悪役令嬢&ヒロイン不在の婚約破棄

マキシム

悪役令嬢&ヒロイン不在の婚約破棄

【とある王国の会場】


今日は王国創立300年の記念パーティーが行われた。王家主催の記念パーティーは和やかに進んでいたが・・・


【オリバー・シークハルト】

「イザベラ・アント!貴様は私の想い人であるユーリー・サーライト子爵令嬢に対する嫌がらせの数々、断じて許さん!王太子であるオリバー・シークハルトの名において婚約破棄を宣言する!」


王家主催のパーティーでオリバーシークハルト(17歳)が高らかに宣言した。そのオリバー・シークハルトの姿に参加した貴族たちは目を疑った


【貴族】

「恐れながら殿下、何をなされているのですか?」


一人の貴族がオリバーに尋ねた


【オリバー・シークハルト】

「決まっている!私の想い人のユーリー・サーライトに嫌がらせをするイザベラ・アントに正義の鉄槌を加えるのだ!」


それを聞いた貴族は困惑した


【貴族】

「あの、イザベラ・アントとユーリー・サーライトとはどなたのことにございますか?」


貴族は改めて二人について聞いた


【オリバー・シークハルト】

「イザベラ・アントはアント公爵家の令嬢で私の婚約者だ。またユーリー・サーライトはサーライト子爵家の令嬢で私の想い人だ!」


それを聞いた貴族とその周辺はざわつき始めた


【貴族】

「あの、そのような御方はこの国にはおりませんが?」


【オリバー・シークハルト】

「何を言っている!王太子である私に逆らう気か!」


【貴族】

「いいえ!私は殿下に逆らう気など毛頭ございません。ただ、その御二方は我が国にはおられません!」


【オリバー・シークハルト】

「はっ?」


貴族の発言にオリバーは違和感を覚えた。二人はこの国にはいない?


【貴族】

「それに殿下には婚約者がおられぬではありませんか!」


【オリバー・シークハルト】

「へ?」


オリバーは益々、困惑した


【オリバー・シークハルト】

「そんな、私に婚約者がいないだと。そんなバカな!そんなことがあるわけないだろ!私は王太子だぞ!その王太子に婚約者がいないなど。」


【国王】

「オリバー!何をしておる!」


そこでこの国の国王でオリバー・シークハルトの父がやって来た


【オリバー・シークハルト】

「父上、あの私に婚約者がいないのは本当ですか!」


国王は息子の言動に頭を傾げた


【国王】

「何を言っているんだ?お前には婚約者はおらぬぞ。」


【オリバー・シークハルト】

「私に婚約者がいない!王太子であるこの私が!」


オリバーは益々、混乱してしまった


【国王】

「誰か事の詳細を教えてくれ。オリバーはなぜ、このような状態になっておるのだ?」


【貴族】

「恐れながら、私が言上いたします」


貴族によって事の詳細が明らかになり、国王は激怒した


【国王】

「大馬鹿者!そんな下らない理由でワシの顔に泥を塗る気か!」


父の突然の激昂にオリバーは困惑した


【オリバー・シークハルト】

「ちっ、父上?」


【国王】

「それにお前の言う婚約者と想い人はこの国にはおらぬわ!アント公爵、サーライト子爵、前へ!」


そう言うとアント公爵とサーライト子爵が国王の前へ現れた


【国王】

「そなたらの口から申せ!」


【アント公爵】

「はっ!恐れながらオリバー殿下、アント公爵家にはイザベラ・アントという娘はおりません。」


【オリバー・シークハルト】

「何!」


【アント公爵】

「はい、私には息子はいますが、娘はおりません。」


【オリバー・シークハルト】

「へっ?」


【サーライト子爵】

「恐れながら申し上げます。私の家にもユーリー・サーライトという娘はおりません。一応、娘はいますが今年で8歳になります。恐れながら殿下、何かの間違いではありませんか?」


