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人工的な調味料と香料で作られたイミテーションのコーヒーを一口すすると、エバニッシュは話を続けた。
「人類が地球を棄てたといっても、誰も住んでいない訳ではないんだ」
「へぇー、そうなんですか」
とは言うものの本物のコーヒーなど飲んだ事が無いので、コレがイミテーションかどうかなどタカヒサにとってはどうでも良い事であった。
「地球には、あちこちに鉱物資源の採掘基地が有って、ある程度まとまった人数が常駐してる。だから火星~地球間の運搬船も頻繁に往来してる。君にはそれに乗ってもらう事になるな」
「なるほど。南極にもそういった採掘基地が有るんですね?」
「いや、残念ながら南極に基地は無いんだ。かつて南極には豊富な地下資源が眠っていると考えられていたんだが、氷が解けた後、各社が色々調査してみても、コレといった資源を見つけ出すことが出来なくてね」
「それじゃ、どうやって南極に行けばいいんですか?」
「極少数だが、採掘会社のスタッフ以外にも地球に住み着いている物好きな連中が居てね。”マザー・アース”とか何とか言って、地球を離れたくないらしい。俺には理解出来んがね。その中の一人にアオタという男が居るから、そいつに接触してくれ」
「誰です? そいつ?」
「俺にもよく判らん。ただ、火星よりも地球がイイという位だから、かなりの変わり者なのは間違い無いだろう。以前にチョッとした仕事を請け負ってもらった事が有るんだが、今回の件で連絡を取ってみたら、二つ返事でOKしてくれたよ。なんでも、川が有るかも知れないとか言ってたゾ」
「川・・・ですか」
タカヒサの表情を伺うかのように、エバニッシュは覗き込みながら聞いた。
「一度見てみたいって言ってたよな?」
「えぇ、まぁ・・・」
「地球のNZ地区という所に着く運搬船に乗ってくれ。ウチの関連会社が経営する、南極に一番近い採掘基地だ。そこでアオタと合流して、南極を目指してもらう」
「南極には船で移動する事になるんですかね?」
「そうそう、忘れてた。俺達には縁が無いけど、地球の海には魚という生物が居て、それが高級食材として金持ちの間で人気らしいんだ。それを船で捕獲している”漁師”と呼ばれる連中も、若干名だが住んでいる。多分、そいつらの船を借りる事になると思うんだが・・・詳しい事はアオタに任せてあるから、後は地球で聞いてくれ。俺が教えられる情報はコレだけだ」
「なんだかヤバイ感じもするなぁ・・・」
エバニッシュは「待ってました!」と言わんばかりの表情で報酬の件を切り出した。
「ギャラの件だが、引き受けてくれれば、その時点で500万ルカ。即金だ。地球の調査が終わって帰って来た時に、残りの2500万ルカを支払おう。調査報告の出来次第で300万ルカまでのボーナスが付く。どうだ? 悪くないだろ?」
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