第6章 魔王の正体

第36話 魔王の真実1

「申し訳ありませんでした。勇者さん。私も悪ノリが過ぎましたね。謝罪させていただきます」


 ピロロにみんなの回復をしてもらった後、幹部は僕に向かって深く頭を下げながらそう言った。


「いったいどういう事ですか? 本当にもう何が何だか分からなくて……」


「さて、何からお話ししたらよろしいでしょうかね。勇者さんはまず何から訊きたいですか?」


 やっぱり一番気になるのはエリスの事だ。


「エリスが魔王の娘だっていうのは本当に本当なんですか?」


「ええ、間違いなくエリス様は魔王様のご息女になります。エリス様本人もそう言っていたでしょう?」


「だったら何で……」


「それについては、私にも分からない事があるのです。エリス様は、どうして魔王様の娘である事をそんなにまでひた隠しにしておられたのですか?」


 幹部がエリスに向かって問いかけた。


「だって言えるわけがないじゃない!」


「いえ、それは分かりましたが、そうではなく、言えない理由を仰っていただきたいのですが」


 すると、エリスはこう叫んだ。


「だって、バカにされるもん! 魔王の娘だなんて言ったら、痛い娘だって、絶対バカにされて嫌われるもん!!」


 え? バカにされるって? 

 痛い娘? 

 何を言っているんだ?


 僕が予想していたのと全然違う返答が飛んできて、ちょっとというか全くわけが分からない。


「誰もエリス様のことを馬鹿になんかしていませんよ。馬鹿にする訳がないじゃないですか。被害妄想ですよ」


 幹部がエリスに向かってそう言った。


「嘘だもん! わたし知ってるんだから! みんながわたしの事をバカにしてるって!」


 エリスは両手の手のひらで顔を隠して座り込んだまま、そう言うばかりだった。

 するとルーシアさんがエリスの側にしゃがんで寄り添い、こう言った。


「大丈夫です。落ち着いてください姫様。姫様の事をバカにしている人なんて誰もいませんから」


「そんな事言って、ルーシアだって心の中ではわたしの事バカにしてるんでしょう!? わたし知ってるもん! おっぱいの大きい女はみんな嘘つきだって!!」


「ええっ!? 姫様!?」


 ルーシアさんが困り果てている。

 それはそうだ。もうどうしたらいいのか僕にも全くわからない。

 僕は幹部の方を向いてこう言った。


「すみません。更に何が何だか分からなくなってしまったんですが……」


「そうですね。これは、エリス様がこうなってしまった理由からお話しした方がいいでしょう。少し……。いえ、正確に理解して戴くためには、この国の歴史からお話ししないといけませんので、かなり長い話になってしまいますが、よろしいでしょうか?」


 僕もエリスの事はちゃんと知りたいし、一から話してもらえた方がありがたい。


「はい、よろしくお願いします」


 そうして魔王軍の幹部、ルークさんは語り始めた。

 この国にかつて何があったのか、その真実の姿について。

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