第50話 寄り道。

海上釣り堀を後にした俺達は、道すがらふと見つけた道の駅に立ち寄ることにした。

遠くへは出かけたものの、行った先は真也の別荘だった為、これといった買い物はしていなかったのだ。

「せっかくだからご当地もののお土産買いたいよね!」

浜辺の言う通り、せっかく遠くまで来たのだから、その土地のご当地のお土産なんかを買えたらいいが、特に誰かにあげる相手もいねぇんだよな……。


「って、こんな事今まで考えた事も無かったな……。」

俺は一人呟く。

「着いたぞー。」

真也の声と共に俺達は道の駅へと歩き出す。

どうも人の視線が痛いような気がするが……。

「ねぇ、お兄ちゃん。周りの人がめちゃくちゃ見てくるんだけど……。」

「俺もそれは思っていた……何故………はっ!」

俺達が乗ってきた車、そう言えばめちゃくちゃデカいんだった!

あんなデカいリムジンで道の駅に駐車したら、注目の的間違い無しだ!


「アレのせいだ……あんなクソデカいリムジンで道の駅来る奴なんかいないだろうからな……。」

「それもそうよね……。しかも、リムジンで道の駅に寄ってお土産買うなんて、セレブなのか一般人なのか……分からないよね……。」

美柑もようやくリムジンの異質さに気付く。


しかし。停まってしまった以上、後戻りは出来ない!

「こうなりゃ、ヤケだ!買いまくるぞ!!」

この地方はリンゴの産地で有名だ。

クッキーやらワッフル、ゴーフレット、タルト、ジュース等、ありとあらゆるお土産が存在する。

「へぇ……。こんなに沢山種類があるんだ。……お、美柑見てみろよ!カリンジュースの試飲なんてのもやってるぞ!」

俺達は普段、旅行に行くなんてことは出来ない為、こういう時に箍(たが)が外れた様にはしゃいでいた。


ーーコンクールの事など、この時は忘れていたのだ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る