第3話 癒しの魔法
あれ? 僕は一体どうしたんだろう?
意識を取り戻したという事は生きているのだろうか?
それともここはあの世?
そっと目を開けると、木漏れ日が目に飛び込んできて景色がぼんやりとする。
視界の中に彼女の顔があった。
よかった。無事だったんだ……。
どうやら彼女も眠ってしまっているようである。
すーすー、と可愛らしい寝息が静かに聞こえていた。
僕は身体を起こして立ち上がろうとしたが、うまく動けなかった。
そうだ僕は刀で切られて……。
あれは夢だったのだろうか?
だけど、あの痛み、死が手招きしてくるような感覚は決して夢ではなかった。
あの後どうなったんだ?
意識を失ってしまったせいで分からないけれど、何とかなったんだな。
それなら彼女が起きるまでの間、もう少しこのまま寝かせてもらおうかな……。
いや、ちょっと待て。
今のこの状況を冷静に考えてみよう。
モンスターに襲われた事などは今はいったんどうでもいい。
僕はいま仰向けに寝転がっている。
目線の先には彼女の可愛い寝顔がある。
後頭部に感じるあたたかくて柔らかい感触。
これはもしかして、膝まくらというやつなのではないだろうか?
生きていて良かった……。
さっき彼女を守れるなら死んでも構わないみたいな気持ちになった覚えがあるけど、やっぱり生きているっていいな。
心の底からそう思えた。
その時だった。
「う~ん……。あれ? わたし眠って……」
彼女がまだ眠たそうに指で目をこすりながら目を覚ました。
「あ! 目を覚ましたのね。よかった! 身体の調子はどう? 大丈夫?」
「あ……。うん、何ともないみたいだ」
「ごめんなさい。さっきはわたし、突然の事にびっくりしちゃって、ちょっと混乱して、変な事を口走っちゃって……」
先ほど怒られていた時とは打って変わって穏やかな雰囲気だ。今度はちゃんと話を聞いてもらえそうで安心した。
「あ、いや、それは気にしてないけど僕は一体どうなったの? さっき、なんかモンスターっぽいやつに刀で斬られたと思ったんだけど」
「リザードマンならわたしが追い払ったから安心していいわ。それより何であんな無茶をしたの? あなた死ぬところだったのよ。回復魔法で治療するの大変だったんだからね!」
リザードマンに回復魔法ときたか。
やっぱり夢ではなかったらしい。
モンスターに魔法、そして魔王……。
異世界召喚の定番だ。
「やっぱりここが異世界だっていうのは本当なのか……。一体どうしてこんな事に?」
「それを話す前に、わたしからもあなたに確認しておきたい事があるの。ええとね。わたしが誰だか分かる? わたしについて知っている事を全部話してみてくれるかな?」
「姫宮さん。羽奈月高校一年B組の姫宮エリスさん。お父さんが外国の人でお母さんが日本人のハーフで5月の連休前に転入してきた留学生……?」
「それだけ? 他には……?」
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