第20話 無力。

俺は直ぐ様着替えると、美柑に告げる事も無く、家を飛び出していた。

このままじゃいけない。

彼女は形がどうであれ、俺に本気で告白して来てくれたのだ。

その気持ちを無下にする事は出来ない!

俺は既に暗くなった道をひたすらに走る。

「はぁ、はぁ、はぁ!」

息も絶え絶えに、何とか委員長の自宅に辿り着く。


ーーーーカーテンが付いていない……。 明かりも……ついていなかった。


「そ、そんな……まだ引っ越しまでは日にちはあるんじゃ……。」

俺は息が上がったまま、インターホンを鳴らした。

ーー反応は無い。

その後も何度かインターホンを鳴らしたが、何も反応は無かった。


帰り道、委員長に何度かメールと電話をしたが、返事は無かった。


「お兄ちゃん!どこに行ってたの!?大丈夫!?」

美柑が心配して玄関で待っていてくれた。

「大丈夫。すまなかったな、いきなり飛び出していって……。」

「それは別に良いんだけど……。大丈夫なの……?」

「あぁ、もう大丈夫。」

俺は美柑の頭を軽く撫でると自分の部屋に戻った。


急に明るく話し出した須藤委員長の変化に何故気付けなかったのか……。

『俺はあの時、ちゃんと断っただろ? もう終わった事だ。』

心の中で何とか納得しようとする自分がいる。

『最後にもう一度会って、何て言うんだ!? また断るつもりか?』

『俺はもう委員長をフッたんだぞ?なのに会ってどうするんだ?』


例えあの時、全てを知っていたとしても、出て来た言葉は殆ど同じだっただろう……。


ーーただ一つ、言葉を付け加えるなら、俺なら『元気でな』位しか言えない。

勉強が出来ても、所詮はこんなもんだって……。


「ダリィな……。」

俺はそのままベッドに寝転がり、目を閉じた。

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