第四章 4

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 岐阜城は切り立った崖の上に立つ城を攻めるまえに、旧井口(いのくち)の屋敷を落としてから、井口の反対側から、大砲で破り、そこから、飢えた、獰猛な、大型犬三百を放った。

門を大砲で、打抜くと、次に角に短い槍を付けた。

猛牛を百頭追い込んだ。犬も牛も、鎧を着けている。

突進してくる犬と猛牛に、守備兵は狂乱した。そこに五人一組になった豊臣の兵が、手持ちの盾で、前後左右から、押してくる盾には三本の槍の穂のようなものが剣山のように出ていた。

盾は分厚い板に鉄板が貼ってあったので、矢も弾丸を弾いてしまった。

もう一人が、内側がギザギザの刃になっている刺股で喉元を、捕えて、鎧通しで止めを刺して次に取りかかっていった。

一人斃すのに、十秒ほどで、屠っていった。

しかも的確に、黙々と斃していった。

四半刻もしない間、降伏した。

「なんという戦じゃ。犬に、角に槍を付けた猛牛・・・それに鉄の盾に三本の槍の穂の付いた盾に押しまくられた。それだけで刺されては死ぬわ。弓も鉄砲も槍も刀も効果なしだ。で、刺股で斃して。鎧通しで急所をズブリか。考えただけでも、血が凍るわ」

「首は取らず、続いて次に、挑んで行く。本当に見る間やられてしまうそうです。それが数十組を押し寄せてくると、恐怖しかないそうです。逃げても犬か、牛にやられます。犬は背中に三本の槍を付けています」

「正純。それは日本人の戦い方ではないぞ。岐阜でそれか。他は推しているべしだな」

「全員、銃剣は肩に掛けています。逃げると銃でやられます」

「独特の戦い方ですな」

 正信は、首を振って溜息をついた。

 正純が、つぎつぎに入ってくる、早馬のを報告伝えた。

「岐阜を獲ったあと、新手の兵が、投入されて、各務原、犬山、小牧、岩倉、春日井、清州、日進、有松、笠寺と陥落させて、名古屋を取り囲んで、海からは、安宅船、大関船、関船、小早船が、湾内いっぱいに蝟集して、名古屋城に、大砲、火炎の岩石が、投石機で投げ込まれ、そのあと、陶製の油玉が城の周囲から投げ込まれています。城内は、もう火炎地獄です。敵の兵は、城を竹束の盾で城内が燃えるのを見守っています。火勢の弱いところがあると、油玉を投げ込んで、一気火勢を増させます。大手と、搦め手を開いても、敵は何も仕掛けてきません。火の手に負けて、門から飛び出すと一矢で喉元を貫きます。無駄弾丸(たま)、無駄矢を一切つかいません。竹束にはその上から、藁布団をかけて、城内から、射てくる矢をそれで、受けて、沢山刺さると、竹束を交換して、それを、丁寧に抜いて矢箱の中にしまいます。門から出てくるものは。すべて味方の放った矢で、射殺されています。自分たちの矢は使いません」

「つまり、無駄矢、無駄弾丸は撃たず。ひたすらまって、耐えられたくなって門から飛び出してくるものは、味方が放った矢で、一矢で喉元を射ぬくのか」

 家康が言うのに、正純が答えた。

「はい。両手を上げて降参の意を示すと、近くの民家に連れていき、武装を解除させ、軍装を脱がせ、着衣も脱がせると、全裸にして、股を開かせ肛門に警棒を突き入れて、なしか隠していないかを検査して、捕虜服に着替えさせられます。例外なしです。女性も同じで、肛門と、性器の両方を検査されて、捕虜服に着替えさせられます。こうされると、抵抗する気力が失せるそうです」

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