第19話 真意。

「大丈夫ですか、お客様!?」

「だ、大丈夫です!!す、すいません、お会計を!」

どうなってんだ、こりゃ!?

意味がわからんぞ!

俺は委員長の手を引き、会計を済ませそそくさとカフェを後にした。


委員長が俺の事が好き?

……ちょっと待て……何でだ!?

委員長とは席が隣なだけで、いや、確かに良く話したりはしてるけど他愛ない話ばかりで……。

何かきっかけでもあったのか……?


ーーわからない。


あのパフェを頼んだのも、からかう為じゃなくて、本気だったからって事か?

補習テストもわざわざ自分から名乗り出て……一緒に……!?

うぉぉぉぉぉ!

でも、一体どうしたら……。


「すまない、委員長……。」

俺は気が付いたらそんな言葉を吐き出していた。

「……はっ!いや、その今のは……!」

「何本気に……してんのよ!じょ、冗談だから、そう!冗談!」

委員長はそう言うが、明らかにおかしい。

そもそも、真面目な委員長がからかって来たり、カフェで大声を上げるような迷惑行為を冗談でするだろうか。


「じゃ、じゃあ私、こっちだから………。ごめんね……振り回しちゃって……。」

少し寂しそうな顔をしながら、委員長は帰って行った。

俺はその後、どうやって家まで帰ったのかハッキリ覚えていない……。

すっかりと陽は落ちて、気が付いたらリビングのソファーで寝転がっていた。


「お兄ちゃん、どうしたの?元気無いね……。」

リビングのソファーに寝転がりながらボーッとしている俺に、美柑が声を掛けてくる。

「そうか……?そうでもないぞ?」

取り繕ってみるが、美柑には嘘ついて誤魔化しても無駄なんだよな……。

「お風呂……入れたよ?入ってきたら?」

美柑は深く聞いてこないが、何かあったと察して気を遣ってくれていた。

兄が妹に気を遣わせるなんて……駄目な兄貴でスマン……。


「あの時、どう対応したら良かったんだ……?今まで恋愛なんてした事無いから全く分かんねぇ……。」

湯船に浸かりながら、俺は今日あった出来事を一通り振り返ってみたが、どう考えても冗談には聞こえなかった。


俺は風呂から上がると、自分の部屋に戻り、スマホを手にする。

ーープルルル、プルルル……。

『おぅ、海斗!どうした、お前から電話なんて珍しいな!』

電話の相手は真也だ。

恋愛相談ならまずはこの男だろう。

真也は外見も内面もいい男だから凄くモテる。

「実はな……。」

俺は今日の出来事を真也に打ち明けた。


『多分それ、冗談じゃねぇぞ。』

真也は俺が話し終わると、少し間を置いてからそう話す。

「何でそうだと分かる?」

『須藤……引っ越すんだよ、来週にはな……。何でも親の仕事の事情とかで……。』

真也の言葉に俺は耳を疑う。

委員長は冗談なんかじゃなく、本気だったのか……。

だから、あんなに焦った様に……。


『委員長からお前には言うなって言われてたんだが……。』

「……そうか。だからあんなに取り繕って……。」

『家庭の事情じゃ、どうする事も出来ないよ。 おい海斗、またお前、変な事考えてないだろうな……。おい、海斗!海斗!?』

「……あ、あぁ、大丈夫だ。ありがとう、おやすみ。」

電話を切ると、俺はベッドに寝転がる。

今日の出来事を一通りもう一度振り返ってみる。

やっぱり冗談なんかじゃなかったんだ。

間違いなく、あれは告白だ……。


ならやる事は一つだ……!

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