第18話 裏路地にて~ルーシアとピロロ
「もう我慢できません! ピロロ! ちょっと一緒に来なさい!」
ずっと黙って朝食を食べていたルーシアさんが突然叫び出し、僕のひざの上に座っていたピロロを抱え上げて部屋を出て行った。
「あー! ピロロのごはんーーー!」
そう叫ぶピロロの声がだんだん小さくなっていく。
そして僕とエリスの二人が食堂に取り残された。
「ええと……エリス? 二人とも大丈夫かな?」
「任せておけばいいんじゃない? ルーシアの知り合いみたいだし」
「あ、そうか。ルーシアさんの知り合いの子だったのか……」
「じゃあ逆に聞くけど、何だと思ってたのよ?」
「あ、いや、ごめんエリス……。やっぱり怒ってる?」
「別に……」
何だか完全にエリスを怒らせてしまったみたいだ。
下手に言い訳しても余計に怒らせそうだし、ルーシアさん達が戻って来てから、ゆっくり誤解を解くしかないな……。
◆
「何をやっているんですか、ピロロ! いきなり知らない女の子が布団に潜り込んだり、ひざの上でごはんを食べたりしてたらおかしいでしょう!」
「そうなの?」
「そうなの? じゃないですよ。ダメじゃないですか! 私だってちゃんと作戦を立てて段取りを踏んでから勇者さんの仲間にしてもらったんですよ! 姫様には大概ひどいって怒られましたけど……。いったい魔王様から何て言われて来たんですか?」
「えっと。お兄ちゃんの仲間になって、一緒に旅をしてなかよくなってこいって。すきんしっぷ? 手をつないだり、一緒のお布団で寝たり、ごはんの時におひざの上に乗ったり、一緒にお風呂に入ったりしなさいって」
「何を言ってるんですか!? 一緒にお風呂なんて絶対にダメですよ! それに100歩譲ってスキンシップを取るにしても段取りってものがあるでしょう!? いきなり布団に潜り込んで、どうして仲間にしてもらえると思うんですか!?」
「…………?」
「何でそんなにキョトンとしてるんですか!? 私が言っている事、分かりますよね!?」
「だって、魔王さまにそうしろって言われたもん」
「言われた事をそのままやればいいって訳じゃないんですよ! 少しは考えてください! 何か考えがあるんだろうと思って黙って見ていたのに、本当に何も考えてなかったんですか!?」
「むーー」
「何ですかその不満そうな顔は? 言いたい事があるならはっきり言ってみなさい」
「ピロロまだ朝ごはんを食べてる途中なんですけど!」
「何でいま朝ごはんの話になるんですか!? 怒られてるのが分かってないんですか! それにあなた、さっきからもう結構な量を食べてましたよね!? どれだけ腹ペコなんですか!!」
「………………………………」
「はあっ……はあっ……。いえ…………。ちょっと興奮しすぎましたね。ごめんなさい。よく考えれば、あなたも被害者ですものね。もう分かりましたよ。私に任せてください。仲間に入れてもらえるように何とかしてみますから。話を合わせてくださいね」
「ほんと!? じゃあ、もう朝ごはん食べに戻ってもいい?」
「ああああああ! もう勝手にしてください!!」
「わあい、ごはんだ~~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます