第3章 第2の刺客
第14話 王国の姫?
ルーシアさんが仲間に加わった次の日の朝。
日課となっているエリスとの朝の修行を終えた後、僕らは次の町に向かうべく、テーブルの上にルーシアさんが持っていた地図を広げて魔王が住む城までの道のりを確認していた。
「魔王の城はこの辺りね。この町フラロルからだと、まずはエンフィールドに向かって、その後ニリューツ、イト、ヒトシー、ユーホスを経由して行くルートがいいと思うんだけど、どうかしら?」
「僕はこっちの世界の地理はよく分からないし、ルートについてはエリスに任せるよ。ところで、魔王城まで行くのにはどれくらいの日数がかかるんだろう?」
「まっすぐ進めば、1ヶ月かからないくらいの道のりだけれど、修行をしたり、ギルドでクエストをしてお金を稼がないといけないから、もっとかかるわね。どれくらいかかるかは、あなたの成長次第。少なくともわたしと互角に戦えるくらいになってもらわないと」
エリスと互角にか……。
「ちょっと質問してもいいかな?」
「いいわよ。なに?」
「魔王ってどれくらい強いの?」
「それはもう恐ろしい強さですよ。魔王を名乗っているのに恥じない理不尽な強さですから」
ルーシアさんが口を挟む。
「それじゃあ。僕がエリスと同じくらい強くなったとして、それで太刀打ち出来るものなの? さすがに無理なんじゃ……」
「まあ、たぶん何とかなるんじゃないかしら」
「たぶん何とかなるって、ずいぶん軽いな」
「でも、エリスさんの仰っている事も、それほど間違ってはいないと思いますよ。エリスさんはこの国でも五指に入るほどの強者ですから」
「えっ!? エリスってそんなに強いの!?」
ルーシアさんの言葉に、僕は驚きを隠せなかった。
確かに一緒に修行をしていて強いとは思っていたけど、それほどまでとは。
「ですから、かなり大変だと思いますよ。ほんの数ヶ月修行したくらいでは難しいのではないかと」
「それはどうかしらね。ユウって結構見所はあるから、もしかしたらもしかするかもとは思っているけれど」
あれ? 意外とエリスから高評価をもらっているのか?
この1週間、結局エリスには一回も勝てず、自分がそこまで強くなったという実感が持てずにいたので、本当に意外だった。
ここで僕に一つの疑問が湧く。
「さっきルーシアさんが、エリスはこの国で五本の指に入るくらい強いって言ってたけど、エリスって一体何者なの? ルーシアさんが知ってるって事は、こっちの世界では有名人だったり?」
「……………………」
沈黙が続く。やはり、エリスの素性について訊くのはまずかったのだろうか?
しばらくして、ルーシアさんが口を開いた。
「実はエリスさんは、今は亡きこの王国の姫君なのです」
「ちょっと! ルーシア!?」
エリスが驚いたような声をあげる。
ルーシアさんは、エリスの方を見て軽く頷いてから話を続けた。
「この国は元々はユワークという人間の王が治める王国でした。それがある時、魔王によって乗っ取られて、今に至ってるのです」
「驚いた……。エリスがお姫様だったなんて。確かに美人だし凄く強いし、只者ではないとは思っていたけど」
「はい。そうなのです。王族の方々は代々、皆さまが強い魔法力を持っていらして、エリス様はその中でも特別に強い力を持っておられます」
「ルーシア! その話はもうやめて! ユウももう十分でしょう?」
そうか、エリスにとっては思い出したくない過去なんだな。
自分の国が魔王によって滅ぼされてしまったのだ。無理もない。
「ごめん。エリス。僕が無神経だったよ」
「わ、わかってくれればいいのよ。さあ、エンフィールドに向けて出発するわよ!」
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