84.「体育祭――裏側【楓2】」

 そろそろ二年生の100m走。

 凪君と橘さんが動き出す。


「わたしも凪君にハチマキしぃ~たぁ~いぃ~!」


 駄々をこねても叶わないことは分かっている。

 けど、悔しいんだ。

 こんな姿を見せられたら叫びたくもなる。

 それにしても、身長差で困っていた橘さんのために、わざわざ座り直すとか凪君優しい。

 こういう地味な行動が意外と良いんだよね。


「うわぁ~、ハチマキした凪君もカッコイイなぁ~!」


 凪君の色んな姿を見て来たけど、どんな姿でもカッコイイ。

 とりあえずハチマキ凪君はわたしの凪君フォルダーに追加決定ね。


 数分後。ついに二年生100m走。

 先に男子からである。

 凪君を応援しないと!

 わたしは気合いを入れるためにハチマキを巻く。

 色は凪君と同じく赤色。


 二年生男子の100m走は順調に進み。

 凪君の番が来る。

 凪君は軽く準備運動をして深呼吸。

 それからビシッと立つ。

 次に走り出す構え。


「可愛いぃ~」


 こういう何でもない凪君には謎の可愛さがある。

 ずっと見てられる可愛さ。

 真面目なところが可愛いのかな?


 そう思っていると走り出した。

 わたしは凪君うちわを両手に持ち応援開始。


「頑張れぇ~! 凪君なら勝てるよぉ~!」


 うちわを激しく振りながら応援を続ける。


「フレフレ凪君~! イケイケ凪君~! カッコイイよぉ~、凪君~!」


 必死に応援したが、残念ながら凪君は三位。

 あの前の二人がいなかったら凪君が一位だったのに。

 空気読んでよ!

 凪君が勝つところなの!

 何かトラップを仕掛けておけばよかった。


「凪君がゴールテープを切るところが見たかったなぁ~」


 悲しいがこれはこれでいい。

 三位という上位であり、絶妙な順位。

 凪君らしい。


 走り終わり、息を整えながらゴール近くに置いていたタオルで汗を拭く凪君。

 林を通る風ぐらい爽やか姿。

 こめかみを流れる汗が美しい。


「汗を流す凪君もイイなぁ~」


 凪君の力で汗というものが綺麗に見えてくる。

 もう凪君の汗は汗では凪君から溢れ出す天然水と言うべきか。

 それになかなか汗を掻く凪君も見られない。

 体育の時間中にドローンを飛ばすわけにもいかないからね。

 これは激レア中の激レア。

 体操服凪君も激レアなのにその上があるとは……。

 今日だけでパソコンの容量がパンクするかもしれない。


 そんな凪君に見惚れていると橘さんがゴールし、凪君の元へ。

 凪君は自然に自分のタオルを橘さんに渡す。


「あぁ~あっ! 凪君の使用済みタオルがぁ~!」


 思わず頭を抱えてそう叫ぶ。

 しかも、臭いを嗅ぐなんて……。

 凪君の汗の匂い、わたしだって嗅ぎたいのに!

 あり得ない!

 超タオルに顔を埋めてるし!

 橘さん、せこすぎ!


 凪君と橘さんはテントへ。


「えぇ~! 次は何してるのぉ!?」


 いきなり凪君の腕にしがみつく橘さん。

 凪君はそれにピクっと可愛い驚く。

 驚く凪君グッジョブ!


「うっ、ナイスだけどぉ~、やっぱりダメぇ~!」


 早く離れなさい!

 凪君も何でそんなに冷静なの!

 こういうスキンシップは慣れてるの?

 それともおっぱいが小さいから?

 わたしが凪君の腕にしがみつけば、凪君は大興奮で立ちながら立てなくなるんだからね!


「ん~? こっち見てる……あっ! 頭撫で撫でしたぁ~!」


 何で凪君は橘さんの頭を撫で撫でしてるの!

 わたしの頭も撫でたことないのに!

 本当にあり得ないよ!


「って、なんか橘さんがこっちに向かって手を振ってるんだけどぉ……って、凪君も手を振ってくれてるぅ~! 凪君~、おーい~!」


 わたしもモニター越しから両手で手を振る。

 これは神対応凪君!

 ドローンを介してだけど手を振り合えた。

 もう最高すぎるよ。


「うわぁ~、ドローンが凪君のもとにぃ~! バレちゃうよぉ~!」


 これは予想外。

 まさかこんなに接近するなんて。

 こんなの設定してないよ。

 でも、至近距離の凪君は良き!

 ドローンいいね! 良いね!


「なんかポーズ取り出したなぁ~。写真を撮ってほしいみたいな感じかなぁ~?」


 勝手に撮られているので問題ない。

 後、橘さんのポーズは需要ない。

 本当に凪君のポーズだけが見たい。

 ピースとかさ、絶対に可愛いよ?


「って、凪君がピースしてるぅ~!? ヤバ可愛いんだけどぉ~!」


 ピース凪君とか可愛すぎだよ!

 もう慣れてない感じがとってもイイ!

 ちょっと笑顔なのも最高!


 その後、他の凪君のポーズを堪能していたら、その場は自然とボディービル大会みたいになっていた。


「凪君そのポーズ超可愛いよぉ~! 瞳が良いね、ダイヤモンドぉ~!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る