第43話 ミリアの現実

「ねえ? 今の話、本当なの……?」


 放心状態。といった茫然とした表情でミリアがつぶやいた。


「申し訳ありませんミリア様。お姉様に彼氏ができて複雑だ、というお気持ちはお察ししますが、そういう事なのです」


「いや、それもあるけど、ワタシ……魔族じゃないの? ……普通の人間なの?」


「ああ、そうでしたね。その事でしたか。いえ、先程の話は何でもありませんのでどうぞ忘れて下さい。ミリア様はいつまでも今のミリア様のままでよろしいのですよ」


 いや、忘れろって言ってもさすがに無理があるでしょ!

 そんなので誤魔化せるはずがない。

 無茶苦茶だこの人!


 僕が心の中でそうツッコミを入れた瞬間だった。


 先ほどまで落ち込んで泣いていたはずのエリスがミリアのそばに駆け寄り、ミリアをギュッと抱きしめていた。


「ミリア! 現実を受け入れるのはとても辛い事だと思うけれど、お姉ちゃんはいつだってあなたの味方だからね! 今は思いっきり泣いていいのよ」


「姉さま……エリス姉さま……。うわあああああああああああああああん!」


 エリスに抱きしめられたミリアは、エリスの胸の中で子供の様に泣きじゃくり、大粒の涙を流していた。


 確かに美しい姉妹愛の光景には違いないんだろうけど……。


 エリス……キミ、ついさっきまでミリアの事を知らない子扱いしてたよね!?


 そんな僕の心の中でのツッコミを察したのだろうか。

 ルーシアさんが僕の肩にそっと手を置き、憐れむような目をして言った。


「勇者さん。これから色々と、本当に本当に大変だと思いますけど、姫様のこと、どうかよろしくお願いしますね」


「う、うん……。頑張るよ……」


 僕は、そう答えるのが精一杯だった。

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