第39話 魔王の真実4
「それでは続きを。勇者さん。先ほどの話を聞いて何かおかしいと思った点はありませんか?」
「何かと言われても、おかしいところだらけで、何から突っ込んで良いのか分からないんですが」
「では、私から言ってしまいますが、『大魔王』になると宣言したにもかかわらず、なぜ『魔王』と名乗っているのかという事です」
「いや、それってそんなに大きな問題ではないんじゃ。正直、どちらでもいいです」
「いえ、これが大問題なんです。大魔王になると宣言した後、王子は悩みました。自分が大魔王になるには魔王が必要ですから」
「ちょっと言ってる意味が、ピンと来ないんですけど」
「魔王がいて、更にその上に君臨するのが大魔王なのです。つまり、他の誰かを魔王として立てなければ、自分が大魔王にはなれないのです」
「そのこだわりも良く分かんないですけど、だったら最初から大魔王じゃなくて魔王になるって言っておけばいいじゃないですか!」
僕は思わず大声で叫んでしまった。
「もちろんそれにも理由はあります。魔王様は言っておられました。
『つい、見栄を張ってしまった』
、と」
「ついって何なんですか!? 意味がわかりませんよ!」
「いえ、魔王様も最初は『魔王になる』と言おうと思っていたそうなのです。
でも久しぶりに国民達の前に立ってみたら、思いのほか皆から送られていた視線が熱かったので、期待に応えなければと、ついノリで『大魔王になる』と言ってしまったと、言っておられました」
いや、言ってることは分からなくもないんだけど、それにしても酷いな。
「まあ、ノリで言ってしまったというのはどうでもいいんですけど、大魔王と言ってしまったのが、どう問題なんでしたっけ?」
「そうでしたね。自分が大魔王になろうにも、その下に立てる魔王の適任者がいないという事が問題になりました。そこで、王は考えついたのです。
一度、自分が魔王となり、いずれ生まれてくる自分の子供を新しい魔王として一から育て上げ、その子が成人して魔王となったあかつきに、自分が大魔王として君臨しようという、壮大な計画を」
「やめてえええええええええええ!」
エリス!?
突然、エリスが叫び声をあげた。
「いったんエリス様は無視をして話を進めましょう。それから数年後、魔王様にお子様が生まれます。可愛らしい女の子でした。そこでまた、魔王様は悩みます。生まれてきたのが男の子であれば迷いなく計画を進めていたのですが、女の子でしたので。そして、次のような結論に達したのです。
『女魔王というのも悪くはないな! むしろ良い!』
、と」
僕はもうツッこむのをやめた。
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