第21話 真也からの誘い。

翌朝、時刻が8時を回ろうとした頃、けたたましくスマホが鳴り響く。

『海斗、今から時間あるか?』

電話の相手は真也だった。

「何だよ、朝っぱらから……。」

『何だ、寝てたのかよ。窓から下覗いてみな。』

俺は気だるいままに、ベッドからゆっくり起き上がるとカーテンを捲り、窓から下を覗き込む。

窓から下を覗くとボチボチ人通りのある道路が見える。

そこには昔から見覚えのある黒い車が停まっていた。クソ長い車体で、いかにも『ザ・金持ち』が乗っていそうな車だ。

アメリカ軍用車両の『ハンヴィー』によく似た車体。


「普通の長さならまぁまぁカッコイイ車だろうけど、無駄に長過ぎる。」

俺は着替えながらブツブツ呟く。

歯を磨いて、美柑に出掛ける事を告げると、どうやら美柑も真也から誘われていたらしい。

「ねぇお兄ちゃん、あんな変で目立つ車に乗るの?」

美柑も同じ事を思っているらしい。

俺達は軽く出掛ける準備だけ済ますと車に向かう。


「ようこそ、おいでくださいました。坊ちゃまとご友人の方々は中におられます。どうぞ、お入りください。」

身なりを整えたスーツ姿の男性はそう言うと後部ドアを開ける。

恐らくは真也に仕える執事だろう。

ーーこれだから、金持ちは……。


俺と美柑は車内に入ると、驚愕と感激のあまり声を上げる。

「うおぉぉぉぉぉぉ!すげぇぇぇぇ!!」

車内はユリの花の様な芳しい香りで包まれており、小さめのシャンデリアが二つ。カラオケボックスにミニバー、バカ長いテーブル、ソファーまである。

さっきは散々な事を言ってスマン。

この車、良い!凄く欲しい!


「おー、やっと来たな!」

声のする方を見ると、真也がソファーに座っていた。

それに、綾瀬と浜辺、すずちゃんとすずちゃんにそっくりな女の子。 そして……委員長も。

委員長はこの場所に居辛そうにスカートの裾をギュッと握りしめ、下を向いていた。


俺と美柑は真也に促され、ソファーに座る。

「あ、ああああの!ご、ご無沙汰しております!退院おめでとうございます!」

「ありがとう、すずちゃん!」

緊張しまくりのすずちゃんの言葉に、素直に嬉しく思えた俺だったが、一つ……この言葉により、やり忘れていた事を思い出す。


ーー快気祝い用意してねぇー!!


「海斗、今からキャンプ行くぞ!」

ーーーーーーは?

こっちが快気祝いだ何だと考えている時に、急に真也からの意味分からない誘い!


ーーキャンプの用意なんかしてねぇー!

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