第15話 二つ目の街~エンフィールド

 エンフィールドへ向かう道中、エリスに『モンスターと戦闘になったら全部ユウに任せるからね』と言われていたので、エリスとルーシアさんにはサポートに回ってもらい、僕が前に立って戦うことになった。


 昨日、スライムにいいようにやられてしまった事もあり結構緊張していたのだけど、どうやらあのスライムが特別だったらしい。

 オークとか熊型のモンスターとか見た目が強そうなのと遭遇しても見掛け倒しというか、ほとんどの敵は難なく一人で仕留める事が出来た。


 そのため、エンフィールドへの旅は予定よりも早く着きそうである。

 3~4日くらいかかるだろうと聞いていたのだが、このぶんだと明日の夜には辿りつけそうだ。


「ユウもなかなかやるじゃない。私の教え方が良かったのね。先生としても嬉しいわ」


「え、ああ、うん。そうだね」


 エリスの修行は基本的には実戦形式の立ち合いで、剣でボコボコに叩かれては回復魔法で癒してもらうの繰り返しだったのでかなり過酷だったんだけど、ちゃんと強くなれていたって事なのかな? 


「そういえば、この世界ってモンスターを倒してもレベルが上がったり、ステータスを画面で確認したりは無いんだね」


「何を言っているの? ゲームじゃないんだからそんなのあるわけないじゃない」


「そ、そうだよね」


 言われてみれば当然な話だけど、そういうのがあるかもしれないと思ってしまうのは、やっぱりゲーム脳になってしまってるんだろうな。

 ゲームじゃないって事はしっかり認識しておかなくちゃいけない。

 この世界では死んだら本当に死んでしまうのだから。


 そうは言っても、エンフィールドまでは死ぬような危険な目には会う事もなく、明くる日の日が暮れかけた頃には街にたどり着く事が出来た。


 エンフィールドは高い石造りの城壁に囲まれた城塞都市で、街にはギルドがありそこでクエストを受けてクリアすれば報酬が貰えるという事だった。


 ひとまずもう遅いので、今日は宿に泊まってギルドへは明日の朝に行くことにした。

 この街にも温泉があり、旅の疲れをゆったり癒すことができた。フラロルの温泉も良かったが、ここの温泉もまた格別だ。


「いやあ。いいお湯だったね」


「本当ですね。勇者さんに気に入ってもらえて私も嬉しいです」


「でも何でルーシアさんが嬉しがるの?」


「あ、いえ。職業柄といいますか、この町ではないのですが私の実家も温泉宿を営んでいまして、他所から来られた方に温泉を気に入ってもらえると、つい嬉しくなって

しまうんです」


「へえ。いつかルーシアさんの実家の温泉にも行ってみたいな」


「ちょっと離れていますので旅の途中で寄るのは難しいと思いますが、いつか是非いらしてくださいね。でも、この国にはどの町にも必ずと言っていいほど温泉がありますので、そちらもぜひ楽しんでいただけたら私も嬉しいです」


「この国ってそんなに温泉が多いんだ。それはいいね。修行や冒険の疲れを癒すのにこれ以上無い贅沢だよ」


「もう! 温泉の話はもういいでしょ。明日も早いんだからもう寝ましょう」


 エリスがちょっと不機嫌そうな感じでそう言った。

 なんだろう? 怒らせるような事を言ったつもりはないけど。

 でも確かに魔王を倒そうとしているのに温泉で癒されてばかりというのは緊張感に欠けていたかもしれない。


 僕は宿の自分の部屋に戻り、ベッドの中で横になった。

 さあ、明日はギルドのクエストが待っている。

 これからが本番だ。


 僕はモンスターと戦ったり長距離歩いてかなり疲れていたのもあって、そのまますぐ眠りに落ちていた。


 次の朝、僕の存在を揺るがすほど大変な出来事が起こるとも知らずに……。

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