31.「第一回 中間テスト勉強会【2】」

 僕の自室にある勉強机で勉強するのは大きさ的に難しそうなので、橘が部屋から持ってきた小さな縦長テーブルを部屋の中央に。

 座布団を二枚敷いて、勉強道具をそのテーブルの上に準備する。


 僕は準備を終えるとすぐに座布団に腰を下ろす。

 橘も同じように腰を下ろした。


「で、何で横並びなんだ? 普通対面じゃないのか?」

「だって、教えるのですよ。対面だと大変じゃないですか」

「そうか?」

「そうですよ。足とか当たりますし」


 確かに床に座っているから足は当たるな。

 正座するなら別だが、足が痺れるのは嫌だ。


「まぁいいけど」

「では、まずはノートを見せてもらっていいですか?」

「え、ああ、うん」


 マジか……。

 嫌だな、ノート見られるの嫌だなぁ。

 だって、絶対に橘先生……


「何で何も書いてないのですか!」


 ……怒るもん。


「僕、学校行ってなかったじゃん?」

「最近は行ってました。ですが、ノートは真っ白です」

「ブルーライトを当てると見えるペンでノートは取ってるんだよ」


 そんな面倒なこと誰がやるのだろうか。

 まぁ流石に橘も信じないだろう……って!


「ブルーライトで照らしましたが何もないです」

「うっ……」


 何でブルーライト持ってるの?

 普通持っていないよね?

 橘の筆箱って四次元ポケット?


「楠君、嘘はよくないですよ。橘先生プンプンです!」


 むぅーっと頬を膨らませる橘先生。

 全く怖くない。

 むしろ可愛い。

 なにそれ、頬ぷにぷにしていい?

 やべー、何考えてるんだ、僕は。

 危うく変態になるところだった。


「ごめんごめん」


 苦笑交じりにそう謝る。

 すると、橘は真面目な表情になり口を開いた。


「はぁ……ノート提出も評価されるのですよ? 分かってますか?」

「分かってます」

「今回は私のノートを写させてあげますが、これからはちゃんと取ってくださいね」

「分かりました、橘先生」

「いいお返事です」


 小学校の先生と生徒かな?

 僕、もう高校二年生なんですけど。

 てか、なんか恥ずかしいな、これ。


「と言っても、ノートを一日二日で写すのは難しいでしょう。私がコピーでどうにかしておきます」

「本当にありがとうございます」


 これには感謝だ。

 あの量のノートを写すなんてやってられないからな。

 暇ならそれしとけよって感じだけど、やっぱり面倒なことはしたくない。


「とにかく今からはテスト範囲を勉強しましょう」

「はい、橘先生」

「まずこの私の知り合いに作ってもらったテストを二人でやりましょうか」


 え、何?

 知り合いに作ってもらったテスト?

 友達じゃないだろうし……それ大丈夫のやつ?

 テスト問題そのままとかないよね? よね?


「確認なんだが、これは架空のテストなんだよな?」

「はい、予想のテストです。なので、イイ予行練習になりますよ」

「そ、そうだな」


 確認した理由はそういうことじゃないんだよな。

 まぁ大丈夫らしいからいいけど。


「では、五教科を休憩込みで三時間!」


 普通のテスト時間の半分ぐらいか。

 間に合うか心配だが、恐らくこれで僕の実力を見るはずだから本気でやるか。

 点数が悪かったら、深夜まで勉強させられそう……。


 ところで、テストなのに横並びっていいの?

 答え見えそうなんだけど。


 そんな心配していると、橘が時計を見ながら口を開く。


「スタートです!」

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