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二人によると、カワセミとはそれほど珍しい鳥ではないそうだ。その夜、川沿いの高台にテントを張り、昼間釣った鱒を焚火で焼きながら教えてくれた。もちろん、この荒廃する地球上では、鳥そのものが希少な生物となってしまっていたが、元々は人里近くに生息する馴染み深い鳥だったらしい。
「…で、カワセミを見てみたいのかい?」
焚火に新しい薪をくべながらオオサワが聞いた。
「俺にも見れますかね?」
アオタが言った言葉が深く心に刺さり、自分の野生動物を見つける能力に自信を無くしていたタカヒサであった。だってだって、見た事無いから判るわけないじゃん…
オオサワは笑いながら答えた。
「大丈夫だよ。そんなに難しい話じゃないから」
むしろ、同じカワセミの仲間である、ヤマセミやアカショウビンの方が、何倍も珍しい鳥だったらしい。それを聞いたPUZがすかさず、アカショウビンのサンプル画像をそのディスプレイに表示した。それを見ながらオオサワは言った。
「じゃぁ明日は、カワセミをメインターゲットにして、川を遡上しよう」
「有難うございます。よろしくお願いします」
タカヒサは深々と頭を下げた。そしてもう一言付け加えた。
「ついでと言っちゃぁ何ですが、俺にもその鱒釣りとやらを教えて下さいよ」
「フライフィッシングだ…」
「いいよー。もし、初日に一匹でも釣り上げられたら、帰りの行程は俺が荷物を持ってやるよ」
「言いましたね? 約束ですからね?」
「フライフィッシン…」
「もし一匹も釣れなかったらどうする? PUZを俺んとこに養子に出すって話はどうだ?」
「えぇーっ!それはちょっとぉ」
「フライフィ…」
「んじゃぁ車の運転を教えてやるから、帰りは全部運転してくれよ」
「待ってましたっ! その言葉を待ってたんですよーっ!」
「フラ…」
「でも、俺の運転訓練は厳しいぞーっ!」
「望むところですっ!」
「フ…」
「わっはっはーっ!」
「がははははーっ!」
「で、何か言ったか? アオタ?」
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