【オリバー・シークハルト】

「えっ、えええええ!」


オリバーはあまりの出来事に益々、困惑してしまい、途方に暮れていた


【国王】

「みっともない声を上げるな!それにお前、王太子と名乗っていたそうだな!お前は王太子じゃなくて第五王子だぞ!そんなことも忘れたのか!」


【オリバー・シークハルト】

「私が第五王子・・・」


オリバーが呆然としていると・・・


【王太子】

「オリバー、私を差し置いて、勝手に王太子を名乗ったそうだな?事と次第によっては覚悟はできているだろうな!」


【第二王子】

「普段から何考えているか分からない奴だったがここまでとは。呆れ返って言葉も出ぬわ。」


【第三王子】

「オリバー!お前は王家の恥だ!消えてなくなれ!」


【第四王子】

「ふっ、無様だな、オリバー。」


そこへオリバー・シークハルトの兄たちが現れ、次々とオリバーを糾弾した


【オリバー・シークハルト】

「そっ、そんなはずがない!私はこの国の王太子で次期国王だ!婚約者もいるし恋人もいるんだ!」


【国王】

「もう良い、オリバーの戯れ言など聞きたくない!衛兵!この愚か者を外へ連れ出せ!」


衛兵が現れ、オリバー・シークハルトを捕らえ、連れ出された


【オリバー・シークハルト】

「父上、お待ちください!父上!私は無実です!信じてください!」


オリバーは何か喚いていたが無視した


【国王】

「皆の者、騒がして済まぬな。パーティーを再開しよう!」


国王の号令で再び記念パーティーが再開された。後にオリバー・シークハルトは侍医の診察を受けた結果、原因不明の奇病【妄想病】と診断された


【国王】

「それでオリバーは、治るのか?」


【侍医】

「恐れながら手の施しようがございません。【妄想病】は原因不明の奇病でございまして、我が国の医療では治すことは不可能です。」


【国王】

「そんな。」


国王がガクンと項垂れた


【侍医】

「陛下、まだ話は終わっておりません!【妄想病】は時が立てば、不思議と治る病にて必ずしも不治の病ではありません!」


【国王】

「そうか、それは良かった。」


国王はそれを聞き、安堵した


【王太子】

「父上、私がおります!どうかお気を落とさずに!」


【国王】

「あぁ、済まぬな。」


【侍医】

「とりあえずは修道院へ隔離するしかありません。」


【国王】

「あい分かった。」


第五王子であるオリバー・シークハルトは病気療養のため国王の命により一時的に王子身分の剥奪、修道院行きになり、パーティーの一件に決着がつきました


【とある修道院】


【オリバー・シークハルト】

「リアス・イヤハート、王太子であるオリバー・シークハルトの名において貴様に婚約破棄を宣言する」


【修道士A】

「はぁ~、また始まったよ。」


修道士Aは隔離部屋にいるオリバー・シークハルトの妄想にほとほと、呆れていた


【修道士B】

「放っておけ。あれは完全に病気なんだから。」


修道士Bは相棒の修道士Aを諭し、淡々と作業を続けていた


【オリバー・シークハルト】

「リアス・イヤハート、君に嫌がらせをしていたリアス・イヤハートは断罪したよ」


【リアス・イヤハート(人形)】

「ありがとう!王子様、愛してる!」


【オリバー・シークハルト】

「私もだよ、リアス。」


オリバーは人形に話しかけながら裏声で返事をし妄想に浸り続けた


なぜ、オリバー・シークハルトが【妄想病】になったのかというと、オリバーが幼少期から本が大好きで、よく読書にいそしんでいました。特に冒険モノや恋愛モノの小説が大好きで物語の主人公にオリバーがなりきったり、自分で妄想小説を書いたりしていました。それが長続きしていつの間にか【妄想病】になってしまったのが原因だと言われています。ようは自分の世界に、のめり込み過ぎてしまい、妄想と現実の区別がつかなくなってしまったのだ。オリバーの場合は幼少の頃から妄想生活を送っていたため重症である


【オリバー・シークハルト】

「ふははははは!私はこの国の国王のオリバー・シークハルトである!」


やがて歳月が立ち・・・・


【オリバー・シークハルト】

「ああああああ、恥ずかしい!何であんなことをしてしまったんだ!死んでしまいたい!」


オリバー・シークハルトはやっと正気に戻ったのである


【修道士A】

「おぉ、正気に戻られたぞ!」


【修道士B】

「とりあえず報告だな!」


オリバー・シークハルトは【妄想病】が完治し、国王から国へ戻るようオリバーに伝えられたが、オリバーは自分の国で仕出かしたことをハッキリと覚えており、国王からの申し出を断り、このまま修道士になって余生を送る道を選んだ


【侍医】

「いやはや、【妄想病】というのは恐ろしいな。何かしらのきっかけで治るから、何があるか分からないものだな」


オリバー・シークハルトは後に修道士となり、世のため人のために汗水流して働くことになる











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