第49話 海上釣り堀。

俺達はチームをジャンケンで二つに分ける。

チームA 俺、奏ちゃん、美柑、すずちゃん。

チームB 委員長、真也、浜辺、綾瀬。


それぞれが分かれて釣りの準備をする事になる。

「委員長、以前教えた通りにゆっくりでいいから皆に教えてくれ。」

偶然とは言え、真也が向こうに行ってくれたのは幸運だった。

委員長がアタフタした時、真也がいてくれればフォローしてくれそうだからな。


ーーーーーー。


「よし、これで完成っと! さぁ皆、こうやって仕掛けを落として、…………。」

俺は皆に説明しながらチラッと委員長を見ると、委員長もアタフタしながらだが何とか説明している様だ。


「海斗……先輩?これはじっと待っていればいいんですか?」

「こうやって、竿を上下に振って……待って、上下に振って……待って、を繰り返すんだ。」

すずちゃんの問いかけに俺はアドバイスする。

あ、コレ……。委員長にまだ言ってなかった!

と、振り返ると………委員長チームはめちゃくちゃ釣っているぅーー!?


「よし、俺達も釣るぞ!」

「おーーー!!」

俺達は気合いを入れるが、それが空回りする事になろうとは……。

「ひゃあ!服の中に魚が!?海斗先輩、とってくださいぃ!」

奏ちゃんがワタワタしながら服の中に入った魚を取ろうともがく。

「わーー!落ちるから暴れないで!すぐ取るから!失礼します!」

俺は奏ちゃんの服の中に手を入れるが、魚のヒレが服に引っ掛かり、中々取ることができない。

そうこうしている内に、魚は服の前側の方に向かい暴れだす。

「きゃっ…………!先輩、早くぅ!」

悶える奏ちゃんの服を中を探っている内に妙な気分になってくる。


ーーこれは早くしないといけない!


俺は奏ちゃんの前側に移動した魚を掴むと引っ張り出す。

「んっ……………!」

奏ちゃんが艶やかな声を上げる。

「出たーー! マアジだよ、奏ちゃん!」

俺の声に奏ちゃんは俯きながらコクリと首を縦に振っていた。

「わざとじゃないでしょうね!?」

美柑が睨んでくるが、何の事なのか全く分からなかった。


ーー3時間後。


「チームA、マアジ2匹、ブリ1匹、マダイ1匹……。」

「チームB、マアジ5匹、ブリ3匹、マダイ2匹、イシダイ1匹!」

って、イシダイまで釣るとは!

やるじゃねぇか……完敗だ……。


まぁ、別に勝負していた訳ではないが……何か悔しい………………。

まぁでも、綾瀬達と仲良くなれた様で何よりだな……!

委員長は綾瀬や浜辺と、それに真也ともハイタッチをしていた。

でも、もう委員長ともお別れか……。

もうしばらくしたら委員長は引っ越しをしてしまう。そうなれば下手すればもう会う事はないだろうから……。

だからこそ少しでも良い思い出を残してもらいたかった……。


『お兄ちゃん、上手くいってよかったね!……奏ちゃんの件はまだ半信半疑だから。』

美柑はコソッと俺に耳打ちしてくる。

「あぁ、そうだな。……ありがとう、美柑!……って、何で奏ちゃんが出てくるんだ?」

取り敢えず俺はいつもの通り、美柑の頭を撫でる。

「もぅ、いつまでも子供扱いしないでよね!」

俺の手を払いのけながらも、どこか嬉しそうだ。

……まだまだ子供だな……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る