6.「初めての朝」

 目が覚めると横に橘がいた。

 昨日、一緒のベッドで寝たので当たり前なのだが、とても感覚が狂う。

 一昨日までネットカフェで一人で寂しく椅子で寝てたのだ。

 仕方ないだろう。


 隣で漫画のヒロインのように「すぅー、すぅー」と寝息を立てる橘。

 まぁ漫画なんて読んだことないけど。

 改めて橘をよく見ると可愛いよな。

 美人系というよりかは可愛い系。

 日本人らしくない銀髪ボブにとろりとした柔らかな目。長く髪色に似たまつ毛。

 身長は見た感じ150センチぐらいで平均より低く、華奢な体型。

 まるで、その姿は小動物みたい。

 でも、胸は意外とあって……あれ?

 ……ない。

 学校で見た時はあった記憶があるのだが。

 まぁどこ見てるんだって話だが、男子とは女子の胸には目が行くものだ。


「って、た、たたた、橘!?」

「んぅ……?」


 橘は眠たそうな声をあげ、目を擦りながら反応する。


 って、そんなことより僕の目の前に楽園……否、刺激が強い光景が広がっている。

 顔ばかり見ていて気付かなかったのだが、胸元を見ると服が少しはだけていた。

 ああ、ダメだ、これは見てはいけない。

 見てはいけないものだ。

 そう言い聞かせて、視線を逸らす僕。


「橘、橘! 服、服!」

「ふわぁ~、少し乱れてますね。よくあることです」


 欠伸をしながら平然とそう言い、体を伸びする。


「ん? 寝ている時に私、何かしましたか?」

「いや、何もしてないが、その服がはだけていたから」

「なるほど。寝相には自信があったのですが、お見苦しい姿を見せてしまい申し訳ないです」

「こちらこそ見て悪かった」

「別に見ても構いませんよ……と言っても、見せれる大きさでもないのですが」


 苦笑いしながら残念そうに胸に両手をあてる橘。

 自分でないことは自覚しているらしい。

 自虐ネタとは驚いた。


「学校の時はもっとあった気がするが……って、あっ!」


 つい思っていたことが口に出てしまった。

 すると、橘は声を出して笑い、それに答える。


「恥ずかしながらパット二枚ほど入れてブラジャーしているのです。しかし、まさか楠君が私の胸を見ていたとは驚きですね」

「これはちっが――」

「ちが?」

「違わないな。見ていたよ。女子と至近距離で話せるのは橘だけだったからな」

「はぁ……やはり大きな胸の方が良いでしょうか?」

「好み次第じゃないか?」

「楠君はどうですか?」

「僕は……どうだろう。分からない。大きくても見るし、小さくてもさっき見たいに焦って驚いた」


 何を真面目に答えているのだろうか。

 まず何で橘に胸の大きさの好みを聞かれているのだろう。

 はぁ……わけわからん。


「小さくても良いなら、パットは止めてもいいかもですね」

「え、ああ。まぁ別に盛らなくてもいいと思う」

「そうですか。ですが、ブラジャー着けると少し盛っちゃいますけどね」


 橘は「あははははっ!」と笑い、手でベッドを押して勢い良く立ち上がる。

 そのままタンスまで歩き、中から何かを取り出して口を開いた。


「では、今から少し盛ることにします! えへへっ!」


 って、ノーブラだったのかよ!

 あ、僕もノーパンだったわ!

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