子そだてクマさんのどくしょ会
とある深いふかい森のおくに、4人家族でくらしているクマさんのお
大きめのお家に、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、そしてまだ小さい妹が住んでいます。
「いってきまーす」
『いってらっしゃーい』
お母さんが手をふり、出かけていくのを家族がみおくります。
この家ではお母さんが毎日外に仕事にでかけて、お父さんが家の中のようじをしていました。
ただ、お兄ちゃんの相手はまだ良かったのですが、下におんなの子が生まれてしばらくたつと、お父さんは困ってしまいました。
赤ちゃんのおせわはだいじょうぶ。
とってもとっても大変だけれど、2回目ですからね。
ミルクをあげて、おしめをかえて、泣いたらあやして。夜にはお母さんも帰ってきますし、やさしいお兄ちゃんがお手伝いもしてくれます。
でももう、おんなの子は赤ちゃんではありません。
「ぱぱー、つまんない。あそびたいよ~」
「うーん、なにをさせたら良いんだろうなぁ?」
ガラガラやつみ木、お絵かきばかりではあきてしまいますし、おんなの子だからとお人形をあげても、あまりきょうみはないようです。
部屋のすみにおきっぱなしにされているのを見て、ため息をついてしまいました。
「ぱぱー、おそと~」
「はいはい。ようし、出かけるか」
おんなの子は外が好きで、良く出ていきたがります。
そんな時は上からすっぽりとピンクのワンピースをきせて、きいろいぼうしをかぶせて、お兄ちゃんと三人でさんぽに出かけました。
おんなの子はまだよちよち歩きなので、二人の間にはさんで手をつないでいきます。今日の森は朝からいい天気。くうきもすんで良い気持ちです。
「ちょっと道をかえてみようか」
「ほんと? やったぁ」
お父さんは少しだけ
あたらしい道には、あたらしい発見がまっているにちがいありません。
「おや?」
少しすすむと、だれかの声が聞こえてきました。それも、一人や二人のものではないようです。
角をまがっておくをのぞくと、そこには小さなお家がたっていました。
「あそこは、うさぎさんの家だったかな?」
クマのお父さんの頭の中には、森のちずがうかんでいました。来たことはないけれど、うさぎさんがすんでいることは知っていたのです。
そして、きおくの通りに家のまえには白いうさぎさんのすがたがありました。
「こんにちは、うさぎさん。ほら、二人もあいさつして」
『こんにちはー!』
うさぎさんはクマさんの大きさと子どもたちの元気さに少しおどろいたようすですが、すぐに「こんにちは」と返してくれました。
うさぎさんのまわりにいたヤギのおばあさんや、魔女さんに妖精さん、ほかにもあつまっていた森のどうぶつたちも口々にあいさつをしてくれます。
その手にはテーブルやいすがありました。お家の中からはこび出したようです。
「みなさん、何をしているんですか?」
今日は天気がいいですし、もしかして外で楽しくお茶でもするのかな? と思いながらクマさんがたずねると、うさぎさんはにこりと笑いました。
「どくしょ会です」
どくしょ会? とは何でしょうか。
せっかくもらった答えでしたが、お父さんも子どもたちもいみが分からずきょとんとしてしまいました。
そのことに気づいたうさぎさんが、もっとていねいに教えてくれます。
「みんなでおなじ本をよんで、かんそうを言いあう会です」
「それっておもしろいの?」
クマのお兄ちゃんがふしぎそうに聞きます。きっと、これまでも本をよんだことはあっても、だれかとかんそうを言い合ったことはないのでしょう。
うさぎさんはまたにこりと笑って、「おもしろいですよ」と言いました。
「同じおはなしをよんで、だれかと同じきもちになるのはうれしいし、ぜんぜんちがうかんそうが出てきたりして楽しいの。やってみませんか?」
「良いんですか?」
とび入りで参加しても良いのかとおどろくお父さんに、みんなが「どうぞどうぞ」と声をかけてくれます。席もすぐによういしてくれました。
みんながそれぞれ席につくと、その前にすわったうさぎさんが一さつのえほんをとり出して見せました。
「今日はちょうど、えほんでどくしょ会をする予定だったんです。まずよみ聞かせをして、それからかんそうを言い合いましょうね」
ぺらり、とページがめくられます。
うさぎさんが「むかしむかし、あるところに」とかたり始めました。
あつまったみんなも、とび入り参加のクマさんたちも、そのおはなしにむちゅうになって聞き入ります。
やがてものがたりが終わるころには、みんなの心はそばにいるひとに伝えたいきもちでいっぱい。
子どもたちの目も、はやくおしゃべりしたくてきらきらとかがやいています。
こうして、森のどくしょ会はおおいにもり上がったのでした。
《おわり》
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