佐職 後水尾天皇 御名御璽』


「官位も下賜してくださりました」

「勿体なくも、まことにありがとうござります」

 竹林宮が、平伏した。

「続いて、秀頼さには、このような・・・」


『豊臣藤原秀頼 補摂政内大臣職 後水尾天皇御名御璽』


「関白になられるのは、摂政になられてお次ぎになるのが、正統でござる。執権から関白というのは、破格なことである、との御上のお言葉でごさりまする。これは右大臣から、摂政内大臣は、順当でごさりまする。次に」


『豊臣滋野真田大助源秀幸 補総都督職 後水尾天皇 御名御璽』


「次に鈴木孫一平君成」


『補征夷大将軍職 後水尾天皇 御名御璽』


「次に、宮本竹蔵源武蔵 の竹は竹林宮家からのからの一字書き出し、御上がお考え遊ばされたものでござる。鈴木殿の君成も御上がお付けにならはりさしゃりましたものでござる」


『補征狄(てき)大将軍職 後水尾天皇 御名御璽』


「征夷も、征狄も、南北、東西と同じいみでござるよ。夷狄と言うことがありまする」

 霊光猊下は、舞い上がっているのか。

公家言葉と武家言葉が、混ぜこぜになっていたが、自分でも判らなくなっていた。

「ということで、ご納得いただきたい。これは、勿体なくも、御上の詔でごさる」

「ははーっ!」

 一同は平伏した。直ってから、

「いや、内はの話。いろいろありまして。どうしたら、大阪城の豊臣が巧くいくのか。御上も、拙も悩みくるいましてな。今後は〈宮様〉〈淀様〉と、御上もお呼びになるとのことでございまする。これで、秀頼様までは関白が繋がりまするが、継ぎで悩まれる。それがあってはならじと、真田は、滋野で名門でおじゃる。幸村関白様のご息女、七女のかね様と秀頼君が独身とのこと、是非にもご結婚を・・・」

「それは良い」

 淀が喜んだ。

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