第41話 エリスの事情2
ルークさんの話を聞いて、魔王を倒すと意気込んでいたは何だったのだろうと、完全に脱力してしまっていた僕だったが、まだ疑問は残っていた。
なぜ僕はエリスと一緒にこちらの世界に転移してしまったのか?
そして、なぜ勇者として、エリスのお父さんである魔王を倒しに行く羽目になってしまったのかだ。
「それについては私からも貴方に訊きたい事があるのです。貴方はどうしてエリス様に愛の告白をする事が出来たのですか?」
ルークさんが僕にそう問いかけてきた。
えらく直球な質問だった。
「すみません。エリスが本物のお姫様だなんて知らなくて。僕みたいな一般人が簡単に告白していいような相手じゃないって事はもうわかりましたが……」
「いえ、誤解させてしまったのならすみません。貴方がエリス様に告白をする事は、物理的に不可能だったはず、という意味で訊いているのですよ」
「どういう事ですか?」
「先ほど、エリス様を留学させる際に魔王様が条件を出していたとお話ししましたよね? その条件が問題なのです。魔王様は姫様に『恋愛禁止』という条件を出していました。大切な年頃の娘に異世界で一人暮らしをさせるのですから、魔王様はエリス様に悪い虫が付かないかと、心配で心配で仕方がなかったのです。
それで、魔王様はエリス様の周りに魔法で厳重な認識阻害の結界を張りました。エリス様が日本の高校に溶け込めるように。周りの人間からは異世界人などではなく、普通の高校生にしか見えないように。そして、何より一番強くかけたのが、男性がエリス様を恋愛対象として認識できないようにするという結界なのです。だから、あり得ないはずなのですよ。エリス様が誰かに告白されるなどという事態は。貴方は一体どうやって魔王様の結界を破られたのですか?」
「どうやってと言われても、告白した時は結界がある事なんて知りませんでしたし、僕にも分からないです」
「やはりそうですか。貴方の様子を見ていて恐らくそうだろうとは思っていましたが。どうして貴方が結界を無視してエリス様に告白できたのかというのが、こちらとしても一番の謎なのですよ。転移魔法はエリス様の恋愛感情の波動を感知して起動するように予め仕込まれていたものです。本来、エリス様だけが戻ってくるはずが、貴方まで巻き込まれてしまったのは想定外でした。一人分の魔法に二人が巻き込まれたせいで軌道がずれて、魔王城からかなり離れた位置に転移してしまいましたからね」
ここまでのルークさんの話を聞いて、今まで不思議に思っていた色々な事について僕はようやく合点がいった。
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